文字通りの「クラッチヒッター」に進化。“4番・島内宏明”のモデルチェンジに数字で迫る

2021.8.27(金) 10:30 パ・リーグ インサイト 望月遼太
東北楽天ゴールデンイーグルス・島内宏明選手(C)パ・リーグ インサイト
東北楽天ゴールデンイーグルス・島内宏明選手(C)パ・リーグ インサイト

自身初の打点王獲得に向け、ハイペースで打点を稼ぎ続けている

 従来とは異なるスタイルで結果を残している鷲の4番は、自身初のタイトル獲得という結果でモデルチェンジを結実できるか。楽天の島内宏明選手が8月24日の時点で69打点を記録し、パ・リーグの打率ランキングでも堂々のトップに立っている。

 5月頭ごろからは昨季の本塁打王・浅村栄斗選手に代わって4番に座るようにもなり、ポイントゲッターとしての才能を開花させつつある。昨季までは決して多くの打点を稼ぐタイプの選手ではなかっただけに、今季の変化は顕著と言えるだろう。

 今回は、セイバーメトリクスの分野で使われる指標や、塁状況・投球コース・球種といった状況別の成績をもとに、島内選手の今季の打撃がどう変化しているのかを分析。抜群の勝負強さを見せている理由について、より深く迫っていきたい。(※成績はすべて8月24日試合終了時点)

昨季までは、むしろチャンスメーカーとしての印象が強かった

 まず、島内選手が残してきた年度別の打撃成績について見ていきたい。

(C)パ・リーグ インサイト
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 2020年までの島内選手は一定以上の打率と優れた選球眼に特徴のある選手で、どちらかといえばチャンスメーカーとしての趣が強かった。しかし、今季はまだ100試合未満という段階ながら、本塁打数は自己最多タイ、打点は既にキャリアハイ超えとなっている。

 その一方で、打率に関しては規定打席に到達した中では最も低い2017年を下回る数字だが、出塁率に関しては自己最高のペースでもある。4番という役割が本塁打増やポイントゲッターとしての意識を強めていることも考えられ、さまざまな意味で従来よりも主砲に近い数字を残しつつあると言える。

元々キャリアを通じて得点圏打率が高い傾向に

 そういった傾向の変化は、セイバーメトリクスで用いられる各種の指標を確認してみることで、より顕著に見えてくる。島内選手が残してきた各種指標の数字は、次の表の通りだ。

(C)パ・リーグ インサイト
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 今季の島内選手は得点圏打率.352と勝負強さが光るが、それ以前のシーズンにおいても、概ね高い得点圏打率を記録している点は特筆ものだ。2014年と2019年以外の全ての年で得点圏打率が年間打率を上回り、キャリア通算の得点圏打率も.305と優れた水準にある。セイバーメトリクスにおいては、得点圏打率は運の要素が強く、選手の評価には適さないとされているが、一貫して同じ傾向を示している点は、決して無視できない要素だろう。

 また、ストライクゾーンの管理能力を示す「BB/K」においても、2018年と今季の2度、非常に優秀とされる1.00を上回る数字を記録。BB/Kは四球数を三振数で割るという計算式の都合上、四球と三振がともに少ない早打ちの選手も良い数字になりやすい傾向にある。しかし、島内選手は一定以上の四球数を記録しながら、三振を少なく抑えている点が大きな評価点となっている。

 また、今季は打率に関しては例年よりもやや低くなっているが、OPSの面ではキャリアハイを大きく上回りそうな数字を残している点も見逃せない。こうした各種の指標からも、単なる打率だけでは図れない、今季の島内選手の打撃内容の充実ぶりが見えてくる。

走者の有無によって、その打撃スタイルは大きく変化

 続けて、今季の島内選手が記録している塁状況別の打撃成績を紹介したい。

(C)パ・リーグ インサイト
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 走者が1、2塁の状況だけで合計22打点を稼いでいるが、このシチュエーションでの本塁打はわずかに2本という点が興味深い。また、1、3塁の状況では打率.500という驚異的な数字を残し、15打点と得点にも結び付けている。それに加えて、走者2塁や3塁といった状況でも高打率を記録しており、やはり得点圏では総じて好成績を残していることがわかる。

