埼玉西武と丸の内朝大学がフィールドワークを実施。球界の繁栄と発展へ、大切なことは身近に「楽しむ」をいかに増やすか

パ・リーグ インサイト 藤原彬

2018.6.8(金) 17:00

1日講師を務めた埼玉西武OBの石井丈裕氏と星野智樹氏【撮影:藤原彬】(C)PLM
1日講師を務めた埼玉西武OBの石井丈裕氏と星野智樹氏【撮影:藤原彬】(C)PLM

打って、走って、守って、投げて。「目一杯、身体を動かすのは本当に楽しい」。5月20日、日曜日の昼をまたいで埼玉県営和光樹林公園で行われた「野球遊び体験」の光景から、参加者の気持ちが伝わってきた。思ったように打球が飛ばなくても、差し出した手にボールが収まらなくても、プレー中は始終笑顔。丸の内朝大学(詳細記事はこちら)の「プロ野球の魅力再発見クラス ~みんなで楽しむプロ野球~」講座に組み込まれたフィールドワークでは、野球経験の有無を問わず、幅広い受講者が遊ぶ野球の魅力に直に触れた。

当日は準備体操に始まり、キャッチボールとバッティング体験が順に行われた。講師を務めたのは、ともに埼玉西武OBにして、現在はライオンズアカデミーで小・中学生に野球を教えている石井丈裕氏と星野智樹氏だ。正しいボールの投げ方や打ち方を指導する際は身振り手振り交え真剣な表情で、時に笑顔をこぼしながら指導を行った。

その後は実戦形式の「キャッチ&ランゲーム」を実施。打球を前に飛ばした打者が1塁への走路横に置かれたカゴにバットを入れれば1点が入り、ボールが相手捕手の手に戻るまでに進んだベースの数だけ得点が加算されるルールだ。走者は帰塁を考える必要がなく、ひたすら次のベースを目指す。このゲームは、野球の面白さを実感するために採用されることがある。

最後は講師2人が現役時代のエピソードや現在の指導理念などを披露して、プログラムが終了。受講した20代女性が「今までボールを前に投げることができなかったのに、コーチに教えてもらって真っすぐ投げられるようになって、楽しかった」と語るなど、石井氏と星野氏が心掛けた「野球の楽しさ」が伝わる1日になった 。

楽しむことに重きを置きながら実技指導もしっかり行う【撮影:藤原彬】(C)PLM
楽しむことに重きを置きながら実技指導もしっかり行う【撮影:藤原彬】(C)PLM
野球の楽しさに触れるイベントへ参加し、最後は記念撮影【撮影:藤原彬】(C)PLM
野球の楽しさに触れるイベントへ参加し、最後は記念撮影【撮影:藤原彬】(C)PLM

また、全8回の当講座では、第2回にメットライフドームで野球観戦のフィールドワークも組み込まれている。現地では、受講生たちがフィールドビューシートから打撃練習を見学し、埼玉西武の球団職員との質疑応答を経て試合を観戦。試合終了後には、他球場や他競技との観戦の違いをテーマに意見を発表した。丸の内朝大学が手掛ける講座は座学だけに限らずフィールドワークが設けられているクラスも多い。共通の関心事に対する理解を深めるだけではなく、実際の経験から得られる楽しさに触れるのが狙いだ。

こうした取り組みをとおして、いかに野球の魅力を伝えるか。それは、今後も野球界が真剣に取り組まなければならない命題であり続けるはずだ。なぜなら、「するスポーツ」として野球はハードルが高い。まず、投球やスイングに代表されるように、野球は動作からしてかなり特殊なスポーツだ。その動きは、競技者か経験者でなければ、まず馴染みがないだろう。ルールも単純ではなく、用具一式を揃え、広い場所も確保しなければならない。それらが競技の奥深さを助長する要素となるのだが、新規ファン獲得のためには入口が広く、なるべく低めに設定されていることも大事な要素だ。

講座の第4回ではスポーツライターの中島大輔氏が、近年は叫ばれて久しい「競技人口の低下」について触れた。「野球環境の課題と野球振興」をテーマに登壇した中島氏は、野球の現場が抱える問題と、近い未来に及ぼす影響について言及している。抜粋して紹介すると、プロ野球の観客動員数は2005年の1992万4613人から昨季の2513万9463人へと大幅に増加した(NPB)。しかし、2009年からの8年間で中学生の軟式野球人口は約30万7000人から約13万3000人と43.3%も減退している(加盟校調査集計)。この数字は、少子化の6倍にも値するスピードなのだという(学校基本調査の公立中学生男子人口と中学生の軟式野球人口を比較)。

今後もこのような傾向が顕著であれば、野球は「やるスポーツ」から「見るスポーツへ」と向かう。競技者のパイが縮小して競技のレベルが低下すれば、チケットや放映権が売れなくなり、スポンサーがとれなくなる。つまり、「プロ野球が商売として成り立たなくなる」のだ。他にも、野球界が抱える多くの問題を解決するためには、現状で「チーム勝利」に大きなウエートが占められている学童期の育成目標を見直す必要があると中島氏は説く。「楽しさ」に、より比重が置かれるべきとの結論だ。

もちろん、最終的に野球は勝利を目的とする。勝ちから学ぶことも多く、厳しさが生み出す好プレーや感動もある。野球が名実ともに“国技”であり続けるためには、どちらか一方だけではなく、2本の軸が計画的に走っていなければならない。野球の魅力を幅広い層にアピールし、競技人口を増やしていくためにも、今回の埼玉西武と丸の内朝大学のような企画には、さらなる展開が望まれる。

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