高い前評判の通り、まさに支配的な投球を披露
MLBのセーブ王という実績は、やはり伊達ではなかった。今季途中で千葉ロッテに入団したオスナ投手が、9月12日に8セーブ目をマークした。25試合に登板して自責点がわずかに2、防御率0.72という圧巻の数字を記録。高い前評判に違わぬ、まさに支配的な投球を披露している。
千葉ロッテがシーズン途中に剛腕を補強し、期待通りの活躍を見せる流れはこれが初めてではない。2020年は澤村拓一投手、2021年は国吉佑樹投手と、オスナ投手も含めて3年連続で150km/h中盤を超える速球を持つ投手を補強し、それぞれ勝ちパターンの一角として強い存在感を放った。
今季は国吉投手が制球難もあって登板機会を減らしたものの、オスナ投手がその穴を埋めて余りあるほどの活躍を見せているのは頼もしいところだ。今回は、そんなオスナ投手のMLBにおける経歴や、セイバーメトリクスで用いられる指標に示された長所について、詳しく紹介していきたい。
20歳の若さでMLBのクローザーに
オスナ投手がMLBで記録した、年度別成績は下記の通り。
オスナ投手は2015年にブルージェイズでメジャーデビュー。同年は8月終了時点で防御率1.87と抜群の安定感を示し、シーズン途中にはクローザーに昇格。9月以降はやや調子を落としたものの、最終的には68試合に登板して7ホールド20セーブ、防御率2.58と、20歳という年齢を感じさせない数字を記録。ブルペンの主軸として、チームの地区優勝にも大きく貢献した。
続く2016年も引き続きブルージェイズの抑えを務め、キャリア最多の72試合に登板。36セーブ、防御率2.68と安定した投球を見せ、2年連続のプレーオフ進出にも寄与した。3年目の2017年は、防御率こそ3.38と過去2年に比べて悪化したものの、39セーブ・83奪三振はいずれもキャリア最多と、クローザーとして一定以上の存在感を示した。
2018年シーズン途中に3年半を過ごしたブルージェイズからアストロズへ移籍し、続く2019年に38セーブを記録。プロ5年目にして、ついにアメリカン・リーグのセーブ王の座に輝いた。しかし、2020年はわずか4試合の登板にとどまり、同年オフにアストロズを退団。その後は母国に戻り、メキシカンリーグへと活躍の場を移していた。
そして、2022年6月に千葉ロッテに入団し、自身初となるNPBに挑戦。当初は中継ぎとして登板を重ねていたが、8月下旬からクローザーに配置転換。12ホールドポイント・6セーブとどちらの役割でも安定した投球を見せ、新天地でもその実力を大いに発揮している。
まさに理想的!? 三振が奪えて制球力も抜群
次に、オスナ投手がこれまで記録してきた、年度別の指標を紹介する。
MLB通算の奪三振率は9.94と非常に優秀で、2桁に迫るほどの数字を記録している。また、登板数が少なかった2018年と2020年以外の4シーズンは、全て投球回を上回る奪三振数を記録している。すなわち、オスナ投手は世界最高峰の舞台においても、かなりのハイペースで強打者たちから三振を奪い続けてきたということだ。
オスナ投手の優れた部分はそれだけではなく、通算の与四球率も1.57とかなり優れている。また、制球力を示す指標の「K/BB」は、通常3.50を上回れば優秀とされる指標だ。だが、オスナ投手は2017年に9.22という驚異的な数字を記録。キャリア通算でも6.33という極めて優れた水準に達しており、制球力も抜群であることがわかる。
奪三振が多い一方で与四球は少ないという傾向は、セイバーメトリクスにおいてはとりわけ高く評価されるものだ。なぜなら、セイバーメトリクスの観点では、投手が安打を打たれるか否かは運に左右される要素が大きく、投手自身にコントロールできる部分は少ないとされるためである。
すなわち、独力で三振を奪うことができ、自滅で走者を出すことも少ないオスナ投手は、まさに理想的な投手ということになる。そして、MLB時代から示されていたこれらの優れた特徴は、来日を経てさらに強化されつつあるようだ。
奪三振の多さと優れた制球力は、新天地でも大いに発揮されている
オスナ投手の今季のNPBでの記録を見てみると、奪三振率は10.44と2桁の大台を上回っており、NPBにおいても奪三振の山を築いていることがわかる。それに加えて、ここまで22試合に登板して与えた四球はわずかに3。与四球率も1.08と、制球面でもMLB時代以上にすぐれた数字を記録している。
その結果、K/BBは9.67という圧倒的な水準に到達。四球から崩れることは皆無であり、それでいて被打率.141と安打を許すことも少ない。そのため、1イニングごとに出した走者の数を示す「WHIP」も0.60と、そもそも走者を出すこと自体が稀になっている。防御率だけでなく、指標の面でも凄まじい安定感を誇っているといえよう。
快速球で押すだけでなく、技巧派のような引き出しも併せ持つ大器
最後に、オスナ投手がNPBで記録している結果球の球種割合を見ていこう(参照:9月3日までの投球内容)。
オスナ投手は150km/h台中盤に達する速球を武器とするが、その速球が結果球となる割合は50%に満たない。代わりに、ツーシーム、スライダー、カットボール、シュートといった多彩な変化球を、決め球としてそれぞれ10%以上の割合で投げ分けている。剛速球だけに頼るピッチングスタイルではなく、卓越した器用さも併せ持っているのが特徴だ。
ツーシームは150km/hを超える速さで鋭く変化し、カットボールも140km/h中盤に達する。また、140km/h台前半のスライダーは、同じ方向に曲がるカットボールとは僅かに球速差がついており、130km/hのチェンジアップで緩急もつけられる。抜群の球威を持ちながら、技巧派さながらの豊富な引出しとハイレベルな制球力を兼ね備えている点も、オスナ投手の攻略を非常に難しくしている。
「これぞMLBのクローザー」といえる投球は、まさしく一見の価値ありだ
2020年の澤村投手は千葉ロッテへの移籍を機に奪三振率が大きく向上し、2021年の国吉投手は打たせて取るスタイルに転換して結果を残した。しかし、今季のオスナ投手は指標の面ではMLB時代と同様の傾向を示しており、ピッチングスタイルを大きく変えることなく、非常に優秀な成績を収めている点は特筆ものだ。
すなわち、独特のアプローチで新加入の剛腕を復活に導いてきた過去2年間と異なり、オスナ投手は新天地で大きなモデルチェンジや修正を加えずとも、結果を残せるだけの完成度を誇る投手だったということになる。さらに、現在27歳という年齢を考えても、これからさらなる成長を果たす可能性も大いにあることだろう。
残るシーズンも少なくなってきたが、快速球と多彩な変化球を織り交ぜた、「これぞMLBのクローザー」と形容できるオスナ投手のピッチングは、まさに一見の価値あり。近年は冴えを見せる千葉ロッテの夏の補強によってもたらされた、新たな“救世主”の非の打ち所がない投球内容を、この機会にぜひご覧になってみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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