 その一方で、走者なしの状況では9本塁打を記録している一方、打率は.181と極端に低くなっている点は気になるところ。チャンスメーカーではなく、打点を挙げるバッターへとシフトチェンジしていることが、この数字からも読み取れる。そう考えると、得点圏に走者がいるタイミングでより集中力を研ぎ澄ませていることが、打点の大幅増につながっている側面もありそうだ。

 また、満塁時には4安打で10打点を挙げているが、満塁本塁打は1本も記録していないところも示唆的だ。走者なしの状況では思い切りよくパンチ力を発揮しているが、走者3塁や満塁といった状況では、一発を狙い過ぎることなく、確実に走者を還すような打撃を見せている点も、今季の島内選手の勝負強さにつながっていると考えられる。

真ん中より高めの球に強く、失投を高い確率で捉えている

 続けて、今季の島内選手が記録しているコース別の打率についても見ていきたい。

(C)パ・リーグ インサイト
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 ど真ん中に対して打率.400と、甘い球を逃さずに捉えられている。さらに、真ん中低めのボールゾーンに対しても、打率.500とかなりの強さを発揮し、投手が空振りを狙って投げ込んでくる球を逆にヒットにしていることがわかる。ピンチでこそ頼りたくなる決め球が通用しにくいという点は、島内選手の勝負強さにも寄与している可能性が高いだろう。

 また、高めの釣り球に対しても打率.300を記録しており、バッテリーにとっては安易な配球が許されない。そして、ストライクゾーンの中間に位置する高さの球であれば、コースを問わずに打率.300以上の数字を記録。高めの球に対しても内外角のどちらかに寄れば優れた数字を残しており、得意なゾーンが多く存在することも見えてくる。

 外角低めをはじめとするローボールは全体的に苦手としているが、球が真ん中以上に浮くと痛打を浴びる可能性が高いという点は、相手投手にとってもプレッシャーになりうる。先述した選球眼の良さ、ボール球をヒットにする技術も合わさって、相手バッテリーとしてはピンチになればなるほど怖さを感じるような打者といえる。

緩い球、速い球の双方に対して強いだけに……

 最後に、今季の島内選手が記録している球種別の打率を紹介しよう。

(C)パ・リーグ インサイト
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 シュート、チェンジアップ、カーブ、シンカー・ツーシームといった球種については、それぞれ打率.300を超える数字を記録。カットボールに対しても年間打率を上回る数字を記録しているが、それ以外の3球種に対してはいずれも打率.230台以下と、やや得意・不得意がはっきりした成績となっている。

 チェンジアップやカーブといった、タイミングを外すことが目的の球にしっかりと対応できている点は、島内選手の対応力の高さを示している。また、シュートやツーシーム、カットボールといった速い変化球に対しても一定以上の数字を残しており、緩急どちらにも対応できる点は大きな強みと言える。

 多くの投手が投球の主体としているストレートや、決め球として用いられやすいフォークに対する数字が改善されれば、さらなる成績の向上も見えてくる。とりわけ、島内選手は真ん中低めのボールコースの球を安打にできるバットコントロールを持つだけに、フォークへの対応力改善には大いに期待したいところだ。

チームにとっても頼もしい4番打者へと進化

 4番打者に求められるのは、チャンスを高い確率で得点に結びつけ、チームを勝利に導くバッティングだ。今季の島内選手が見せている、投手のコントロールミスを逃さず捉え、確実に走者を還していく勝負強い打撃は、上位争いを演じるチームにとっても、非常に頼もしい要素となっている。

 打率こそ例年に比べて少し落としているものの、OPSやBB/Kに示されるように、打撃内容自体はむしろ向上している点も見逃せない。長打力と勝負強さを増し、まさに新境地を開拓している島内選手は、自身初の打撃タイトル獲得、そして自身2度目のリーグ優勝という2つの大目標を、自らのバッティングによって実現させてくれるだろうか。

文・望月遼太

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