昨季プロ初勝利を含め4勝…飛躍が期待される大器
■埼玉西武 7対6 オリックス(26日・ベルーナドーム)
埼玉西武は27日、本拠地ベルーナドームで行われたオリックス戦で0対6の劣勢から大逆転。7対6で劇的な勝利を収め、昨季覇者との開幕3連戦を2勝1敗で勝ち越した。歓喜に沸くベンチの中で複雑な思いを抱いていたのが、先発して3回6失点KOを喫し、大逆転劇を演出する形になった渡邉勇太朗投手だろう。
昨季後半にプロ初勝利を含む4勝を挙げ、今季の飛躍が期待される4年目の21歳。しかし、初回からいきなり試練を与えられた。1番の福田を四球で歩かせると、続く後藤の右前打を右翼手・愛斗が後逸し、無死2、3塁とピンチが拡大。杉本に先制右前適時打、宗にも中犠飛を許した。
2回にも福田の適時三塁打、後藤の右前適時打で2失点。3回には2死1塁からラベロに左翼席中段へ2ランを放り込まれ、3回6安打6失点でマウンドを降りた。球団広報を通じて「いいスタートを切りたかったのですが、結果を出せず悔しいです」と吐露。「バッティングカウントで打たれたのは全部甘い球でした。有利なカウントで試合を進められなかったのが原因だと思います。球自体は悪くなかったので、しっかりゾーンで勝負できるように調整していきたいと思います」と制球を課題に挙げた。
指揮官指摘「反省しなきゃいけないのは3回の2点だよ」
「反省しなきゃいけないのは、3回の2点だよ。試合の展開上、あそこさえ抑えておけば、なんということはない」。辻発彦監督はそう強調する。ラベロにカウント0-1から高めに浮いたスライダーを捉えられたシーンを振り返り、「2死1塁だったから、ヒットならOK。ホームランだけはダメだよね。しっかり頭の中を整理して勝負していかないと」と猛省を求め「教訓です!」と語気を強めた。
自身が招いた大劣勢を味方が跳ね返し、結果的に敗戦投手を免れた試合を、渡邉はどう受け止めたのだろうか。辻監督は「僕にも経験がある。自分が大きな失敗をして、負けて責任が自分に来るのは仕方ないが、勝った時に野球の怖さを知る。チームでやっているのだと、実感しないといけないよ」と述懐。「それだけの責任を持って、これからも普段から練習をしっかりやること。その上で打たれたり、ミスが出るのはいいんじゃないかと、僕は思う。日頃の姿勢が大事だと思う」と実感を込めて話した。
そういえば、一昨年に山川が逆転サヨナラ打を放った試合で、森友哉捕手が号泣したことがあった。リードしていた試合だったが、森が途中からマスクを被った後に投手陣が打ち込まれて逆転され、劣勢に追い込まれていた。自分に対するふがいなさ、チームが勝って救われた思いなどが複雑に絡み合い、感極まったのだろう。
渡邉は191センチ、96キロの体格に無限の可能性を秘めている。チームスポーツの真髄に触れたこの日の経験が、野球人生の糧となることを祈りたい。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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