チームになじめず「気疲れしています」 指揮官から檄、球への対応…侍J宇田川の苦悩

Full-Count

2023.2.20(月) 07:05

他投手の投球を見つめる侍ジャパン・宇田川優希※写真提供:Full-Count(写真:小林靖)
他投手の投球を見つめる侍ジャパン・宇田川優希※写真提供:Full-Count(写真:小林靖)

ダルビッシュがブルペン入りした18日、宇田川はトレーニングルームにこもった

「正直、気疲れというか……」。野球日本代表「侍ジャパン」の宮崎キャンプは19日、第1クールを終えた。2日目の18日、パドレスのダルビッシュ有投手がブルペン入りした際は、若手の投手陣がズラリと一列並んで見学するなど、大注目を浴びていた。しかし、同時刻。その輪に入らず一人トレーニングルームにこもった男がいる。オリックス・宇田川優希投手は、もがき苦しみながらも、自らの使命を果たそうと、必死に腕を振っている。

 日本シリーズでもポーカーフェースを崩さなかった右腕が、少し不安そうな表情を見せる。この日、侍キャンプで初めてブルペンに入ったが、納得いかず“おかわり”。2度目のブルペンでは、クイックで投げ込んだ。

 昨年7月まで育成だった投手が8か月後の3月、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表として日の丸を背負う。まさに大出世だが、目まぐるしく変わる環境に大苦戦を強いられた。NPBから今回のWBCメンバーに選ばれた投手陣の中で、昨年11月の強化試合にも出場しなかったのは3人。その中で国際大会の経験がないのは宇田川だけだった。

 急ピッチでの調整に焦り、WBC使用球に慣れようとすればするほど、うまくハマらない。「滑らないようにと考えすぎて、フォームが崩れて……」。2月1日に始まったオリックスの宮崎キャンプでは中嶋聡監督から調整不足を指摘された。さらに、体重が100キロを超えたため、減量を命じられた。

 今回の侍キャンプでは、各所で“ダルビッシュ塾”が開講。巨人・大勢投手や阪神・湯浅京己投手らが、ダルビッシュから教わった変化球に手ごたえを感じていた。一方で、宇田川はまだチームメートにうまくなじめていない部分も。「みんな優しいんですけど……自分から行けるようなタイプではないので……」。どうしても遠慮して、周りに気を遣ってしまう。「気疲れっていうのは出てきている。チームにまだ慣れていない部分もあるので、慣れていけたらもっとパフォーマンスにも関係するのかな」と本音も打ち明ける。

19日にプルペン入りした宇田川優希※写真提供:Full-Count(写真:小林靖)
19日にプルペン入りした宇田川優希※写真提供:Full-Count(写真:小林靖)

オリックスの同僚・山本由伸が「一緒にご飯行こう」

 そんな中、助けになったのが同僚のエース、山本由伸投手。同じ1998年生まれで、キャンプでは部屋も隣だ。「自分から行けないので、気を遣ってくれて。僕の部屋に寄って一緒にご飯行こうって」。宮城大弥投手、佐々木朗希投手、高橋宏斗投手らと食事にも出て、同世代のチームメートとは徐々に交流も深まってきた。

 技術面でも、頼もしい存在がいる。オリックスでも指導を受ける厚澤和幸コーチが「24時間監視です」とつきっきりで指導。この日、2度目のブルペンでクイック投法を採用したのは、厚澤コーチの指示だった。「クイックだと考える時間がないので迷いなく(腕を)振れた。これが一番の収穫でした」。悩める右腕に光が差し込んできた。

 ダルビッシュのブルペン入りは知っていたが、見たかった気持ちを押し殺した。「すごく見たかったですけど、まずは自分のメニューをこなしてから。皆と同じように見られる立場になってからだと思う」。室内練習場で中嶋監督との“約束”だった減量にも取り組んだ。現在は97キロ。こちらも順調だ。

 試行錯誤を繰り返し、侍ジャパンの一員として世界一に貢献する。日の丸を背負えば、ドラフト1位も育成出身も関係ないが、自分の投球が勇気を与えられることも分かっている。「自分も千賀(滉大投手・メッツ)さんを見て凄いなと思った。育成選手の希望になれたらと思いますし、恥ずかしい投球はできない」。もう迷わない。やるべきことはわかっている。

記事提供:Full-Count

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