Aクラス入りを直接左右した年も。2019年以前の「交流戦抜きでの順位」はどうだった?

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2021.5.30(日) 09:00

福岡ソフトバンクホークス・工藤公康監督(C)パーソル パ・リーグTV
福岡ソフトバンクホークス・工藤公康監督(C)パーソル パ・リーグTV

2019年以前も、“交流戦がなかったシーズン”だったとしたら?

 2005年に始まった「日本生命セ・パ交流戦」は、それから2019年までの全てのシーズンにおいて、欠かすことなく開催され続けてきた。しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響により、導入以来初めて交流戦が行われないシーズンに。2021年シーズンでは2年ぶりに開催され、再びリーグの垣根を越えた戦いの火蓋が切って落とされた。

 現在のレギュレーションにおける交流戦の試合数は、各チームごとに18試合。短縮シーズンとなった昨季に削減された試合数(23試合)と、さほど変わらない数字といえる。そういう観点からいえば、昨季は「交流戦がなかった場合の順位が、ある程度可視化されたシーズン」という考え方もできる。

 それでは、2019年以前の5年間における各チームの成績から交流戦の数字を除外してみると、いったいどのような結果となっていたのか。特異なシーズンとなった2020年を経て、2年ぶりに交流戦が開催されるこのタイミングだからこそ、そういった過去の事例について、あらためて振り返っていきたい。

2015年

2015年の全日程成績、交流戦成績、交流戦を除いた成績(C)PLM
2015年の全日程成績、交流戦成績、交流戦を除いた成績(C)PLM

 順位自体に変動はなかったが、シーズン勝率.500ながら4位となっていた埼玉西武は、交流戦期間内に4つの貯金をつくっていたこともあり、交流戦を除いた数字では勝率.500を割り込むことに。同じく交流戦で好調だった楽天も、同一リーグ内の対戦では勝率.300台と順位表以上の大苦戦を強いられていたことがわかるなど、実際の数字を見てみると、交流戦の影響は少なからず感じ取れる結果となっている。

2016年

2016年の全日程成績、交流戦成績、交流戦を除いた成績(C)PLM
2016年の全日程成績、交流戦成績、交流戦を除いた成績(C)PLM

 この年は北海道日本ハムが福岡ソフトバンクとの熾烈な優勝争いを制して大逆転優勝を飾ったシーズンだったが、交流戦の成績には福岡ソフトバンクに分があったこともあり、リーグ内での数字では、北海道日本ハムがより多くの貯金をつくっていた。また、3位の千葉ロッテも交流戦を除くと勝率.500を割り込んでいたことからも、上位2チームがそれぞれ同一リーグとの対戦で突出した対戦成績を残していたことが浮き彫りとなっている。

2017年

2017年の全日程成績、交流戦成績、交流戦を除いた成績(C)PLM
2017年の全日程成績、交流戦成績、交流戦を除いた成績(C)PLM

 2017年は全日程の成績と交流戦のリーグ内順位が完全に同一という、珍しい記録が生まれたシーズンでもあった。それゆえに、交流戦の成績が全日程の成績に及ぼす影響も、他のシーズンに比べるとかなり少なくなっている。順位の面でも、元々Aクラスの3チームとBクラスの3チームがはっきりと分かれていたことからも、変化が起こる要素に乏しいのは致し方ないと言えるか。

2018年

2018年の全日程成績、交流戦成績、交流戦を除いた成績(C)PLM
2018年の全日程成績、交流戦成績、交流戦を除いた成績(C)PLM

 開幕から首位を独走した埼玉西武をはじめ、1位から5位までのチームが交流戦で10勝以上を記録。それもあって、1位から4位までの順位や趨勢には大きな変化がなかった。そんな中で唯一、楽天は交流戦で負け越していたが、シーズン中盤からは徐々に調子を上げていった。それに加えて、5位の千葉ロッテが終盤戦で急失速していたこともあり、交流戦を除いた成績においては、5位と6位の順位が入れ替わることになった。

