準優勝だった2006年以来、17年ぶりのベスト4入りを果たしたキューバ代表
3月15日に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準々決勝で、キューバ代表がオーストラリア代表に勝利。日本代表に次ぐ準優勝だった2006年の第1回大会以来、実に17年ぶりとなるベスト4進出を果たした。
今大会のキューバ代表は強豪復活を印象付けているが、そのメンバーの中には6名のパ・リーグ戦士が存在することをご存知だろうか。今回は、パ・リーグの球団に在籍した経験を持つキューバ代表選手たちと、その活躍ぶりを紹介していきたい。
リバン・モイネロ投手(福岡ソフトバンク)
モイネロ投手は2017年途中に、育成選手として福岡ソフトバンクに入団。同年6月には早くも支配下登録を勝ち取り、シーズン途中入団ながら34試合で15ホールドを挙げた。続く2018年は不振に陥ったが、来日3年目の2019年以降はまさに支配的な投球を見せていく。
2019年は自己最多の60試合に登板してリーグ3位の34ホールドを記録し、2020年は全120試合の短縮シーズンながら40ホールドポイントをマーク。最優秀中継ぎに輝きMVP投票でも3位に入る、まさに圧巻のシーズンを送った。2019年以降は4年連続で防御率1点台を記録するなど安定感も抜群で、球界屈指のリリーフ左腕として活躍を続けている。
今回のWBCではキューバ代表のセットアッパーを務め、準々決勝終了時点で4試合に登板して失点は0、奪三振率10.38と、大舞台でも大いに持ち味を発揮している。若くして豊富な経験を積んできた左腕は、今やキューバ代表にとっても決して欠かせない存在だ。
アリエル・マルティネス選手(北海道日本ハム)
マルティネス選手は2018年に育成選手として中日に入団。来日3年目の2020年7月に支配下への昇格を果たし、同年は一軍で39試合に出場。打率.295、出塁率.385、OPS.806と捕手ながら好成績を残し、持ち前の打力が一軍の舞台でも通用することを証明した。
2021年は成績を落としたが、2022年はクリーンアップの一角として活躍し、自己最多の82試合に出場して8本塁打を記録。出塁率.350、OPS.787と指標の面でも一定以上の数字を記録しており、2023年に移籍した北海道日本ハムでも活躍が期待されている。
今大会では当初は控え捕手だったが、3試合目のパナマ戦から先発マスクを被るように。打率.111と打撃面では本領を発揮できていないが、マルティネス選手がスタメンに入ってからチームは3連勝中だ。準決勝以降は「打てる捕手」として、打撃面でもチームに貢献できるかに注目だ。
ジュリスベル・グラシアル選手(元・福岡ソフトバンク)
グラシアル選手は2018年に福岡ソフトバンクに入団。来日当初は外国人枠の関係で出番が限られたが、腐ることなく二軍で打率.431と格の違う成績を残し、一軍でもOPS.828と活躍した。続く2019年は103試合で28本塁打とハイペースで本塁打を量産し、打率.319、OPS.960と抜群の成績を残した。
さらに、同年の日本シリーズでは4試合で3本塁打、打率.375、OPS1.313という圧倒的な活躍を見せ、シリーズMVPを受賞。本職の三塁ではなくチーム事情に応じて外野手を務め続けた献身的な姿勢も光り、主力としてチームの黄金時代形成にも大きく寄与した。
キューバ代表でも2017年WBCの日本代表戦で菅野智之投手から本塁打を放つなど、主力打者として活躍。今大会では、準々決勝までわずか4打席と出番が限られているが、パナマ戦では途中出場で三塁打を記録。日本シリーズで見せた勝負強さを発揮し、残る試合でここぞの一打を放ってほしいところだ。
アルフレド・デスパイネ選手(元・千葉ロッテ、福岡ソフトバンク)
デスパイネ選手は2014年途中に千葉ロッテに入団。同年は45試合の出場ながら、打率.311、OPS.1001とすばらしい数字を記録。2015年は代表での活動もあって調子を崩したが、2016年には24本塁打、打率.280、OPS.841と復調し、主砲として存在感を放った。
2017年から福岡ソフトバンクに活躍の場を移し、移籍初年度に35本塁打・103打点で本塁打王と打点王の2冠に輝いた。その後も怪力と広角に強い打球を飛ばせる打撃技術を併せ持つ存在として活躍を続け、2017年から始まった4年連続日本一にも主力として貢献した。
キューバ代表としても長きにわたって主砲を務め、北京五輪では銀メダル獲得に貢献。WBCには2009年の第2回大会から4大会連続で選出され、今大会では打率.417、得点圏打率.375、OPS.977と、4番として申し分のない成績を記録。文字通りの大黒柱として、母国の躍進を力強くけん引している。
ロエル・サントス選手(元・千葉ロッテ)
サントス選手は2017年の第4回WBCで活躍し、同年のシーズン途中に千葉ロッテに入団。打席内で走り出しながらバットに当てて内野安打を生む「走り打ち」や、投球にバットを投げ当てて外野に運ぶ妙技といった、独特な打撃スタイルで日本のファンを沸かせた。
成績面でも来日から数カ月は高打率をキープしていたが、夏場に差し掛かってからは調子を落とし、最終的には打率.250、OPS.637と本領を発揮しきれず。5盗塁・4盗塁死とNPB投手のクイックにも苦しめられて数字を伸ばせず、NPBでの挑戦は1年限りとなった。
今大会では2試合目のイタリア戦でスタメン落ちも経験したが、3試合目以降はトップバッターに定着。そこから3試合で6安打と水を得た魚のように活躍し、チームも3試合で24得点と息を吹き返した。打率.429、OPS.984と出色の打撃を見せる韋駄天は、2連敗からの巻き返しを果たした最大の立役者の一人となっている。
ヤディル・ドレイク選手(元・北海道日本ハム)
ドレイク選手はキューバからの派遣でNPBに挑戦した上記の5選手とは異なり、亡命を経てアメリカやメキシコでプレーした経験を持つ。また、2015年のプレミア12ではメキシコ代表としてプレーし、日本代表の前田健太投手を相手に2安打を放つ活躍を見せている。
2017年途中に北海道日本ハムに入団し、8月30日にはオランダ代表のエース格として活躍したバンデンハーク氏から豪快な本塁打を放つ一幕も。しかし、通年では打率.232、OPS.560と期待に応える活躍は見せられず、同年限りで日本球界を離れている。
残念ながらパ・リーグでは本領を発揮できなかったが、今大会ではキューバ代表のレギュラーとして躍動。3試合目のパナマ戦では4打数4安打の離れ業を演じるなど、打率.412、得点圏打率.667、OPS1.029と大活躍。下位打線に厚みをもたらす存在として、大いにその実力を証明している。
今大会のキューバ代表における、パ・リーグ戦士たちの活躍は特筆もの
デスパイネ選手、サントス選手、ドレイク選手の3名はレギュラーとして活躍し、モイネロ投手も勝ちパターンとして勝利に貢献。マルティネス選手も捕手としてチームの状態を上向かせ、グラシアル選手も少ない出場機会で三塁打を記録している。今大会のキューバ代表におけるパ・リーグ戦士たちの活躍ぶりは、特筆に値するものがあるといえよう。
日本で腕を磨いた選手たちが国際舞台で結果を残す姿を見るのは、ファンならずとも嬉しくなるもの。準決勝以降における各選手のプレーぶりにも、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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