「今までのマリーンズとは違う」 逆転優勝へ…千葉ロッテ井口監督が誓う巻き返し

Full-Count 佐藤直子

2022.8.30(火) 07:50

千葉ロッテ・井口資仁監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
千葉ロッテ・井口資仁監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

井口資仁監督が本音を語る月連載

 早いもので今季ペナントレースは、残すところ20数試合。クライマックスシリーズ(CS)出場、そしてペナントレース優勝を目指して、12球団はそれぞれ最後の追い込みにかかる。

 2005年以来のシーズン制覇を目指す千葉ロッテは、貯金2を作って前半戦を折り返したが、球宴明けに新型コロナウイルス感染症第7波の影響で陽性者が多発。戦力不足が響いて、後半戦は思うようなスタートが切れなかった。だが、8月終盤になってようやく戦力が整い始め、56勝59敗1分けとし、5割復帰に迫ってきた(29日現在)。

 パ・リーグは1位から5位までが6ゲーム差と例年以上の混戦ぶりで、優勝の行方はまったく見えてこない。「頂点を、つかむ。」という今季スローガンの通り、まだまだ優勝を狙い続ける千葉ロッテ井口資仁監督はここからの戦いをどう見るのか。その胸の内を語る。

◇◇◇◇◇◇◇

 7月29日に後半戦がスタートしてから、ここ1か月は厳しい戦いを強いられました。全国的に大流行した新型コロナ第7波はプロ野球界にも影響を及ぼし、マリーンズでも投手陣を中心に多くの選手が感染。規定に基づき、戦列を離れることになったことが大きく響きました。前半終了までに貯金を作り、さあ後半はスタートから一気に畳みかけようと思っていた矢先に、思わぬ後退。これまでにない強い感染力で注目された第7波という不可抗力ではありましたが、上手く流れを引き寄せられず、8月はズルズルときてしまった印象です。

 陽性だった選手の中には無症状も多くいましたが、隔離期間中は思うようなトレーニングはできませんでした。野手は室内でバットを振れますが、投手はキャッチボールもできないので復帰が遅れてしまう。それでもトレーニングコーチが頑張ってリモートで指導しながら、最低限の体力維持に努めてくれました。

千葉ロッテ・中村奨吾※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
千葉ロッテ・中村奨吾※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

最後の1か月のカギを握るのは…「奨吾ですね」

 ここからの1か月は本当の勝負どころ。どの球団にとっても1試合も落とせない状況が続く中で、簡単に点は取れないでしょう。そもそも、パ・リーグはどの球団にも絶対的なピッチャーがいるので、連勝がしづらい傾向にあります。勝てる時にしっかり勝っておかないと上位には食い込めません。

 コロナで手薄になっていた投手陣もようやくメンバーが揃い、しっかりリリーフを組み立てられるようになった。9月は中継ぎ陣は総動員で行くしかないという中で、岩下(大輝)が肘の手術から戻ってきました。先発するところまではいっていませんが、長い回も投げられる中継ぎとして戦力になってくれそうです。

 打線は荻野(貴司)と高部(瑛斗)の1・2番コンビがしっかり塁に出てくれている。高部は35盗塁とリーグトップで、チームとしても100盗塁を超えていますが、今年はそこからもう1つ先の塁に進むことができていない。バントや進塁打の失敗がかなり多いところに、なかなか点が取れない理由があるでしょう。レアードとマーティンが本調子ではなく、ホームラン攻勢というわけにはいきませんが、若手選手の頑張りで繋がりが見えてきた。最後まで諦めない姿勢で1点を確実に取るという野球をもう一度思い出し、目の前の1勝を積み重ねていきたいと思います。

 最後の1か月、カギを握るのは(中村)奨吾ですね。3番打者の状態でチームの状態も上下動する。僕は1年を通して中村奨吾がポイントになると考えてきました。3番が繋げば2点、3点と取れる打線になる。チームキャプテンであることも含め、どうやってチームを引っ張っていくのか。間違いなく彼が一番のキーマンです。

千葉ロッテ・佐々木朗希※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
千葉ロッテ・佐々木朗希※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

佐々木朗希に不安なし「今はまだ成長段階の始めにある」

 8月は(佐々木)朗希を心配する声も聞こえてきました。確かに5失点する日があったり、3被弾する試合があったり。ですが、まだ先発ローテ入りして1年目。当然フルシーズンを戦う疲れも感じているでしょう。ここまで戦う中で完全試合達成という素晴らしい面が見られた一方、彼の弱点・改善点も見えています。いい経験の年として飛躍に繋げてくれればいいと考えています。

 誰もローテ1年目から15勝、20勝できるなんて思っていません。いずれ20勝、30勝する投手に成長すればいい。超一流投手になる素質はありますが、今の朗希を田中将大投手(楽天)や山本由伸投手(オリックス)と比べるのは少し違う。今はまだ成長段階の始めにあるので、その彼にずっとパーフェクトであることを求めるのは違うでしょう。160キロを超える球速であったり、奪三振数であったり、当然期待は高まるでしょうが、投手にとって一番大切な働きはチームを勝たせること。そのための経験値を積んでほしいですね。

 一流投手は、自分の状態がよくない試合でもチームに勝機をもたらす投手だと言います。打者で言えば、得点チャンスで最低限の仕事が絶対にできる打者は一流と言えるでしょう。もちろん、若い打者にいきなり一流であれとは求めませんが、経験を積むチャンスは与えます。結果が求められる1軍では、なかなかやりたいことはできないかもしれませんが、“経験こそは財産”と成長に繋げてもらいたいですね。

 泣いても笑っても残り1か月。僕は現役時代、個人の成績を上げることがチームのプラスになると考え、開幕当初に掲げた目標に対して諦めず挑戦し続けました。選手のみんなも物事を大きく捉えすぎず、まずは自分の目標に少しでも近付けるように取り組んでほしいと思います。それが最終的にはチームのためになる。

 ここ2シーズンは2位で終え、我々はもちろんファンの皆さんも悔しい想いをしています。残り試合は今までやってきたことをすべて出すしかないし、みんなの真価が問われるところ。今までのマリーンズとは違う戦いを、最後まで貫いていきたいと思います。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

記事提供:Full-Count

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