8月に入りし烈を極める盗塁王争い
8月6日の試合が終了した時点のパ・リーグの盗塁ランキングは、小深田大翔選手、外崎修汰選手が21盗塁、周東佑京選手が20盗塁を決めている。それに次ぐ4位が五十幡亮汰選手の14盗塁、次点と山崎剛選手の13盗塁ということを考えれば、今季の盗塁王争いは三つ巴の様相を呈してきたと考えていいだろう。
今回は、各選手のこれまでの球歴に加え、2023年の月別成績や盗塁数のデータを紹介。各選手の活躍ぶりをあらためて振り返るとともに、激しさを増す盗塁王争いの行方にも期待をかけたい(以下、成績は8月2日の試合終了時点)。
即戦力の期待に応え、プロ入りから毎年規定打席に到達し続けている
小深田選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。
小深田選手は2019年のドラフト1位で東北楽天に入団。大卒社会人での入団とあって即戦力としての働きが求められたが、小深田選手は1年目から112試合(全120試合)に出場し、規定打席に到達して打率.288、出塁率.364と好成績を記録してその期待に応えた。
その後も俊足とシュアな打撃を活かし、主にショートとして活躍。入団から3年連続で110試合以上に出場し、3年続けて規定打席に到達を果たした。プロ1年目から現在に至るまでコンスタントに出場を重ね、今やチームに欠かせない存在の一人となっている。
プロ4年目の今季も開幕からレギュラーとして活躍し、チーム事情に応じて二塁、三塁、外野の守備もこなすなど、ユーティリティ性を大いに発揮。3年連続となるオールスター出場も果たすなど、今季も安定した活躍を見せてチームを支えている。
リーグ連覇の立役者が打撃不振を乗り越え、今季は復調傾向を示している
外崎選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。
外崎選手は2014年のドラフト3位で埼玉西武に入団。プロ入り当初は内野手だったが、3年目の2017年は外野手としてレギュラーを獲得。続く2018年も故障離脱こそあったものの、キャリアハイの打率.287を記録し、10年ぶりのリーグ優勝にも大きく貢献した。
続く2019年は浅村栄斗選手の退団によって二塁手にコンバートされ、前年の負傷を乗り越えて全143試合に出場。自己最高の26本塁打、OPS.846を記録し、二塁手としてもたびたび好守を披露。浅村選手が抜けた穴を見事に埋め、リーグ連覇の立役者の一人となった。
源田壮亮選手と組む二遊間はまさに鉄壁で、2020年と2022年にはゴールデングラブ賞を獲得。その一方で、2021年以降は打撃不振に陥っていたが、今季は打撃面でも復調。2021年に盗塁王に輝いた盟友の源田選手に続き、自身初の盗塁王を獲得できるかに注目だ。
2020年に50盗塁を決めてタイトルを獲得し、WBCでの走塁も話題を呼んだ
周東選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。
周東選手は2017年の育成選手ドラフト2位で福岡ソフトバンクに入団。プロ2年目の2019年の開幕直前に支配下登録を勝ち取り、同年は代走中心ながら25盗塁を記録。続く2020年は打率.270と打撃が向上し、二塁手のレギュラーを獲得。全120試合の短縮シーズンながら50盗塁を決め、自身初の盗塁王に輝いた。
続く2020年は打率.201と打撃不振に陥り、レギュラーの座も手放す結果に。それでもリーグ1位まで3個差の21盗塁と、前年盗塁王としての意地を見せた。翌2020年は打率.267と復調し、80試合で自己最多の5本塁打を記録。4年連続となる20盗塁も達成した。
2023年の開幕前に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準決勝では9回裏に一塁走者の代走で出場し、逆転サヨナラのホームを踏む「神走塁」で大きな話題を呼んだ。シーズンでは打率.177と打撃不振に陥りながらも随所で走力を発揮し、2度目の盗塁王を射程圏内に捉えている。
