悲願のリーグ制覇へ残された課題。千葉ロッテの「2番打者」に定着するのはどの選手?

パ・リーグ インサイト 望月遼太

(C)PLM
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1番・荻野貴司選手と3番・中村奨吾選手は不動の存在だったが……

 2021年の千葉ロッテにおいて、1番の荻野貴司選手と3番の中村奨吾選手はまさに不動の存在だった。しかし、その間を打つ2番打者に関しては話が別だ。開幕直後はレオネス・マーティン選手が強打の2番として活躍したが、そのマーティン選手が調子を落としたのを境に4番に移り、そのまま中軸に固定されて以降は、2番打者の座が流動的となっていた。

 中盤戦では藤原恭大選手が7・8月の月間MVPを受賞するほどの大活躍を見せ、2番打者の座をつかみつつあった。しかし、その藤原選手も故障離脱を境に大きく調子を落とし、他の選手も軒並み定着できず。優勝争いのさなかにあって、最終盤には中村選手から後ろの打順を一つずつ上げて2番を埋めるという、いわば苦肉の策に出ざるを得なかった。

 チームの主軸打者2名の間をつなぐ2番打者の座が不安定だった点は、優勝争いを演じるうえでもウィークポイントとなっていた。それだけに、課題となっている2番打者に定着できる存在を見いだすことができれば、悲願のリーグ優勝にもより近づくことができそうだ。

 今回は、2022年の千葉ロッテにおける、2番打者の有力な候補となりそうな選手たちを紹介。各選手の特徴や昨季の活躍を振り返るとともに、新シーズンの活躍にも期待を寄せたい。

藤原恭大選手は調子の波を減らせるかが大きな課題に

 まず最初に2月22日の練習試合(対オリックス戦)で2番に座り、開幕2番・スタメンの最有力と目される藤原恭大選手の月別成績を見ていきたい。

藤原恭大選手 2021年月別成績(C)パーソル パ・リーグTV
藤原恭大選手 2021年月別成績(C)パーソル パ・リーグTV

 昨季は「9番・センター」として開幕スタメンの座をつかんだものの、3月と4月はいずれも打率.100台と苦しみ、4月22日から2カ月以上にわたって二軍調整に入ることに。だが、再調整中に取り組んだ打撃の修正が奏功したことにより、7月3日の再昇格後は快打を連発。自身初となる月間MVPも獲得し、2番打者として大いに躍動を見せていた。

 このまま本格的なブレイクを果たすかに思われたが、9月に入ってからは一転して絶不調に陥ってしまう。9月5日に死球を受けて2週間近く欠場を余儀なくされたことも大きく響き、好調だった時期のバッティングを取り戻すことはシーズン最後まで叶わなかった。

 脚力を活かした守備と走塁は既に高いレベルにあるだけに、課題である好不調の波の大きさを改善できれば、2番打者として活躍できるポテンシャルを持つ存在だ。そんななかで、2022年からは福浦和也コーチが、二軍から一軍へと配置転換される。二軍での打撃修正に一役買った“師匠”の手によって、若きホープが調子の波を減らし、年間を通じて好調を維持できるかに注目だ。

代走要員として活躍する和田康士朗選手の出塁率は水準以上

 次に、22日の練習試合で藤原選手と途中で代わり2番に入った、和田康士朗選手の月別成績を見ていこう。

和田康士朗選手 2021年月別成績(C)パーソル パ・リーグTV
和田康士朗選手 2021年月別成績(C)パーソル パ・リーグTV

 2021年の盗塁王に輝いた脚力は、まさに球界屈指と呼べるもの。ただし、出場機会は勝負どころでの代走や守備固めで、96試合の出場で打席数は24と極端に少なかった。昨季のレギュラーシーズンでスタメン出場した2試合は、いずれもクイックが苦手な北海道日本ハムのドリュー・バーヘイゲン投手の先発試合。裏を返せば、それ以外の投手が先発する試合において、スタメンのチャンスが与えられることは一度もなかったということになる。

 しかし、和田選手は打席数が限られる中でも打率.263、出塁率.417という数字を残し、打撃面でも一定の存在感を発揮。そして、昨季のチーム最終戦となった「パーソル クライマックスシリーズ パ」のファイナルステージ第3戦で、ついに2番打者としてスタメン出場を果たす。そして、第2打席では逆方向に二塁打を記録するパンチ力を見せ、そのバッティングセンスの一端を示してみせた。

 盗塁数が多いだけではなく、キャリア通算の盗塁成功率が.854と確実性が高い点も、和田選手の大きな魅力だ。当然ながら、スタメン出場が増えてくれば、盗塁数のさらなる増加も見込めるだろう。今季は2月15日の練習試合では2番打者でスタメン起用されており、昨年以上に首脳陣からの期待も大きい。打撃技術を向上させてこのチャンスを生かし、レギュラー定着と2年連続の盗塁王を狙いたいところだ。

若手・中堅・ベテランのそれぞれにも2番打者候補が

 今回取り上げた3名の他にも、チーム内には2番打者候補の選手が在籍している。

 2018年にはリーグ最多の26犠打を記録するなど、つなぎ役としての経験も豊富な藤岡裕大選手や、二軍でプロ入りから2年続けて打率.320以上を記録し、昨季は61試合で28盗塁を決めてイースタンの盗塁王を獲得した高部瑛斗選手。高部選手は一軍では2年続けて打率.100台と結果を残せていないが、本来のポテンシャルを一軍で発揮できるようになれば面白い存在だ。

 もちろん、マーティン選手が昨季序盤やポストシーズンと同じく、強打の2番打者として起用され続ける可能性も十二分に存在する。シーズン開幕までの期間にどの選手がアピールに成功し、開幕2番の座をつかむのかは楽しみな要素と言える。

どの選手が2番打者を務めるかは、チーム方針にも影響を及ぼす重要なポイントに

 昨季の千葉ロッテは、リーグ最多の107盗塁と積極的に機動力を使っていた一方で、同じくリーグ最多のシーズン106犠打と、堅実な作戦も多用していた。

 すなわち、2番打者に和田選手や藤原選手のような機動力のあるタイプを起用するか、あるいはマーティン選手を再び強打の2番打者に据えるのか、といった点は、チーム全体の方針を考えるうえでも重要な要素となってくる。

 2年続けてリーグ2位に終わった千葉ロッテにとって、2番打者の固定は早急に解決したいテーマだ。それが叶うだけのポテンシャルを持った選手は少なくないだけに、今季の起用法は注目と言える。チームとしてさらなる成長を果たし、悲願のリーグ制覇を果たすためにも、荻野貴選手と中村選手の間を埋める、新たな「不動の存在」の台頭に期待したいところだ。

文・望月遼太

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