【Vol.2】軟式か硬式か。高校は強豪校に入るべきか。悩める進路の話 教えて!鉄平先生!

パ・リーグインサイト 土谷鉄平

2022.4.22(金) 11:00

教えて!鉄平先生!(C)PLM
教えて!鉄平先生!(C)PLM

「プロ野球選手になりたい!」そんな子どもやその親御さんに鉄平さんが、「プロ野球選手のなり方」を伝授。アカデミーコーチをしていた経験をもとに、どんな子がプロになるのか、プロ野球選手のなり方というそもそも論から、親としての心構えなど、「鉄平式プロ野球選手の育て方」を全6回に分けて語ります。第2回のテーマは、【軟式か硬式か。高校は強豪校に入るべきか。悩める進路の話】です。

◇ ◇ ◇

 こんにちは。土谷鉄平です。

 4月10日の千葉ロッテ対オリックス戦で佐々木朗希投手が完全試合&13者連続三振の新記録を達成しました。みなさんもご存知の通り、先発投手で160km/h超えです。昔は150km/h台で速球派と言われていたので、誰が見てもわかる「球速」という指標でも時代の変化を感じます。私自身もノーヒットノーランの試合で守ったことがありますが、難しい打球が飛んできたら失策になる覚悟で飛び込む、届かなそうでもダイビングしなければ、と考えていたのを覚えています。ただ、完全試合の場合は失策も許されないので、野手はすさまじい緊張感の中でプレーしていたと思います。

 今回のテーマは「進路の話」。野球少年たちが抱える悩みの中で一番難しい問題です。どの道が正解とも言い切れませんが、私なりの意見を伝えますので、判断材料の一つとしてご一読いただければと思います。

 私自身は小学校、中学校時代は軟式野球をプレーしていました。高校の進路を決める際は、プロを目指すのであれば大分県立・津久見高校、勉強をやる場合は別の高校と、基本的には2択でした。結果的にはプロを目指すと決めたので、津久見高校に進学することになります。今振り返ってみても、その選択は正解でした。自分で決めた道なので、プロ野球選手になれていなかったとしてもその選択に後悔することは無かったと思います。

主な進路は少年野球とリトルリーグの2択。小学生の選択は

 どちらにもメリット、デメリットはありますし、どちらに行ったからプロ野球に近くなるというのも無いので、優劣はありません。ただ、強いて言うなら私は少年野球(軟式)がおすすめです。リトルリーグ(硬式)は、硬式球に慣れるという点で大きなメリットがありますが、成長期が終わっていない、始まってもいない子どもたちにとっては、肩肘への負担が大きいです。

 リトルリーグを選ぶならそこはケアしてほしいです。突き指などの衝撃も軟式の比じゃないので。小学校高学年にして野球肘で投げられませんとはならないように

 逆に少年野球を選んでも、リトルリーグとの差を埋められないほどではありません。中学校、高校で軟式と硬式の差は十分に埋められます。そういった点では、けがのリスクが少ない少年野球を選ぶほうが、将来的な選択の幅も広がるのでいいかもしれません。

 そんな少年野球のデメリットとしては、最終的にはプロ野球選手(硬式)を目指すという視点で、戦い方や技術が硬式と異なること。軟式だと球がよく弾むからたたきつけるとか、そういうものは硬式で通用しなくなるので。ただし、それも将来的に埋められるため、強く意識せず、頭の片隅に置いておくくらいでいいと思います。

身体もできあがってくる中学生。軟式野球部と硬式野球、どちらがプロに近いか

 私たちのころは(約20年前)、中学校の軟式野球部も結構盛んでしたが、現在は野球に打ち込める環境が整っていない場合もあります。それであれば、練習時間の確保、環境も整っている硬式野球に入ったほうがいい。地域によっては軟式野球部が盛んなところもあるので、その場合は部活でも大丈夫です。

 ただ、中学校から硬式に行ったからといってプロに近くなるかと言われると、そこまででもない。実際、プロ野球選手には中学校から硬式に行った人が多いですが、たまたま実力がある人が硬式を選ぶ風潮があったのだと思います。軟式だから将来的にダメとか、硬式だから良いというのは、ありません。

 どちらも選べる、かつ野球に集中できる環境であれば、自分がやりたいほうに進みましょう。環境が整っている、野球に打ち込める方を選ぶ。友達がいるほうに進むのもモチベーションに関係してくるので、一つの判断材料です。また、ベターではありますが、硬式野球チームに入る場合は、中学校では陸上部に入って、野球の練習がない日は走ることを学ぶのがおすすめです。

