両リーグともに半数の試合で、普段とは異なるオーダーを組むことに
交流戦においては、パ・リーグのホームゲームでは指名打者制度(DH)が導入され、セ・リーグ主催試合では導入されない。そういった事情もあり、パ・リーグのチームにとっては、ビジターでは普段と異なるオーダーの編成を余儀なくされる。こうしたホームとビジターの違いは、はたして実際のチーム成績にどの程度反映されているのだろうか。
今回は、直近5回の交流戦における各球団のホーム・ビジター成績の違いや、交流戦期間中にDHとして先発起用された選手たちの顔ぶれを紹介。そこから見えてくる、交流戦におけるホーム・ビジターの違いや、その重要性について考えていきたい。
2015年から4シーズン連続で納得の傾向が出ていたが……
まずは、2015年から2019年の間に開催された5度の交流戦における、各チームの成績を見ていこう。(赤字の部分は、ホームの勝率がロードを上回ったチーム)
以上のように、2015年から4年連続でホームの勝利数がロードを上回り、やはり慣れ親しんだルールに則った試合の方が好成績を収めやすいという結果に。しかし、2019年は過去4年とは異なり、ホームの成績がロードを下回った。過去4シーズンでは最低でもホームチーム全体の勝ち越しが7個以上存在したことを考えると、傾向にはかなりの変化が見られる。
ただ、2019年のセ・リーグ球団でホーム成績のほうが上だったのは横浜DeNA1チームだけとなっていた一方で、パ・リーグではホーム成績が上だったのが2球団、ビジターが上だったのは3球団、同率が1球団と、セ・リーグに比べればやや拮抗した結果となっていた。
その理由を考えるうえで判断材料となりうる要素として、今回取り上げた交流戦期間内のパ・リーグ6球団で、指名打者の先発に名を連ねた選手の顔ぶれを見ていきたい。
北海道日本ハムファイターズ
2016年までは野手としての出場がほぼ指名打者に限定されていた大谷翔平選手(現・エンゼルス)や、ベテランの田中賢介氏や矢野謙次氏の起用が中心に。2015年にホームで大きく勝ち越しながらビジターでは五分の星に終わり、大谷選手が野手として出場できなかった2017年の勝敗数がいずれも五分だった点にも、「打者・大谷翔平」の存在感の大きさが表れている。
そして、大谷選手がチームを離れた2018年以降は、故障に悩まされることも少なくはない近藤健介選手や中田翔選手がDHに入る機会が増加。守備面で課題を抱えていたアルシア氏や清宮幸太郎選手をDHに据えられるメリットもあり、この2年間はホーム成績がロードを上回っているのは妥当といったところか。
東北楽天ゴールデンイーグルス
DH専門に近い存在だったペーニャ氏が在籍した2015年は、ホームとロードの成績が両極端に。ペーニャ氏が退団した2016年は前年とは逆の展開となり、同じくDHが主戦場だったアマダー氏がレギュラー格としてプレーした2017年は、再びホームの成績がビジターを上回った。こうした点からも、戦力事情によってDHの価値そのものが変化するという点が見え隠れしている。
ただ、チーム全体が絶不調でホームとビジターの成績に全く変化がなかった2018年、ホームよりもロードのほうが勝ち星が多かった2019年と、近年はやや傾向が変化。2019年に関しては、DHを務めたブラッシュ氏とウィーラー選手はいずれも守備に就く機会も少なくはなく、ペーニャ氏やアマダー選手の時のような戦力ダウンにはつながらなかったようだ。
埼玉西武ライオンズ
2015年は森友哉選手が捕手ではなく、DHや外野手として出場する機会が多い時期だったこともあり、ホームでの全9試合でDHとしてスタメン出場。また、2016年は中村剛也選手、2017年と2019年は栗山巧選手、2018年はメヒア選手と、期間内の5年間全てでDHのスタメンがある程度定まっていたことがわかる。
そういった影響もあってか、2015年から2017年まで3シーズン連続で、ホームでの成績がビジターを上回った。しかし、2018年からは2年続けて、ホームとロードの成績が全く同じに。この点に関しては、2018年のメヒア選手がOPS.655、2019年の栗山選手がOPS.687と、それぞれDHの主力を務めた選手が不振に苦しんでいたことと無関係ではなさそうだ。
千葉ロッテマリーンズ
2015年から2018年まで4年連続でホームの成績がビジターを上回っており、DH制の恩恵がとりわけ大きなチームの一つと言える。実際の顔ぶれを見ても、ほぼDH専門だったデスパイネ選手が全試合でDHを務めた2016年を筆頭に、大ベテランの福浦和也氏や井口資仁氏、同じくDH起用が主だったパラデス氏と、DHで起用したい選手が多く在籍していた。
そんな中で2019年はホームで3つの負け越しをつくりながらビジターでは勝ち越しと、従来とは逆の傾向を示した。この年は鈴木大地選手が一塁に回り、一塁が本職の井上選手がDHを務めた。DHが使えない試合では鈴木選手がレフトの守備に就くなど難しいやり繰りを強いられていたが、内野に比べれば外野の選手層が薄い時期だったこともあり、大きな戦力ダウンにはつながらなかったと考えられそうだ。
オリックス・バファローズ
2015年はホームとビジターの勝率が同じ、2016年はホームで大きく負け越しと、同時期の他球団とは毛色の異なる結果に。2015年は前年にDHを務めたペーニャ氏の退団もあり、DHのレギュラーが定まらなかったことが、起用された選手の多さからもうかがえる。2016年はブランコ氏が主にDHを務めたが、交流戦では9試合に出場して打率.083と極度の不振に。期待の大砲の絶不調は、チーム全体の大苦戦にも影響したと考えられる。
苦しい2年間を経て、2017年からはロメロ選手が主に指名打者を務め、時折吉田正尚選手もそのスポットに入るように。それに伴い、2017年から2年続けてホームの成績がビジターを上回った。2019年もホームとビジターの間にさほど差のない結果となっており、ロメロ選手の加入後によって、DH制の恩恵が明確に表れるようになったと言えそうだ。
福岡ソフトバンクホークス
2015年から2018年までの4シーズン続けて、1人の選手が9試合全てでDHを務めていた。成績面でも2015年はビジターのほうが良かったものの、2016年からは4年連続でホーム成績がビジターを上回る結果に。指名打者のレギュラーが完全に固定されていることの影響が、良くも悪くも大きく表れていると言えよう。
2019年もデスパイネ選手が主にDHを務めたが、交流戦期間内は打率.204と不振。その影響もあってか、ホームとビジターの差は過去3年間に比べてやや小さくなった。ホークスにとってDH制の恩恵が大きいことは先述の通りだが、それでも該当期間内の5年間全てでビジターでも勝ち越しをつくっている点は、交流戦巧者の面目躍如といったところか。
交流戦におけるDHの有無は、チーム状況によっては大きな差を生む要素に
このように、DHに入る選手が固定されていたり、主力選手がDHで出場することによる恩恵が大きいチームほど、ホーム成績がビジターを上回りやすいことが数字にも示されていた。
戦力事情の影響で、DH制の恩恵が必ずしも大きくなかったチームも散見された2019年には、全体の傾向自体に大きな変化が見られていた点には留意すべきではある。だが、先述のような傾向が表れていること自体が、交流戦におけるホームとビジターの重要性を証明するものでもあるだろう。
2年ぶりに開催された2021年の交流戦も、順延分を除けば残すはパ・リーグ球団主催の3連戦のみ。“ホームの利”を得たパ・リーグが、11年連続で勝ち越しを決められるか注目だ。
文・望月遼太
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