背番号の歴史を紐解くと、背負ってきた先人たちの系譜が必ず存在している
背番号の変更は、オフシーズンからシーズン序盤にかけての注目のトピックの一つだ。各球団の歴史を紐解いていくと、どの背番号にも着用してきた先人たちの記録が存在する。球団によっては特別な意味合いを持つ番号も存在するだけに、背番号の変更が期待の表れとなっているケースも多い。
今回は、2022年のオフに行われた背番号変更の中から、各球団ごとに主要なものを紹介。番号を継承してきた先人たちの歴史に触れつつ、2023年に新たな番号を背負った選手たちの活躍に期待を寄せたい。
北海道日本ハム
2022年の首位打者に輝いた松本剛選手が、糸井嘉男氏、西川遥輝選手と俊足好打の外野手がつけた背番号「7」を継承。また、主軸に定着しつつある野村佑希選手も、小谷野栄一氏、レアード選手、大田泰示選手と、強打の右打者が背負った「5」番を受け継いでいる。
淺間大基選手が片岡篤史氏、金子誠氏、近藤健介選手と、チームの大黒柱が背負ってきた「8」番をつける点にも注目だ。さらに、田中賢介氏が長年着用した背番号「3」は逆輸入ルーキーの加藤豪将選手、小笠原道大氏や杉谷拳士氏の背番号「2」は新加入のマルティネス選手と、1桁台の背番号に多くの変遷が生まれている。
投手では、2022年限りで引退した増井浩俊氏と金子千尋氏がともに背負った「19」番を、タフネス右腕の玉井大翔投手が継承。また、かつては森安敏明氏、江夏豊氏といった剛腕が背負い、近年では糸井氏、西川選手、淺間選手がつけた出世番号の「26」を、新加入の田中正義投手が着用している点も興味深い要素だ。
東北楽天
中日から加入した阿部寿樹選手が、オコエ瑠偉選手の退団に伴って空いた「4」番を背負う。勝負強い打撃と安定した二塁守備で黎明期のチームを支えた高須洋介氏が背負った番号でもあるだけに、同じく内野が主戦場の阿部選手の活躍にも期待したいところだ。
新人では、ドラフト1位ルーキーの荘司康誠投手が背番号「19」を背負う。チームの成長に寄与した野村克也氏が監督として使用した番号だが、2010年以降に着用したのは藤平尚真投手だけだった。4月22日に念願の初登板を果たした荘司投手は1年通して活躍し、“楽天の19番”を大きくアピールできるか。
背番号「4」を除く1桁台の背番号はいずれも埋まっているという事情もあり、それ以外に大きな背番号の変更はなかった。ただし、涌井秀章投手がつけていた背番号「16」に加えて、「12」と「15」も現在は空き番に。今季途中、あるいは来季の変遷にも要注目だ。
埼玉西武
今井達也投手が本人の希望で、背番号を「11」から「48」に変更。森繁和氏、石井丈裕氏、森慎二氏、岸孝之投手といった好投手たちがつけた番号よりも、公私ともに慕っていた武隈祥太氏からの継承を選択した。自ら志願して大きな番号に変更するのは珍しいケースなだけに、今井投手の決意のほどがうかがえよう。
森友哉選手がつけていた背番号「10」は、新助っ人のペイトン選手が着用。森選手の前には熱いキャラクターでチームを鼓舞したカーター氏も使用しており、先人のようにファンに愛される存在となってほしいところだ。また、新加入の張奕投手が、工藤公康氏や帆足和幸氏が背負った背番号「47」を受け継いでいる点にも注目といえよう。
ドラフト1位ルーキーの蛭間拓哉選手の背番号は「9」。近年では赤田将吾氏、大崎雄太朗氏、木村文紀氏が使用しており、基本的には外野手の番号といえる。蛭間選手は高いポテンシャルをプロの舞台でも発揮し、いずれも一軍で存在感を示した先人たちを上回る活躍を見せられるか。
千葉ロッテ
田村龍弘選手は里崎智也氏から受け継いでいた「22」番から、一般的に捕手の番号として知られる「27」番に変更。千葉ロッテにおいては八木沢荘六氏、牛島和彦氏、河本育之氏、古谷拓哉氏と主力投手の番号にもなっていたが、田村選手が新たな流れをつくれるか。
