交流戦でパ唯一勝ち越しの千葉ロッテ。井口資仁監督が「頑張った」と称える若手左腕とは

Full-Count 佐藤直子

千葉ロッテ・井口資仁監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
千葉ロッテ・井口資仁監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

井口資仁監督が本音を語る月連載・交流戦で掴んだ上向きの流れ

 3週間にわたった「日本生命セ・パ交流戦」は、東京ヤクルトが4年ぶり2度目の優勝を飾り、幕を下ろした。リーグ別の戦績を見ると、セ・リーグが通算55勝53敗で初めて2季連続の勝ち越し。MVPに輝いた東京ヤクルト村上宗隆内野手に代表される、若き長距離砲の活躍が際立った。

 例年にも増して混戦となった交流戦は、勝ち越したのが12球団のうち3球団のみ。パ・リーグで唯一勝ち越し、東京ヤクルト、阪神に次ぐ3位につけたのが千葉ロッテだった。開幕から打線が奮わず、苦しい戦いを強いられていたが、交流戦を戦う中で風向きが変化。直近6試合は5勝1敗と上向きで、交流戦最終戦となった12日の横浜DeNA戦も5-4と競り勝った。

 17日からはリーグ戦が再開。今季スローガンに「頂点を、つかむ。」と掲げる千葉ロッテの井口監督は、ここから球宴までの約1か月をどのような期間と捉えているのか。交流戦を振り返りながら、新外国人投手のロベルト・オスナ獲得についてなど、指揮官の目に映る現状について語ってもらった。

 ◇ ◇ ◇

 交流戦が終わりました。普段対戦することのないセ・リーグ球団との試合は、非常に新鮮なものがあります。途中3連敗もしましたが、10勝8敗と勝ち越すことができた。チームとしてだいぶ状態が上がってきたと感じています。

 もちろん、まだまだ完全とは言えない状態ですが、苦しんできた打撃は打線の繋がりが出てきた。マーティンとレアードの両外国人が打ち始めたこと、打順もある程度は固定できるようになってきたことが大きいと思います。攻撃のカギを握る荻野(貴司)が帰ってきたことも追い風となり、ようやくスタートを切れた感じがします。

 荻野が復帰したことで打順のバリエーションが増えました。荻野と高部(瑛斗)で1番打者が2人いるようなもの。1番・2番だったり、1番・9番だったり、本人たちの状態や相手投手のタイプによって、変化をつけられます。当然、試合の流れを作ったり、相手投手に多くの球数を投げさせたりするという点では、荻野の方が経験値が高いので、そこは高部に勉強してもらいたいところ。じっくり行く荻野と、若さでドンドン行く高部の2通りを、上手く使い分けていきたいと考えています。

打線復調のカギは「マリーンズ本来の戦い方に立ち返ること」

 開幕以来、交流戦の間も先発陣が頑張ってくれました。中継ぎ陣も打線の援護がない中で耐えてくれている。ここまでの戦いを振り返ると投手陣の力で勝てた試合も多いので、ここから先の戦いは本当に打線の奮起が物を言うでしょう。

 交流戦では左腕の佐藤奨真がよく頑張っていたと思います。3月に育成から支配下登録となった投手で、12日の横浜DeNA戦では6回4安打2失点でプロ初勝利。5月中旬に1軍合流した後は、しっかり緩急を生かしたいいピッチングをしていましたが打線の援護がなく、なかなか勝ち星に結びつきませんでした。二木(康太)、岩下(大輝)が離脱する中、佐藤奨真をはじめ若手が出てきてくれたことは大きな意味を持ちます。

 交流戦を通じて感じたのが、セ・リーグの打撃が年々レベルアップしていること。長距離打者が増えていますし、打率を見ても3割を超える打者が多い。東京ヤクルトの村上、巨人の岡本(和真)、阪神の佐藤(輝明)、横浜DeNAの牧(秀悟)ら、目につく選手が多くいました。

