1勝以内に13名。大混戦の最多勝争いで、山本由伸の牙城を崩す投手は現れるか?

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2023.6.22(木) 19:59

オリックス・バファローズ 山本由伸投手(C)ORIX Buffaloes
オリックス・バファローズ 山本由伸投手(C)ORIX Buffaloes

2023年のパ・リーグ最多勝争いは稀に見る大混戦

 2023年のパ・リーグにおける最多勝争いは、1勝以内に13名以上の投手がひしめく大混戦となっている。過去2シーズンでは、投手4冠を達成した山本由伸投手が最多勝のタイトルを連続受賞していた。だが、今季はまさに群雄割拠の様相を呈しているといえよう。

 今回は、交流戦が終了した時点での最多勝争いの状況や、各投手の活躍について紹介。それに加えて、各チームの得点力や守備力などを参考にして、今後の展望についても考えていきたい(成績は6月20日の試合終了時点)。

首位争いをしている2チームは多くの投手が上位に

 交流戦が終了した時点での、パ・リーグ勝利数ランキングは以下の通り。

勝利数ランキング (C)PLM
勝利数ランキング (C)PLM

 3年連続のタイトル獲得を目指す山本由伸投手は、今季も6勝2敗、防御率1.59と抜群の投球を披露。主力として優勝に貢献したWBCの影響もあってやや出遅れたものの、登板を重ねるごとに状態を上げていき、今季もエースの称号に相応しい圧倒的な投球を披露している。

 山本投手が在籍するオリックスでは、プロ初登板で開幕投手を任された山下舜平大投手が期待通りに台頭。9試合で6勝1敗、防御率1.51と、20歳の若さで大ブレイクを果たしつつある。また、2年連続で2桁勝利を記録している宮城大弥投手が6勝を挙げ、技巧派左腕の山崎福也投手も5勝を記録。実に4名の投手が最多勝争いに加わる、充実の陣容となっている。 
 同じく首位争いを繰り広げる千葉ロッテでは、今季から先発に復帰した西野勇士投手が緩急自在の投球で6勝を記録。トミー・ジョン手術から復帰した前年は中継ぎとして防御率1.73と活躍を見せたが、今季は2017年以来となる本格的な先発転向を果たし、大いに存在感を発揮している。

 さらに、2022年は打線の援護に恵まれずに3勝11敗に終わった小島和哉投手が、今季は既に前年を上回る5勝を挙げるなど、順調に白星を積み上げている。佐々木朗希投手もWBCの影響で出遅れた事に加え、右手のマメの影響で戦列を離れる時期がありながら、9試合で5勝2敗、奪三振率13.58と、圧巻の投球でハーラーダービーの上位に食い込んでいる。

鷹のベテラン2名が存在感を発揮し、北海道日本ハムの2投手はチームと共に上昇

 今季も優勝争いに加わっている福岡ソフトバンクでは、今年で42歳を迎えた大ベテランの和田毅投手が5勝2敗、防御率2.98と、年齢を感じさせない投球を披露している。また、33歳の東浜巨投手も先発の一角として5勝を記録。同じく5勝を挙げている藤井皓哉投手が故障で離脱するなど台所事情が苦しい中で、二人のベテランが奮闘を見せている。

 交流戦で大きく状態を上げた北海道日本ハムでは、4月下旬から先発に転向した鈴木健矢投手がここまで6勝を挙げ、防御率1.55と素晴らしい成績を記録。それに加えて、序盤は苦しい投球が散見された上沢直之投手も5月以降に大きく調子を上げ、鈴木投手と同じくハーラーダービーのトップタイに並ぶ活躍でチームをけん引している。

 交流戦でも最下位に沈むなど苦戦が続く埼玉西武では、今季から先発に転向した昨季の最優秀中継ぎ投手・平良海馬投手が5勝をマーク。奪三振率は10.13と、持ち味である奪三振の多さは先発転向後も維持されており、快速球と多彩な変化球を武器に、先発としてもトップクラスの能力を持つことを示している。

