NPB史上初となる現役ドラフトが、各選手のキャリアを好転させるきっかけとなるか
12月9日、NPB史上初となる現役ドラフトが開催された。各球団がそれぞれ1名の選手を放出し、代わりに1名の新戦力を獲得。出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化するという目的が果たされるか、各選手の新シーズンにおけるプレーぶりには要注目と言える。
今回は、パ・リーグ6球団が現役ドラフトで獲得した選手たちについて詳しく紹介。NPBにおけるこれまでの活躍を振り返るとともに、各選手の特徴や、新天地で期待される役割などの要素について、詳しく紹介していきたい。
松岡洸希投手(埼玉西武→北海道日本ハム)
松岡洸希投手はルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズから、2019年のドラフト3位で埼玉西武に指名されてプロ入り。プロ1年目の2020年に早くも一軍デビューを飾ったが、2試合で防御率13.50、二軍でも19試合に登板して防御率7.77とプロの壁に直面した。
だが、続く2021年は二軍での13試合で防御率1.38、奪三振率10.38と長足の進歩を見せ、高いポテンシャルの一端を示した。2022年は二軍で自己最多の31試合に登板し、防御率こそ5.95ながら、奪三振率は9.99と前年同様にハイペースで三振を奪ってみせた。
スリークォーターに近いサイドスローから投じられる快速球が大きな武器で、まだ22歳と伸びしろも十分。新天地で飛躍のきっかけをつかめれば、大化けする可能性もある好素材だ。2023年にオープンする新球場で、高い奪三振力を持つ若き右腕が躍動する姿に期待したいところだ。
正隨優弥選手(広島→東北楽天)
正隨優弥選手は大阪桐蔭高校から亜細亜大学を経て、2018年のドラフト6位で広島に入団。プロ1年目の2019年は二軍で105試合に出場して6本塁打を放ったが、打率.208と安定感を欠き、一軍昇格は果たせなかった。
しかし、続く2020年には二軍で打率.295、出塁率.393と、課題の確実性が大きく改善。2021年は二軍で打率.293を記録しただけでなく、70試合で11本塁打と長打力も向上。しかし、一軍では2年続けて打率1割台と結果を残せず、一軍定着は果たせなかった。
2022年は二軍で打率.262、8本塁打と前年に比べて成績を落とし、3年ぶりに一軍出場なしに終わっていた。それでも、主力に左打者が多い東北楽天打線において、右の長距離砲候補となる正隨選手にかかる期待は大きい。大阪桐蔭高校の大先輩でもある浅村栄斗選手が在籍する新天地で、26歳の新鋭が殻を破る活躍を見せられるかに注目だ。
陽川尚将選手(阪神→埼玉西武)
陽川尚将選手は東京農業大学から、2013年のドラフト3位で阪神に入団。プロ入りから2年間は一軍出場がなかったが、3年目の2016年にウエスタンで本塁打と打点の2冠を獲得。続く2017年にも21本塁打、91打点で2年連続の2冠王に輝き、その存在をアピールした。
続く2018年には一軍でも75試合に出場し、打率.252、6本塁打、48打点と一定の存在感を示した。翌2019年は打率.109と深刻な不振に陥ったが、2020年はOPS.770と復調。全120試合制の短縮シーズンながら、自己最多の8本塁打を記録した。
2021年は打率.174と再び苦しいシーズンとなったが、2022年は自己最高の打率.294、出塁率.351と確実性が向上。対左投手では打率.357と抜群の強さを発揮し、「左キラー」として活躍した。陽川選手が新天地でも同様の働きを見せてくれれば、2022年にリーグワーストの打率.229と打線が低迷した埼玉西武にとっては、大きなプラスとなることだろう。
大下誠一郎選手(オリックス→千葉ロッテ)
大下誠一郎選手は白鴎大学から、 2019年の育成選手ドラフト6位でオリックスに入団。プロ1年目の2020年9月14日に支配下登録を勝ち取ると、翌9月15日にはさっそく一軍でスタメン起用され、その試合でプロ初打席初本塁打を放つ鮮烈なデビューを果たした。
続く2021年は優勝争いの天王山となった9月7日の千葉ロッテ戦で、8回に代打本塁打を放つと、続く9回裏には値千金のサヨナラタイムリーを記録。わずか15試合の出場ながら、非常に重要な試合で出色の働きを見せ、26年ぶりのリーグ優勝への流れを作ってみせた。
今回大下選手を獲得した千葉ロッテにとっても、先述した天王山での活躍は強く印象に残っているはず。大きな声でチームを鼓舞する「ムードメーカー」としての働きにも定評があるだけに、ここぞの局面での勝負強さと強烈な個性を活かし、チームに新風を送り込んでくれる可能性は十分だ。
渡邉大樹選手(東京ヤクルト→オリックス)
渡邉大樹選手は専大松戸高校から、2015年のドラフト6位で内野手として東京ヤクルトに入団。プロ4年目の2019年から外野手に転向すると、その後は俊足と強肩を活かして徐々に出場機会を確保。2020年には打率.273、出塁率.333と、打撃でも一定の数字を残した。
2021年には代走や守備固めとして、自己最多の94試合に出場。CSでは全3試合、日本シリーズでも6試合中5試合に出場するなどシーズン同様に重用され、同年のリーグ優勝と日本一にも貢献した。続く2022年は前半戦こそ前年同様に出場を重ねたが、外野争いの激化もあって、8月3日を最後に一軍出場がなかった。
オリックスにしてみれば、渡邉選手は2021年の日本シリーズでも相まみえた選手。その能力は、対戦相手として十分に把握していたと考えるのが自然だろう。2年連続でしのぎを削ったライバルに求められて移籍した25歳の若武者が、新天地で本格開花を果たせるかに注目だ。
古川侑利投手(北海道日本ハム→福岡ソフトバンク)
古川侑利投手は有田工業高校から、2013年のドラフト4位で東北楽天に入団。高卒1年目の2014年から一軍登板を果たすなど着実に経験を積み、5年目の2018年には主に先発として18試合に登板。自己最多の98投球回を投げ抜き、離脱者の穴を埋める奮闘を見せた。
翌年以降も活躍が期待されたが、2019年は8試合で防御率6.34と振るわず、シーズン途中に巨人へトレード移籍。新天地でも安定感を欠く投球が続き、2021年オフには自由契約となったが、2022年に育成選手として北海道日本ハムに加入したことが転機となった。
開幕前に支配下契約を勝ち取って自己最多の34試合に登板し、幅広い局面での起用に応えてフル回転の活躍を見せた。1年前はトライアウトを経て現役を続行した男が、他球団から優勝に向けた戦力として求められる存在へ。鮮やかなカムバックを遂げた27歳の右腕は、地元・九州でサクセスストーリーの続きを描けるか。
現役ドラフトの「第1期生」たちが、新天地で飛躍する姿に期待したい
現役ドラフトは今回が初開催ということもあり、移籍した選手たちが新天地でどれだけの出場機会を得られるのかは未知数だ。しかし、各選手が移籍先でさらなる台頭を期待されている点に関しては、どの球団においても疑いようがない部分といえよう。
今回取り上げた選手たちの中から、ブレイクを果たして新天地で欠かせない存在となる選手は現れるか。いわば、現役ドラフトの「第1期生」とも形容できる選手たちが、環境の変化をプラスとして、大きな飛躍を遂げる姿に期待したいところだ。
文・望月遼太
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