盗塁成功率を大きく向上させ、コンスタントに盗塁を積み重ねている
小深田選手が2023年に記録した、月別の成績は下記の通り。
4月から7月まで4カ月連続で4盗塁以上を記録し、大きな波はなくコンスタントに盗塁を積み重ねている。また、打率の面でも5月を除く4カ月はいずれも.250以上と、大半の月で一定以上の成績を残している点も、盗塁ペースの安定化に寄与している。
ただし、打率.186、出塁率.250と今季の中では最も調子の悪い月だった5月に、現時点で月間最多となる7盗塁を決めている点は興味深い。不振の時期でも塁に出ればしっかりと盗塁を積み重ねられていた、という点は、タイトルを争ううえでも強みとなりうる。
また、小深田選手は2022年までの盗塁成功率が.672と、盗塁の確実性に課題を抱えていた。しかし、今季の盗塁成功率は.826と大幅に数字が向上しており、積年の課題に改善の兆しが見られる点も、今後に向けて大きなプラスとなることだろう。
キャリアを通じた盗塁成功率を高さを生かし、ついに殻を破りきれるか
外崎選手が2023年に記録した、月別の成績は下記の通り。
小深田選手と同様に、4月から7月まで4カ月連続で4盗塁以上を記録。出塁率も6月までは3カ月連続で.320以上で、4月は.367、6月は.387と優秀な数字を残した。それに対して、7月は打率.222、出塁率.292と調子を崩したが、それでも5盗塁を決めている点はポジティブな要素だ。
また、2017年から4年連続で20盗塁以上を記録しただけでなく、通算の盗塁成功率.787と、セイバーメトリクスで損益分岐点とされるラインを上回っている。今季も19盗塁を決めて失敗はわずかに2つ、盗塁成功率は.905と、まさに抜群の数字を記録している。
ただし、外崎選手は高い盗塁成功率を記録している一方で、シーズン盗塁数は2018年の25個が最多とやや控えめだ。過去2シーズンはいずれも10盗塁以下にとどまっていたこともあり、今季は外崎選手にとって、タイトル獲得のチャンスであると同時に、自らの殻を破る絶好の機会にもなりそうだ。
開幕直後に比べてペースが落ちているだけに、打撃の復調がカギを握りそうだ
周東選手が2023年に記録した、月別の成績は下記の通り。
4月に6盗塁、5月に7盗塁と序盤はハイペースで盗塁を積み重ね、5月末の時点では39試合で13盗塁と圧巻の数字だった。しかし、6月は17試合で2盗塁と大きく数字が減少。7月は4盗塁と一定の数字を残したものの、序盤戦に比べてペースが落ちているのは気がかりだ。
また、4月から6月までは3カ月連続で打率1割台と、深刻な打撃不振に陥っていた。その影響で打席数も減少していたが、7月は30日の試合でサヨナラ打を放つなど、打率.250と復調傾向を示した。この勢いのまま状態を上げていけば、打席数の増加にもつながるはずだ。
今季の周東選手は、勝負所での代走に加え、代打や守備固めといった幅広い起用がなされている。周東選手は通算の盗塁成功率が.856、今季の盗塁成功率は.864という数字を誇るだけに、代走に加えて打撃面でも本来の調子に近づき、塁に出る回数を増やしたいところだ。
三者三様の俊足ランナーたちによる、熾烈なタイトル争いに要注目だ
盗塁成功率を大きく向上させてタイトル争いに名乗りを上げた小深田選手、不振を乗り越えて自身初タイトルに近づいている外崎選手、球界屈指の俊足を武器に3年ぶりのタイトル獲得を狙う周東選手。各選手が置かれた状況は、まさに三者三様となっている。
はたして、シーズンが終了したタイミングで盗塁王の座に輝いているのはどの選手になるのか。順位争いや主要タイトルの行方とともに、韋駄天たちが繰り広げる熾烈な戦いにも、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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