 そして、当然ながらセ・リーグの投手はしっかり打席でも仕事をする。バントを決めたり、バットにボールを当てたり、そういう細かな点が最近の“差”に繋がっているのではないかと思います。マリーンズでもキャンプから投手に打撃練習をさせていましたが、実際にバントを決められたかというと……これが難しい。うちだけではなく、パ・リーグ全体が苦しんだ部分でもあると思います。そんな中でも勝ち越したこと、打線が復調してきたことを前向きに捉え、17日に再開するリーグ戦に臨みます。

 ここから球宴までの約1か月は非常に大切な戦いになります。まずは勝率を5割に戻し、球宴前に貯金を作っておきたいところ。打線はもう一度、マリーンズ本来の戦い方に立ち返ることがカギになるでしょう。

 昨季までは機動力を生かしながら、アウトになっても1つ先の塁を目指す野球ができていました。今季はメンバーが替わっていることもあり、どうしても打ちたい気持ちが勝り、四球を選べない。現時点で四球数は昨季の約3割減になっています。ヒットでも四球でも出塁は出塁ですから。

 当然、個人の成績を上げることも大事ですが、僕が監督に就任して以来、チームとして繋ぐ野球を徹底してやってきています。ここまで進塁打が出なかったり、三塁に走者を置いて外野フライが打てなかったりという場面がかなりあった。自分が決めてやろうと欲を出さずに、確実に1点を取りにいく野球をしていかないと勝機は見出せません。交流戦でいい形になってきた打線の繋がりを、うまく継続していきたいところです。

新戦力のオスナに感心「捕手が構えた位置からブレない」

 6月には新戦力が2人加わりました。1人はメジャー通算155セーブの右腕、ロベルト・オスナです。アストロズ時代の2019年には最多セーブのタイトルを取った実力者。来日した直後のブルペン投球では7、8割の力ではありましたが、捕手が構えた位置からブレることなく投げ込む姿を見せてくれ、さすがだなと感心しました。

 メキシコでは日本時間に合わせて生活をしていたそうで、時差ボケもゼロ。やる気満々で入団してくれて頼もしい限りです。ここまで僅差の試合が多く、ブルペンには負担が掛かっていたので、オスナの加入は大きい。その分、外国人枠を調整する必要がありますが、中継ぎも抑えも両方できるので、益田(直也)が連投すれば抑えを任せられる。選択肢が増え、ブルペンへの負担が軽減されることを期待しています。

 もう1人の戦力は、10歳の宇都宮幹汰くんです。特定非営利活動法人Being ALIVE Japanが運営する「TEAMMATES」事業の一環として、急性リンパ性白血病で長期療養中の宇都宮くんがチームに加わってくれました。これまで辛い治療を受けながら病気と一生懸命に戦っている宇都宮くんの頑張りは、チームに大きな元気と勇気を与えてくれます。

 宇都宮くんのような子どもたちがマリーンズの一員として力になってくれることは大切なこと。入団発表ではご家族の皆さんもすごくいい笑顔を見せてくれました。こういう事業や地域密着の活動などを通じて、シーズン中でもチームとして世の中に貢献していけるのは素晴らしいと思います。今後も継続していきたいですね。

 開幕から波に乗りきれず、チーム内には「去年は2位だったのに、今年は? アレ?」という焦りが生まれ、優勝するために「去年以上のことをしてやろう」と変に気負いすぎていた部分がありました。上を目指す気持ちは間違いではないけれど、マリーンズにはマリーンズの野球がある。欲を出して自分で決めようと、繋ぐことが疎かになっていましたが、ようやく原点を見直して通常に戻りつつあると思います。

 応援して下さるファンの皆さんに笑顔になってもらうには、何よりも試合に勝つことが一番。勝たないことには笑顔になれませんから。ここから笑顔を増やせるように、一つ一つ勝利を重ねていきます。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

記事提供:Full-Count

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