2019年

2019年の全日程成績、交流戦成績、交流戦を除いた成績(C)PLM
2019年の全日程成績、交流戦成績、交流戦を除いた成績(C)PLM

 前年の楽天のように交流戦で大きく負け越すチームは存在しなかったが、北海道日本ハムが1つ、千葉ロッテが2つの負け越しを記録。そして、交流戦を除いた順位に目を向けてみると、楽天と千葉ロッテが3位タイで全く同じ成績となった。すなわち、千葉ロッテにとっては交流戦でつくった2つの借金が、Aクラス入りの成否、ひいてはポストシーズンへの進出を分ける、まさに致命傷となっていたことがわかる。

交流戦での出遅れは禁物

 今回取り上げた5つのシーズンのうち、2016年、2018年、2019年の3度にわたって順位変動が起きていた。中でも2019年はAクラス、すなわちクライマックスシリーズへの進出を、交流戦での数字が左右する結果となっていた。こういった結果を鑑みても、交流戦における成績の重要性は、近年に入ってさらに増してきていると考えてよさそうだ。

 また、これまで15回開催された交流戦のうち、パ・リーグが勝ち越した回数は実に14回。今回取り上げた期間内のシーズンにおける各チームの成績を見ても、その大半が交流戦で勝ち越しをつくっていたことがわかる。その一方で、直近5年間においては全6チームが貯金をつくったシーズンは存在せず、最低1チーム以上は交流戦で負け越す球団もあった。

 また、大半のチームが期間内に白星を先行させる中で、2016年のオリックス(5勝13敗)、2017年の千葉ロッテ、2018年の楽天(ともに6勝12敗)のように、1チームだけ大きく負け越す例も存在。この3チームは全て年間順位も最下位となっており、開幕から調子が上がらない中で、交流戦でさらに他チームとの差を広げられたことが、非常に重くのしかかっていたことがうかがえる。

 今季のパ・リーグは混戦模様なだけに、仮に交流戦で負け越してしまった場合には、最終的な順位にもその差が響いてくる可能性は大いに考えられる。2019年と同様に、今季の交流戦の成績は、シーズンの成否を分けるような勝率のラインにも直接影響してくるかもしれない。2年ぶりの交流戦において抜け出すチームは、いったいどこになるだろうか。

交流戦を巡る近年のジンクスは、今期以降も継続するか

 最後に、今回取り上げた5度のシーズンにおける、興味深いデータについて紹介したい。該当期間における交流戦で負け越したパ・リーグのチームと、その最終的な順位は以下の通りだ。

2015年〜2019年の交流戦で負け越したチームと、その最終的な順位(C)PLM
2015年〜2019年の交流戦で負け越したチームと、その最終的な順位(C)PLM

 このように、近年の交流戦で負け越したパ・リーグのチームは、例外なくBクラスに沈む結果となっていた。たとえ交流戦での負け越し数自体が少ない場合であっても、リーグ内の多くの球団が勝ち越す可能性が高い以上は、そこで生まれる差は決して無視できるものではない。このジンクスが今季も継続するようであれば、今季の交流戦の成績そのものに関しても、やはり注視する価値は大いにあると考えられる。

交流戦の重要性は、今回取り上げた各種の数字にも示されていた

 ここ最近は、交流戦の成績が年間順位にダイレクトに響くケースが増加する傾向にある。それだけでなく、交流戦で負け越すことそのものが、シーズンの順位にも悪影響を及ぼすという結果も示されていた。

 交流戦の重要性はかねてから指摘され続けてきたことではあるが、実際の数字からも、その重要度が裏付けられているといえよう。今年もこれまでと同様の傾向が続くようであれば、この期間において遅れを取った場合の巻き返しは、決して容易なものではないと考えられる。2019年のように最終的なポストシーズン行きを左右する可能性すらある交流戦の対戦成績と、各チームが見せる戦いぶりに、今季はあらためて注目してみてはいかがだろうか。

文・望月遼太

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