数字にはっきりと表れる、楽天・松井裕樹が苦しんでいる理由

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2018.5.9(水) 14:54

今季は苦しい投球が続く東北楽天ゴールデンイーグルス・松井裕樹投手(C)PLM
今季は苦しい投球が続く東北楽天ゴールデンイーグルス・松井裕樹投手(C)PLM

すでに3敗、2018年は苦しい立ち上がりとなった

楽天の松井裕樹投手が開幕から苦しんでいる。昨シーズンまで3年間にわたってクローザーとして活躍し、通算100セーブまで残り4として開幕を迎えた松井投手。山口俊投手(巨人)の持つ25歳1カ月という史上最年少での100セーブ達成を射程圏内に捉えており、現在22歳の松井投手が開幕から間もなくしてこの記録を塗り替えるだろうとみられていた。

しかし、シーズン開幕戦となった3月30日の千葉ロッテ戦での救援失敗を皮切りに安定感を欠いた投球が続き、ここまで既に3敗を喫してセーブは2つのみ、防御率は6.55。プロ入り以来4点台以下の防御率を記録したことのない松井投手にとって、信じられないような数字が並んでしまっている。

昨シーズンは故障離脱がありながら52試合に登板して防御率1.20という数字を残し、51試合目まで防御率0点台(0.52)を維持する抜群の安定感を誇った左腕はなぜ不振へと陥ってしまったのか。今回はセイバーメトリクスで広く用いられる2つの指標によって松井投手の今季の投球内容を分析し、その原因について考察していきたい。

※数字は全て5月8日終了時点でのもの

まず、奪三振数を与四球で割って求める「K/BB」という指標について見ていきたい。松井投手がプロ入り後の5年間で記録したK/BBは以下の通りとなっている。

K/BB
2014年 1.88
2015年 3.68
2016年 1.88
2017年 2.38
2018年 1.56

参考までに、昨シーズンのパ・リーグで各球団の抑えを務めた選手の2017年のK/BBは以下の通り。(カッコ内は今季の数字、米球界挑戦の平野投手は割愛)

増井浩俊投手 7.45(3.50)
内竜也投手  1.57(6.00)
増田達至投手 4.46(2.00)
平野佳寿投手 2.94
サファテ投手 10.20(3.00)

K/BBは、一般的には3.50を上回れば優秀、1.50を下回ると不安視されることが多いと言われている。松井投手はこれまでも四球でランナーを貯めながら後続を断っていくケースが多かったため、毎年投球イニングを上回る奪三振数を記録しながらK/BBは伸び悩んでいた。しかし、今季の1.56という数値は明らかに低迷しているといえるもので、14奪三振・与四球9というところにも投球内容の悪さが表れているのかもしれない。

グラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合は…

続いて、本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合を示す「BABIP」という指標も見ていきたい。BABIPはその性質上投手がコントロールできる余地が少なく、一般的に運の絡む要素が大きいとされている。

松井投手がプロ入り後の5年間で記録したBABIPは以下の通り。

2014年 .294
2015年 .230
2016年 .283
2017年 .248
2018年 .434

上記の数値を見てもらえばわかる通り、今季は例年に比べて数値が1割以上も跳ね上がっている。もちろんこの指標は運のみならず投手の投球内容や野手の守備力などにも左右されるため、チームの不振も相まって一概に定義はしづらいところがある。それでも、今季の松井投手が運に恵まれていないと判断できる材料とはなるはずだ。

上記の指標2つを見る限りでは、今季の松井投手は四球で走者を出すことが多いにも関わらず、三振によって独力でアウトを取る機会が少なく、フェアゾーンに飛んだ打球が安打になる確率も高くなってしまっていることによって成績が悪化していると推測できる。すなわち、持ち前の奪三振力が回復し、制球力が例年レベルまで向上してくれば不振脱出につながる可能性が高いのではないだろうか。

4月後半の2試合ではランナーを貯めながらも無失点リリーフを見せ、少しずつではあるが復調の兆しを見せ始めている松井投手。このまま若き絶対的守護神が本来の姿を取り戻せば、昨季の安定感が失われている楽天のブルペンにも一筋の光が差してくるはずだ。

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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