今大会で先発登板を果たした投手は、全てパ・リーグ球団への在籍歴がある
現在行われている「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC(WBC)」で、快進撃を続ける日本代表。興味深いことに、今大会の「先発4本柱」と位置づけられている、大谷翔平選手、ダルビッシュ有投手、佐々木朗希投手、山本由伸投手の4名は、いずれもNPBではパ・リーグの球団のみに所属している。
今回は、日本代表が誇る「4本柱」がパ・リーグの舞台で見せてきた活躍ぶりを紹介。各選手の圧倒的な投球を振り返るとともに、残り2試合のさらなる活躍にも期待を寄せたい。
大谷翔平選手(元・北海道日本ハム)
大谷選手は2012年のドラフト1位で北海道日本ハムに入団。前例なき投打の「二刀流」として注目を集めたが、プロ初年度の2013年は防御率4.23、打率.238と苦しんだ。しかし、翌2014年には投手として11勝・防御率2.61、野手では10本塁打・OPS.842と双方で好成績を記録。高卒2年目にして、従来の常識を覆す活躍を見せた。
続く2015年は、打者としては打率.202と不振に陥った一方で、投手として最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の3冠に輝いた。そして、4年目の2016年は投手として10勝・防御率1.86、野手では22本塁打・打率.322・OPS1.004と投打に圧倒的なプレーを見せ、史上初めて投手と指名打者の2ポジションでベストナインに選出されるという離れ業を演じた。
同年のクライマックスシリーズでは日本人最速となる165km/hを記録し、日本シリーズでも第3戦でサヨナラ打を放ってチームを日本一に導いた。NPB最終年となった2017年は、野手としては打率.332、OPS.942と活躍したが、投手としては故障で5試合の登板にとどまる。
それでも、10月4日の試合では「4番・投手」として10奪三振・完封勝利。野手としても安打を放って決勝のホームを踏む活躍を見せ、日本最後の試合で二刀流としての集大成を見せつけた。パ・リーグで腕を磨き、唯一無二の実績を積み上げた大谷投手は、MLB初年度の2018年に新人王を獲得。その後も現在に至るまで、まさに規格外の活躍を続けている。
ダルビッシュ有投手(元・北海道日本ハム)
ダルビッシュ投手は2004年のドラフト1位で北海道日本ハムに入団。1年目の2005年途中から早くも先発ローテーションに定着し、94イニングを投げて防御率3.53と、高卒新人離れした投球を披露する。続く2006年には12勝を挙げて防御率2.89と主力投手に成長し、チームのリーグ優勝と日本一にも貢献を果たした。
2007年には自身初の防御率1点台を記録し、初めて200投球回と200奪三振も突破。チームのリーグ連覇の立役者となり、最多奪三振・沢村賞・シーズンMVPを受賞した。2008年には北京五輪出場に伴う離脱がありながら、200投球回・200奪三振を記録。惜しくも連続受賞はならなかったが、2年続けて沢村賞の受賞基準を全て満たすという快挙を達成した。
2009年の開幕前に行われたWBCでも主力投手として活躍し、準決勝以降は抑えを務めて優勝投手に。日本の連覇に貢献して迎えた2009年シーズンは、故障による離脱がありながら3年連続の防御率1点台を記録。最優秀防御率、最高勝率、シーズンMVPを受賞した。故障明けの2010年も支配的な投球を続け、最多奪三振と最優秀防御率の2冠に輝いている。
NPBラストイヤーの2011年は自身3度目の最多奪三振を受賞し、いずれもキャリアベストとなる18勝、防御率1.44、232投球回、276奪三振という驚異的な数字を記録。2007年から5年連続で防御率1点台を記録し、NPB通算の防御率も1.99。日本のエースとして君臨した稀代の好投手は、2012年から挑戦したMLBにおいても息の長い活躍を続けている。
佐々木朗希投手(千葉ロッテ)
佐々木朗投手は2019年のドラフト1位で千葉ロッテに入団。プロ1年目の2020年は身体作りに専念し、翌2021年5月に一軍初登板を果たす。デビュー当初は苦しむ局面もあったが、8月以降は6試合で防御率1.22と好投。同年のクライマックスシリーズではファーストステージ第1戦の先発に抜擢され、6回10奪三振1失点(自責0)という快投を見せた。
プロ3年目の2022年は開幕からローテーションの一角を務め、4月10日のオリックス戦では、NPB史上16人目、28年ぶりの完全試合を成し遂げた。それに加えて、NPB新記録となる13者連続奪三振、NPBタイ記録の1試合19奪三振という2つの大記録もこの試合で達成。プロ野球史上最高の投球の一つと形容される、まさに歴史的なピッチングを披露した。
さらに、完全試合の次回登板となった4月17日の北海道日本ハム戦でも、8回までパーフェクトに抑えたまま降板という驚異的な投球を披露。17イニング連続無安打、52者連続凡退という圧倒的な記録を樹立し、20歳の若さで球界屈指の剛腕へと成長を遂げた。
7月に右手のマメを潰して離脱を強いられた影響もあり、同年の規定投球回到達は果たせなかった。それでも、奪三振率12.04という圧倒的な数字を残し、防御率も2.02と優秀だ。160km/hを超える快速球、切れ味抜群のフォーク、優れた制球力を併せ持つ「令和の怪物」は、まさに無限大のポテンシャルを秘めた存在だ。
山本由伸投手(オリックス)
山本投手は2016年のドラフト4位でオリックスに入団。ルーキーイヤーの2017年は先発として5試合に登板したが、続く2018年にはセットアッパーとして32ホールドを記録。高卒2年目にしてリリーフで成功を収めたが、2019年からは再び先発に転向。同年は防御率1.95と安定感抜群の投球を見せ、自身初タイトルとなる最優秀防御率に輝いた。
4年目の2020年も先発として活躍し、自身初の最多奪三振を受賞。そして、2021年には18勝、防御率1.39と素晴らしい数字を残し、最多勝・最優秀防御率・最多奪三振・最高勝率の投手4冠を受賞。圧巻の投球でチームをリーグ優勝に導き、沢村賞ならびにリーグMVPの栄誉にも輝いた。
続く2022年も支配的な投球を続け、6月18日の埼玉西武戦ではノーヒットノーランを達成。2年続けて防御率1点台と200奪三振を記録し、前年に続いて投手4冠に輝いた。沢村賞とリーグMVPも2年連続で受賞し、絶対的エースとしてリーグ連覇の立役者となった。
2022年終了時点での通算防御率は1.95と、あのダルビッシュ投手を上回る数字を残している山本投手。150km/hを優に上回る快速球と多彩な変化球を備え、全ての球が一級品という規格外の完成度を誇る。沢村賞の栄誉に2年連続で輝いたという事実が、当代随一の先発投手であることの裏付けといえよう。
それぞれ異なる輝きを放つ、パ・リーグが輩出した「4本柱」
大谷選手とダルビッシュ投手は、北海道日本ハムでの活躍を経て、現在はMLBで抜群の存在感を発揮。また、24歳の山本投手と21歳の佐々木朗投手は若くして近年のパ・リーグを席巻する存在となっており、今後のさらなる成長も期待されるところだ。
球界に新風を巻き起こした「二刀流」、日米通算188勝の大投手、現在のパ・リーグを代表する絶対的エース、そして無限の可能性を秘めた若き剛腕。まばゆいばかりの輝きを放つ、パ・リーグが輩出した「4本柱」の投球に、今後もぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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