辻監督が牧野翔矢を評価「インコースを強気に攻めていた」
■埼玉西武 6ー0 福岡ソフトバンク(10日・ベルーナドーム)
埼玉西武は10日、本拠地ベルーナドームで行われた福岡ソフトバンク戦に6-0で快勝。連敗を「7」で止めた。高卒4年目・21歳の牧野翔矢捕手が、正捕手・森友哉の故障による戦線離脱を受けて2試合連続フル出場。延長12回0-0で引き分けた前日9日の同カードと合わせ、21イニング連続無失点に貢献した。辻発彦監督も絶賛するリードで、にわかに存在感を増してきた。
この日は来日初登板のディートリック・エンス投手をリード。4四球と荒れ気味だったが、5回1安打無失点の好投を引き出し勝利に導いた。「2軍戦の映像を見て真っすぐとカットボールが主体の投手であることはわかっていた。その2つを軸に他の球種も混ぜ合わせました」と胸を張った通り、スライダー、カーブ、チェンジアップも効果的に使った。
森がロッカーでマスクを投げつけた際に右人さし指を骨折し、今月3日に出場選手登録を抹消されてチャンスが巡ってきた。牧野は9日も先発のドラフト1位ルーキー・隅田知一郎投手と組み7回2死まで4安打無失点に封じたのをはじめ、7投手の継投になった延長12回の試合を最後までリード、相手に得点を許さなかった。森が離脱した当初は3年目の柘植と併用され、2試合連続でスタメンに名を連ねたのは初めてだった。
辻発彦監督は「2試合を通じてインコースを強気に攻めていた。隅田もエンスも真っすぐだけでガンガン押す投手ではないから、変化球を使って真っすぐを生かし、真っすぐを使って変化球を生かすことが大事。牧野が打者を観察しながらサインを出していたのだと思う」と指摘。「素晴らしいリードだった。21イニング点を取られていないのだから、評価してあげないといけない」と称賛した。
牧野「埼玉西武の捕手は打てないと試合に出られない」
リードだけではない。1回にオグレディの来日1号ソロで先制した直後、2回無死一、三塁で迎えた第1打席でカウント1-1から福岡ソフトバンク先発・大関のスライダーを捉えて右前適時打。貴重な追加点をもぎ取った。
「内野が下がっていて、セカンドかショートにゴロを転がせば1点入る状況でした。ボールを上から打とうと思った結果、ああいう形になってよかったです」と照れたが、主砲の山川穂高内野手と森を故障で欠き、得点力がガタ落ちしていたチームにとっては、2日の千葉ロッテ戦(ZOZOマリン)の8回に山田が左前適時打を放って以来、実に6試合51イニングぶりのタイムリー。昨季まで1軍出場がなく、初出場をスタメンで飾った6日の楽天戦(楽天生命パーク宮城)で初打席初安打を放ったばかりの牧野にとっては、プロ2本目の安打であり初打点だった。
牧野は石川・遊学館高から2018年ドラフト5位で入団。今年はドラフト3位で中大から古賀が加入し、危機感を強めている立場でもある。「埼玉西武は打てて守れる森さんのスタイルが出来上がっているので、打たないと試合に出られない」と語る。
打撃に関しては昨年、高山久打撃コーチ(当時は2軍打撃コーチ)に師事。今季は一緒に1軍へ昇格した格好だ。登場曲にあえて、牧野が生まれる8年前の1993年にリリースされたZARDの「負けないで」を使用しているのも、昨秋のフェニックスリーグ期間中、室内練習場で40歳の高山コーチがかけていたのを気に入ったからだとか。
2019年にMVPと首位打者に輝いた森の壁は、とてつもなく高い。それでもプロの世界に生き残るためにも、森不在のうちに自分の居場所を広げておく必要がある。「山川さんと森さんが帰ってくるまで、必死に食らいついて1勝でも多くと思っています」と控えめにうなずいた牧野。登場曲の懐メロがその背中を強く押してくれるかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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