オリックスは65試合を終了した時点で、前年の半数以上に及ぶ得点数を記録

 ここからは、パ・リーグ6球団のチーム別打撃成績を見ていきたい。

チーム打撃成績 (C)PLM
チーム打撃成績 (C)PLM

 現時点の得点・143試合換算の得点ともに、オリックスが1位、福岡ソフトバンクが2位という結果となった。オリックスは2022年にリーグ4位の490得点と打線がやや苦しんだが、今季は65試合を消化した時点で、前年の半数以上の得点を叩き出している計算になる。

 山本投手、山下投手、宮城投手が6勝、山崎福投手が5勝と、ハーラーダービーの上位にオリックスの投手が4名存在する点も、打線の得点力が白星を後押ししていることを裏付けている。この数字を鑑みても、山本投手をはじめとするオリックスの投手は、最多勝争いにおいては有利な立場にあると考えられる。

 ただし、2位の福岡ソフトバンクも143試合換算の数字では、1位のオリックスとわずか2点差と、打線の得点力では引けを取らない。それだけに、開幕から安定した投球で順調に白星を積み上げていた藤井投手の負傷離脱が惜しまれるところだ。

 和田投手は2016年、東浜投手は2017年に最多勝を獲得した経験を持つが、和田投手が2017年以降に100イニング以上を消化したシーズンは一度もない。また、東浜投手が規定投球回に到達したのは2017年の1度だけと、耐久性が懸念材料の一つといえる。両投手が久々の戴冠を果たせるかは、年間を通して登板を重ねられるかどうかにかかってきそうだ。

チームとして成長を続ける北海道日本ハムは、さらに得点力を向上させられるか

 千葉ロッテは得点数ではリーグ4位だが、143試合換算の数字ではリーグ3位に相当する。本塁打と塁打がリーグ最少と長打力に欠ける点は課題だが、西野投手が6勝、小島投手と佐々木朗投手が5勝と3名の投手が上位に顔を出している点を考えても、一定の援護は得られる環境にあると考えられそうだ。

 北海道日本ハムは前年の得点数がリーグ最下位だったが、今季は得点数が3位、143試合換算の数字も4位と、成績が向上している。万波中正選手の成長や新加入の加藤豪将選手の活躍と言った明るい話題も多いだけに、今後さらに得点数を伸ばすことができれば、鈴木投手や上沢投手にも大いにチャンスが生まれてきそうだ。

 埼玉西武は得点数、143試合換算の数字がいずれもリーグ最下位と、平良投手にとってはやや逆風と言える状況になっている。37試合で8本塁打を記録し、打率.308、OPS.927と気を吐いていた中村剛也選手の復帰によって、打線全体に波及効果がもたらされることに期待をかけたいところだ。

優勝争いを繰り広げる3チームは、いずれもミスの少ない守備を披露している

 最後に、パ・リーグ6球団の守備成績を確認する。

チーム守備成績(C)PLM
チーム守備成績(C)PLM

 リーグ戦でAクラスに位置している3チームは、いずれも守備率が.990以上と堅実な守備を見せている。守備率は必ずしも総合的な守備力の高さを示す指標ではないが、バックの守備が目に見えるミスを犯すことが少ないことが、投手にとってプラスの要素になることは間違いないだろう。

 北海道日本ハムはチーム防御率がリーグトップである一方で、失策数と守備率がリーグワースト。守備のミスが自責点の少なさにつながっている部分もあるが、失点数もリーグ最多の試合数を消化しながら2番目に少ない。投手陣の安定感は増しているだけに、若手の成長によって守備の確実性が増すか否かが、投手にとってもカギを握りそうだ。

並みいる好投手の中から誰が抜け出すのか、最多勝争いは例年以上に要注目だ

 今季のパ・リーグでは、143試合換算の得点数と守備率が高い3チームがAクラスに位置している。これらの数字は投手にとっても勝ち星に直結しうる要素となるだけに、オリックスと福岡ソフトバンクに所属する投手は比較的有利な立場にあり、得点力にはやや劣るが失策数がリーグ最少の千葉ロッテ所属の投手が、それに次ぐ立場にあると考えられよう。

 オリックスの大エース・山本投手が3年連続の栄冠に輝くか、他の投手がその状況に待ったをかけるか。好投手が居並ぶパ・リーグにおいて、群雄割拠の状態を抜け出す投手がいったい誰になるのか。今季のハーラーダービーの行方は、これまで以上に要注目だ。

文・望月遼太

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