MLBから3年ぶりに復帰を果たし、ここまでリリーフ・抑えどちらも任されている澤村拓一投手は「54」番を選択。今季から古巣に復帰した黒木知宏投手コーチの現役時代の番号だ。気迫あふれる投球で苦しい時期のチームを支え、「魂のエース」と称された黒木氏と同様に、澤村投手にも豪快なマウンドさばきは見どころだ。
同じく新加入のメルセデス投手は、ヒルマン氏、セラフィニ氏、ハーマン氏、オスナ投手と、助っ人投手の成功例が多い「42」番を受け継いだ。田村選手が一軍で台頭した時期に使用していた「45」番に変更した植田将太選手も含め、縁起の良い背番号を活躍につなげられるかに注目だ。
オリックス
FAで加入した森友哉選手は、新天地で背番号「4」を着用。阿部真宏氏、ヘルマン氏、福田周平選手(2022年から背番号「1」に変更)がこの背番号で活躍を見せたが、球団合併以降の成功例は多くない。しかし、森選手は打率.308(5月8日試合終了時点)と打撃も上々。若手投手を巧みにリードし、チーム貢献度は高い。新たな背番号「4」のイメージを打ち立てそうだ。
松永浩美氏、藤井康雄氏、ローズ氏といった名選手が背負い、後藤駿太選手が昨季途中まで11年半にわたって使用した「8」番は、新外国人のゴンザレス選手が引き継いだ。MLB通算107本塁打の打撃力と、内外野の全ポジションをこなす究極のユーティリティ性を併せ持つだけに、背番号の系譜に連なる活躍を見せる可能性は十分だ。
同じく新助っ人のシュウィンデル選手がつけた背番号「23」も、小川博文氏、ブラウン氏、北川博敏氏、伏見寅威氏が活躍を見せた、縁起の良い番号といえる。若月健矢選手が2020年まで使用した背番号「37」をつける石川亮選手も含め、新加入組が背番号の歴史を受け継げるかに注目したい。
福岡ソフトバンク
WBCの経験を経てまた一つ成長を遂げた牧原大成選手は、今季から背番号を「8」に変更。自身と同じくユーティリティとしてチームを支えた明石健志氏の背番号を受け継ぎ、今後も幅広い活躍に期待したい。また、4月25日に一軍合流した三森大貴選手は、野手としては珍しい「13」番。渡辺秀一氏や二保旭投手が活躍を見せた番号だが、今後は投手の番号から「三森選手の番号」となっていく可能性もありそうだ。
新加入の近藤健介選手の背番号は「3」。佐々木誠氏、松永浩美氏、松中信彦氏、松田宣浩選手(2017~2018年)と、チームを支えた選手たちが背負ってきた伝統ある背番号だ。江夏豊氏、加藤伸一氏、武田一浩氏、岩嵜翔投手らがつけた背番号「17」を受け継ぐ有原航平投手ともども、その系譜に加わるような活躍が期待される。
同じく移籍加入のオスナ投手は、2022年までデスパイネ選手が着用していた「54」番を背負う。2011年に19勝を挙げて最多勝に輝き、チームの日本一にも貢献したホールトン氏が使用した番号でもあるだけに、オスナ投手にも助っ人として申し分のない投球が望まれるところだ。
数字が小さい背番号だけが、全ての選手にとっての到達点ではない
松本選手、野村選手、牧原大選手らは、活躍が認められて1桁の背番号を勝ち取ったといえる。その一方で、尊敬する先輩が背負った番号に変更した今井投手や、野手ながら幼少期の番号という思い入れのある「13」番を選択した三森選手のような例も存在。数字が小さい背番号が全ての選手にとっての到達点ではない、という点も、興味深い要素といえよう。
今回紹介した選手たちは球団の期待に応え、新たな背番号の系譜に自らの名を刻むような活躍を見せることができるか。背番号の変更をきっかけに、一人でも多くの選手がさらなる飛躍を果たすことに期待したいところだ。
文・望月遼太
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