最も将来に影響する選択。高校生はどうするべきか

 高校生の進路選択が一番難しく、よりプロ野球を意識した選択をしなければいけません。強豪校に行けばものすごい練習量と、さまざまな設備がありますが、その分競争相手も多い。例えば、中学校時代はエースで4番だった選手が、周りに背中を押されて強豪校に入学するも、3年間で1度も試合に出られない、なんてよくある話。そういうのをはねのけるくらいの覚悟がないと、プロ野球選手になるのが難しいのも事実です。

 一方で、強豪校で試合に出られないくらいなら、強豪校とされていない高校に入学して1年生の秋から試合に出るという選択もあります。そこで活躍すればプロのスカウトが見に来てくれます。もちろん、強豪校の方が注目されやすいというメリットはありますが、スカウトは基本的に「良い選手」を見に来ます。なので、自分が試合に出られそうな高校を選ぶのも、選択肢の一つです。そういう選択をして結果的にプロ野球選手になっている人もいます。そういうところで試合に出ていれば、すぐにプロ野球選手とはいかなくても、大学や社会人野球からも声がかかりやすい。試合に出ていないことには、評価のしようがありませんから

高校卒業後の進路。大学、社会人、独立リーグに優劣はあるか

 高校卒業後は、どこに進もうともデメリットは無いです。高校時代と一緒で、良い成績を残せれば、スカウトが評価してくれます。高校よりもプロへの道はグッと近くなっているので、ここまで来たら自分との戦いです。どこに進もうと大して変わらない。ただ、大人になるのでいろんな誘惑が出てくる。特に社会人と独立リーグはお金も持って動けるようになるので、高校卒業後もプロ野球選手になりたいという思いがあるのなら、どれだけ自分に厳しくできるかだと思います。

 最後にまとめると、進路選択において、強いて言えば違いがあるのは小学校だけです。リトルリーグに行くのであれば、けがのリスクを頭に入れてケアをするようにしましょう。その他の進路選択については環境の要素、どれだけ野球に取り組めるかが重要です。また、「試合に出られる高校がいいんじゃないの」、「強豪校に挑戦した方がいいんじゃないの」といった周りの思惑もありますが、最終的には本人がどうしたいかで決めるべきです。

・土谷鉄平(つちや・てっぺい)
1982年12月27日生まれ、大分県大分市出身。津久見高校時代から、2000年のドラフト5位で中日に入団。プロ6年目の2006年に楽天へ移籍するとレギュラーに定着し、2009年には打率.327で首位打者に輝いた。その後オリックスへの移籍を経て2015年限りで現役引退。引退後は、楽天のアカデミーコーチ、二軍外野守備・走塁コーチ、一軍打撃コーチを務めた。現在は球団を離れ、野球解説者として活躍の場を広げている。

読者からの質問コーナー!答えて!鉄平先生!

Q.小学校、中学校で野手として試合に出るためには、「走・攻・守」特にどれが大事ですか?

A.打撃です。守備が上手ければ試合には出られますが、より重宝されるのは打撃です。野球の特性上、点が取れる能力が在るのは良いことなので、いくら守備がうまくても安打や本塁打は捕球できない。足が遅い、守備が苦手などがあったとしても、打撃能力が高ければそこに目をつぶって、使ってくれるかもしれません。

Q.高校から野球を始めてもプロになれますか?

A.なれます。当人の努力次第です。始めるのが早いに越したことはないですけど、遅いからといってなれないものでもありません。今後のがんばり次第です。

Q.何事もやりきるためのコツはありますか?

A.周りを気にしすぎると、やりきるのは難しくなってくると思います。評価を気にする人は、そこに影響を受けて中途半端に終ってしまう。自分のことだけに集中して取り組めばいい。例えば、ゲーム好きの私からすると、ずっとゲームする、周り関係なくゲームする、みたいな(笑)。イメージ的にはRPGをやっている時に近いかもしれないです。どんなにストーリーが長くても、親に辞めろと言われても、自分がやると決めた、やりたいから辞めない。そういうことです!

Q.安定したメンタルを手に入れるには?

A.メンタルが落ち込んでいる状態に慣れること。メンタルが揺れ動くようなところに自分を晒すこと。私の場合は、大勢の人に見られるところで打席に立ち、常に結果を求められてきました。皆さんの生活の中でも、人前で発表するなど、緊張する場に身を置くことで、安定したメンタルが身に付くと思います。人間は慣れる生き物ですし、人生なんてやるかやらないかなので。やるって決めたことに対してふさぎこむ必要はありません。やるしかないので、毛嫌いせずに付き合っていきましょう。

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◆【vol.1】子どもが「プロ野球選手になりたい!」と言ったら親はどうするべき?はこちら

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パ・リーグインサイト 土谷鉄平

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