3大会ぶりの世界一奪還に、パ・リーグの選手たちも大いに貢献
第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表が3大会ぶりとなる優勝を果たした。悲願の世界一奪還を成し遂げたチームの中で、パ・リーグの球団に在籍する選手たちが果たした貢献は、いずれも大きなものがあった。
今回は、パ・リーグ球団から日本代表に選出された13名の選手たちが見せた、今大会における活躍ぶりを紹介。それぞれの役割を果たして世界一に貢献した各選手の印象に残るプレーについて、あらためて振り返っていきたい。
登板機会があった6名の投手は、大舞台においても存在感を発揮
パ・リーグ球団から投手として選出された7名の選手の、今大会での成績は下記の通り。
佐々木朗希投手はNPB球団に所属する投手としては唯一、複数の試合で先発登板を経験。チェコ戦ではわずか3.2回で8個の三振を奪い、1失点(自責0)の快投で勝ち投手となった。準決勝のメキシコ戦では4回に痛恨の3ランを浴びたが、21歳の若さで投手陣の主力を務め、160km/hを超す速球を連発する姿は大きなインパクトを残した。
山本由伸投手はオーストラリア戦に先発し、4回を8奪三振・無失点、許した走者は1人のみと完璧な投球で白星をマーク。準決勝のメキシコ戦では2番手として登板し、3イニングを無失点と相手に傾きかけた流れを食い止めた。4イニング目につかまって2失点を喫したものの、山本投手の力投が、吉田正尚選手の同点3ランを生んだという側面もあるはずだ。
伊藤大海投手は準々決勝のイタリア戦で、2点差に迫られ、なお2死1,3塁の状況で登板。この場面を無失点で切り抜ける値千金の好救援を見せ、勝利を大きく手繰り寄せた。そして、決勝のアメリカ戦でも2点リードの6回に登板して3者凡退。セットアッパーとして金メダル獲得に貢献した東京五輪に続き、抜群の強心臓を発揮して優勝に貢献してみせた。
宇田川優希投手は韓国戦でメジャーリーガーのトミー・エドマン選手とキム・ハソン選手を打ち取るなど、1イニングを3者凡退・2奪三振と好投。続くチェコ戦では球数制限を迎えた佐々木朗投手の後を受けて2死1塁で登板し、次の打者を3球三振に斬って取る完璧な投球を見せた。登板機会はこの2試合のみだったが、大舞台で貴重な経験を積んだといえよう。
宮城大弥投手はチェコ戦で3番手として登板し、そこから5イニングを一人で投げきる役割を担った。最初のイニングに1失点したが、6回以降は一人の走者も許さない完璧なピッチングを展開し、9回には3者連続三振を奪う離れ業を演じた。今大会の日本代表でセーブを記録したのは、決勝の大谷翔平投手と、チェコ戦の宮城投手の2例だけとなっている。
松井裕樹投手は登板機会が1試合にとどまるなど本領を発揮しきれなかったが、それでも韓国戦では1イニングを3者凡退に抑えるさすがの投球を披露。栗林良吏投手の故障で追加招集された山崎颯一郎投手は登板機会がなかったものの、シーズン開幕後に今回の貴重な経験を生かしてほしいところだ。
主力として活躍した3選手に加え、スペシャリストの面々も持ち味を大いに発揮
続いて、野手として選出された6名の選手たちの、今大会における成績を見ていきたい。
源田壮亮選手は遊撃手のレギュラーとして活躍を見せていたが、韓国戦で右手の小指を骨折。それでも準々決勝のイタリア戦ではスタメン復帰を果たし、1安打1四球と奮闘。準決勝と決勝でもカットで粘って四球をもぎ取るなどチームプレーに徹し、守備では故障の影響を感じさせないプレーを連発。文字通りの内野の要として、優勝の立役者の一人となった。
山川穂高選手は2022年のパ・リーグで本塁打と打点の2冠に輝いたが、一塁のポジションを争った岡本和真選手が好調だったこともあり、先発出場は1試合のみ。それでも、そのチェコ戦では1安打1犠飛を記録。そして、代打で出場した準決勝のメキシコ戦では1点差に追い上げる犠飛を放ち、ここぞの場面での起用に応えて逆転勝利への足がかりを作った。
近藤健介選手は全試合に2番打者として先発出場し、打率.346、出塁率.500、OPS1.115という素晴らしい打撃成績を記録。守備でも鈴木誠也選手の故障による出場辞退に伴い、守り慣れないライトで奮闘した。韓国戦では5回に豪快な本塁打を放つなど、持ち前の打撃技術と優れた選球眼を活かし、打線に欠かせないキーマンとして抜群の存在感を示した。
甲斐拓也選手は中国戦、チェコ戦、イタリア戦で先発マスクを被るなど、主戦捕手の一人として奮闘。打撃面では打率.091と振るわなかったが、15打席で3四球・1犠打を記録し、つなぎ役として堅実な働きを見せた。準決勝のメキシコ戦では源田選手の執念のタッチにつながる送球で盗塁刺をもたらすなど、自らの持ち味を生かして優勝に貢献している。
鈴木誠也選手の辞退に伴い追加招集された牧原大成選手は、代走や外野の守備固めとして、全7試合中6試合に出場した。また、打席に立つ機会は限られていたものの、チェコ戦では途中出場で適時打を記録。ユーティリティ性を生かしてチームを支えた縁の下の力持ちは、決勝戦でも9回からセンターの守備固めで出場。歓喜の瞬間をグラウンドで味わった。
周東佑京選手も代走・守備固めとして5試合に出場。出色だったのが準決勝のメキシコ戦で、1点ビハインドの9回に代走として出場。勝負をかけた栗山英樹監督の期待に応え、村上宗隆選手の適時打で圧倒的な脚力を生かして一塁から一気に生還。まさに周東選手にしかできない走塁を見せ、足のスペシャリストとして見事にサヨナラ劇を呼び込んだ。
「史上最強」と呼ばれた日本代表戦士たちが、パ・リーグで見せるプレーに注目だ
登板機会のあった6名の投手は全て、投球回と同じかそれ以上の奪三振数を記録。防御率が4点台以上となった投手も一人も存在せず、全ての投手が大崩れせずに実力を発揮した。最年長が27歳の松井投手と若手揃いであることも特徴で、3年後の次回大会に向けて、今後は各投手のさらなる成長が期待できる点も頼もしいところだ。
野手陣では、源田選手、近藤選手、甲斐選手が主力として活躍し、山川選手、牧原大選手、周東選手は与えられた出番で自らの役割をきっちりとこなした。異なる立場に置かれた選手たちがそれぞれチームプレーに徹したからこそ、「史上最強」と謳われた今回の日本代表が、前評判に相応しいチーム力を発揮できたといえよう。
佐々木朗投手や松井投手のように高校時代から注目を集めた存在から、宇田川投手、甲斐選手、牧原大選手、周東選手のように、育成から這い上がって日本代表に上り詰めた選手まで。14年ぶりの世界一は、リーグやポジションの垣根を越え、まさにチーム全員で勝ち取ったものだった。
今後は各選手が所属チームに合流し、シーズン開幕後はそれぞれライバルとしてリーグの覇権を争っていくことになる。日本中に歓喜をもたらした選手たちが、新たなシーズンを迎えるパ・リーグで見せてくれるプレーぶりにも、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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