盗塁ランキング上位3選手は、いずれも受賞すれば自身初タイトルに
各チームの残り試合数が30試合を切り、2020年シーズンもいよいよ大詰めを迎えている。すなわち、優勝や順位の行方とともに、個人タイトル争いも佳境となっているということ。今季の盗塁王争いは故障者の続出もあって波乱の連続だったが、現時点で盗塁王争いをリードする、源田壮亮選手と和田康士朗選手(24盗塁)、荻野貴司選手(20盗塁)という3名にとっては、いずれも獲得すれば記念すべき自身初タイトルとなる。
今回は、ここまでの盗塁王争いの推移について振り返るとともに、「9月30日終了時点で20盗塁以上を決めており、かつ故障で戦列を離れていない」という条件に合致する3選手を紹介。今後の盗塁王争いの展望も行っていきたい。(成績は9月30日終了時点)
開幕直後は埼玉西武のルーキーがランキング首位を独走していたが……
まず、今季開幕直後は埼玉西武のルーキー・若林楽人選手が素晴らしい活躍を見せ、5月までに20盗塁とランキングトップを独走。パ・リーグ史上初となる「新人での盗塁王」への期待も高まったが、5月30日の試合で重傷を負いシーズン中の復帰ならず。序盤のペースを思えば、フルシーズン出場できていればタイトル獲得の可能性は非常に高かっただけに、返す返すも序盤戦での戦線離脱が惜しまれた。
また、福岡ソフトバンクの周東選手は2020年に120試合制ながら50盗塁を決め、自身初タイトルにも輝いた。今季も盗塁王の最有力候補の一人と目されたが、ケガの影響もあってか不振でレギュラーの座を失うことに。それでも8月22日までに21盗塁を決めて盗塁王争いに加わっていたが、8月末に登録を抹消され、右肩の手術で今季絶望となってしまった。
期待の新人と前年の盗塁王が相次いで戦線を離脱したことにより、盗塁王を巡る争いは先の読めない展開となった。そんな中で盗塁王争いをリードすることになったのが、盗塁王の獲得経験が1度もない3選手ということも、今年の波乱を象徴する出来事と言えそうだ。
千葉ロッテの2選手は、9月に入ってから盗塁のペースを上げつつある
ここからは、今回取り上げた3選手の具体的なスタッツをもとに、今後の盗塁王争いを展望していきたい。まずは、各選手の月別の盗塁数を見ていこう。
源田選手はわずか5試合で2盗塁を決めた3月に始まり、シーズン序盤から順調に盗塁を積み重ねていた。しかし、17試合で7盗塁と快調に盗塁を決めていた5月下旬に新型コロナウイルスに感染し、交流戦期間を全て棒に振ることに。それでも、6月は復帰後の9試合で2盗塁を決め、その後も五輪による中断期間を挟みながらコンスタントに盗塁を記録。ただ、9月は23試合で3盗塁とややペースが落ちており、残り試合で巻き返せるかに注目だ。
和田選手はほぼ全ての盗塁を途中出場から決めているが、それでも5月には源田選手と同じ7盗塁を記録。盗塁成功率.889という抜群の成績で、5月以降はランキング上位に位置し続けている。順位争いが激化すると、盗塁という作戦にはよりリスクが伴うようにもなる。和田選手の場合も、7月と8月の盗塁数はやや少なくなったが、勝負どころの9月には再び盗塁数が増加。こうしたベンチワークの姿勢も、和田選手には追い風と言えそうだ。
荻野貴選手は4月から6月までは月平均4盗塁というペースで推移し、7月も9試合で2盗塁を決めていたが、8月には0盗塁と全く上積みできず。しかし、9月に入ってからは24試合消化時点で5盗塁と再びペースを上げており、今後の上積み次第となっている。9月は打率.289に加えて、出塁率.396と非常に高い確率で塁に出られているため、盗塁を決めるチャンスの多さを活かして、先を行く2選手との差を詰められるかにかかってきそうだ。
タイトルを争う選手たちを擁する両球団の、ライバルへの被盗塁数には明暗が
最後に、各選手の“お得意様”と苦手な相手がそれぞれ表れている、対戦チーム別の成績についても確認したい。
源田選手はそれぞれ対戦打率が.290を超える、千葉ロッテと北海道日本ハムから多くの盗塁を記録。また、対戦打率.259の楽天からは4盗塁で、対戦打率が.230台以下のオリックスと福岡ソフトバンクからの盗塁は少なくなっている。源田選手の場合は、打率と盗塁数の間にある程度の相関性が見られると考えられそうだ。また、交流戦期間中に出場できなかった点は、盗塁王争いにおいても大きな痛手となっている。
和田選手は盗塁を決めた場面のほとんどが代走としての出場で、走るチャンスの数が打撃の調子に影響されないこともあり、多くの相手からコンスタントに盗塁を決めている。福岡ソフトバンクと埼玉西武にはやや苦戦しているが、昨季は福岡ソフトバンクから6盗塁を記録。強肩で知られる甲斐拓也選手を相手にしても走れることを示しているだけに、和田選手にとっては、残る試合でこの2カードの成績を向上させられるかがカギとなりそうだ。
それに対して、荻野貴選手は福岡ソフトバンクに対して、北海道日本ハムに次ぐ5盗塁を記録している点は見逃せない。交流戦も含めて埼玉西武、オリックス以外の全ての相手に打率.300以上を記録し、パ・リーグの5球団中4球団から3盗塁以上を記録しているが、埼玉西武に対しては打率、盗塁数ともに極端に低い数字に。9月25日には今季初めて埼玉西武を相手に盗塁を決めただけに、今後の改善にも期待がかかるところだ。
リーグを代表する韋駄天たちの、頂点を決める戦いの行方は?
源田選手が9月は3盗塁にとどまっているのに対し、千葉ロッテの2選手は9月に揃って5盗塁を記録。直近のペースと現在の盗塁数を勘案すれば、和田選手がやや優位に立っている。ただ、タイトル争いにおいては、チームメイトがライバルの盗塁を防ぎ、間接的にアシストを決められるかも、往々にして重要となってくる。その点においては、源田選手に追い風が吹いていると考えられる。
まず、埼玉西武は和田選手と荻野貴選手に対しては被盗塁数を少なく抑えており、源田選手のライバルとなる2選手を封じ込めている。その一方で、千葉ロッテは源田選手に対して9盗塁と、チーム別で最多となる盗塁数を許している。今後は、両チームがタイトルを争う相手チームのライバルをどれだけ釘付けにできるか、といった点も、タイトル争いを占ううえでは大きな要素になってきそうだ。
いずれも受賞すれば初タイトルということもあり、この争いを制した選手にとっては、キャリアのハイライトの一つとなりそうな今シーズン。優勝争いや打撃三冠の行方とともに、リーグを代表する韋駄天たちの頂点を決める戦いにも、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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