自身初タイトル獲得を予感させる、抜群のハイアベレージを記録
オリックスの頓宮選手が6月28日の試合終了時点で打率.340を記録し、パ・リーグの打率ランキングで首位に立っている。吉田正尚選手が移籍し、森友哉選手や杉本裕太郎選手が故障で戦列を離れる時期があった中で、頓宮選手の成長は、今季のオリックス打線にとっても非常に大きな要素となっている。
2022年は北海道日本ハムの松本剛選手が大ブレイクを果たし、打率.347という素晴らしい成績で首位打者のタイトルを獲得。前年の松本剛選手を思い起こさせる活躍を見せている頓宮選手が、このまま自身初タイトルを獲得する可能性も大いにあるはずだ。
今回は、頓宮選手の球歴や各種の指標、ヒットコースやコース別の打率といった、具体的なデータを紹介。覚醒を見せつつあるプロ5年目の強打者が、進化を果たした理由に迫っていきたい(成績は6月27日試合終了時点)。
確実性に課題は残していたが、2022年は貴重な長距離砲として優勝に貢献した
頓宮選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。
頓宮選手は2018年のドラフト2位でプロ入り。大学時代は捕手として活躍したが、プロ1年目の2019年には「5番・三塁手」で開幕スタメンとして大抜擢を受ける。しかし、同年は打率.198と結果を残せず、プロの壁に跳ね返されるシーズンを送った。
2年目の2020年は故障でシーズンの大半を棒に振ったものの、わずか12試合で2本塁打を放ち、打率.313、OPS.965というすばらしい数字を記録。続く2021年はさらなる活躍が期待されたものの、打率.232、OPS.700と成績を伸ばせず、46試合の出場にとどまった。
だが、プロ4年目の2022年は自己最多となる81試合に出場し、打率.226と確実性は欠いたものの、自身初の2桁本塁打を記録。守備でも一塁手と捕手を務めながらスタメン出場の機会を増やし、終盤戦は4番や5番といった打線の中軸を任される機会も増加した。
同年はチームの大逆転でのリーグ優勝にも貢献し、「2022 パーソル クライマックスシリーズ パ」でも4試合中3試合でスタメン出場。日本シリーズ第3戦では4番として出場するなど、ポストシーズンでも主力を務め、日本一に輝いたチームの中で確かな存在感を示した。
持ち味である長打力を維持したまま、確実性と選球眼を大きく向上
次に、頓宮選手が記録してきた各種の指標を見ていきたい。
2022年の打率.226、11本塁打という数字に象徴されるように、昨季までの頓宮選手は確実性に課題を抱える一方で、一発長打の魅力を秘めた選手だった。通算長打率.450、通算ISO.188と、長打力を示す数字がともに一定以上の水準にある点も、それを裏付けているといえよう。
しかし、今季は打率.340という数字が示す通り、最大の課題だった確実性が大きく向上。また、出塁率は.412とリーグトップの数字で、選球眼を示す「BB/K」も.630と通算の数字を大きく超えている。打率と出塁率の差を示す「IsoD」がキャリア平均を上回るなど、選球眼に関しても大きな成長を感じさせる数字が並んでいる。
その一方で、今季は5月終了時点で本塁打はわずか1本にとどまっていたが、6月だけで6本塁打と量産体制に入っている。その影響もあり、序盤戦は控えめだったISOは.170、AB/HRは29.43と、いずれもキャリア平均に近い数字に戻りつつある。安打に加えて本塁打も出始めている点は、頓宮選手が強打者としての特性を失っていないことを表している。
今回取り上げた各種の指標は、総じて頓宮選手の打者としての成熟度が高まっていることを示している。それに加えて、序盤戦の課題だった本塁打の減少を、高打率を維持したまま改善してみせたことを考えれば、今後のさらなる成長も大いに期待できるといえよう。
今季はあらゆるコースのボールをヒットにする、抜群の対応力を示す
続いて、2021年以降に頓宮選手が記録した、投球コース別の打率を確認する。
2021年と2022年で共通する部分としては、アウトコース真ん中の球と、ストライクゾーンの真ん中低めに対して強さを発揮していた点が挙げられる。その一方で、2年続けて高めのボールを総じて苦手としており、特にストライクゾーンの内角高めのコースに対しては、2021年が打率.000、2022年が打率.125と、極端な低打率となっていた。
しかし、2023年は課題だった高めのゾーンも含め、ストライクゾーン内におけるあらゆる部分の打率が向上。最も苦手としていた内角高めに対しても打率.286と一定の数字を残し、ゾーン内は全てのコースで打率.286以上を記録するなど、穴らしい穴が存在しない。
さらに、元々得意だったアウトコースのボール球に対しても打率1.000と、引き続き好成績を収めている。さらに、インコースの真ん中、内角低めのボール球に対しても打率1.000を記録し、高めのボール球に対しても高打率を残している。
ストライクゾーン内に苦手なコースが存在せず、ボールゾーンの球であっても安打にしてしまう点に、今季の頓宮選手の凄みが凝縮されているといえよう。真ん中から外角低めに逃げるボール球以外に弱点らしい弱点が見当たらないだけに、投手にとっては打ち取ることが非常に困難な打者となっている。
投球コースと同じく球種別の成績でも苦手を克服し、打撃の穴がなくなりつつある
最後に、2021年以降に頓宮選手が記録した、球種別の打率を紹介していく。
2021年は打率.333以上の球種が4個存在した一方で、ストレートの打率.192と速い球を捉えられず、カーブとスライダーに対しても打率1割台と苦しんだ。2022年はストレートの打率が.253まで上昇し、スライダーの打率も1割以上改善されたが、球種別で打率.270を超えたボールは一つもなし。とりわけ、カーブは2年続けて打率1割台と極端に苦手にしていた。
2023年はかつて課題としていたストレートの打率が.318まで上昇し、変化球の打率も軒並み向上。苦手としていたカーブの打率を.250まで改善させ、8球種中6球種に対して打率.300以上を記録と、変化球への対応力は非常に高いレベルに到達しつつある。
また、前年は打率1割台以下だったシュート、チェンジアップ、シンカー・ツーシームの3球種に対して、いずれも4割を超える打率を記録している点も興味深い。速球とカーブに対する打率の向上も含めて、課題の克服を着実に進めていることがうかがえよう。
背番号と応援歌を受け継いだ先達のように、首位打者の栄冠を手にできるか
5月に入ってからハイアベレージを維持し続けている安定感に加えて、6月に入ってからは持ち前の長打力も大いに発揮。高い確実性と一発長打の魅力を両立した、まさに隙のない強打者へと進化を遂げつつある。
また、コース別打率・球種別打率の項目を見てもわかる通り、内角高めのコースや、ストレート・カーブといった苦手分野への対応力も向上。ウィークポイントの克服に向けて適切なアプローチを行えているだけに、今後のさらなる成長にも期待が持てる点も頼もしいところだ。
6月28日の試合終了時点のパ・リーグにおいて、打率.300以上を記録している選手は頓宮選手ただ一人。1984年の三冠王を含む2度の首位打者に輝いた、ブーマー・ウェルズ氏の背番号と応援歌をともに受け継いだ強打者は、偉大な先達と同様に、リーディングヒッターの栄冠を手にできるか。今後のシーズンにおいても、そのバッティングに要注目だ。
文・望月遼太
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