開幕5連敗も4月で完済 千葉ロッテ井口監督が考える「4月に勝ち越せた2つの理由」

Full-Count 佐藤直子

2021.5.6(木) 20:14

千葉ロッテ・井口資仁監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
千葉ロッテ・井口資仁監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

千葉ロッテ井口監督が感じる“今”を届ける月連載・第4回

 ゴールデンウィーク(GW)が終わりを告げ、沖縄では早くも梅雨入りを迎えた日本。初夏の爽やかな陽気の中、プロ野球では全12球団が30試合以上、つまりレギュラーシーズンは1/4を終えたことになる。阪神が圧倒的な強さを見せるセ・リーグに対し、パ・リーグは全6チームが5.5ゲーム差の中にひしめく混戦状態が続いている。

 井口資仁監督率いる千葉ロッテは開幕5連敗と重いスタートとなったが、4月に入ると好調を維持。4月は14勝8敗4分けと大きく勝ち越し、貯金を作った。昨季課題だったチーム打撃が大きく改善され、チーム得点はリーグトップの152(5日終了現在)。1番・荻野貴司、2番・マーティン、3番・中村奨吾、4番・安田尚憲と上位打線が固定され、安定の得点パターンが生まれた。

 投げては、先発陣が大きく崩れることなく5回以上を投げ、中継ぎ陣に繋ぐパターンを確立。7回・ハーマン、8回・唐川侑己、9回・益田直也という勝利の方程式が整った。ドラフト1位ルーキーの鈴木昭汰は好投しながら、なかなか勝ち星に恵まれなかったが、4月25日の福岡ソフトバンク戦でプロ初勝利を飾った。

 1戦1戦の結果により、順位が大きく変動しかねないパ・リーグ。緊張感を持ったシビれる戦いのど真ん中に身を置く井口監督が、毎月リアルな想いを明かす連載シリーズ第4回は、絶好調のファームが担う役割、存在感を見せる5年目右腕などについて語る。【取材・構成 / 佐藤直子】

 ◇ ◇ ◇

 暦は5月を迎え、ZOZOマリンスタジアムは絶好の野球シーズンを迎えています。それでも新型コロナウイルス感染症の流行が収まる気配はなく、万全な対策をとっていても誰もが感染してもおかしくない状況が続いています。5月3日からZOZOマリンで予定されていた3連戦も、感染拡大の影響で延期されました。感染した皆さんの1日も早い回復を願っています。

 GW中ということもあり、ファンの皆さんに熱戦をお届けしたい気持ちは山々でしたが、こればかりは仕方のないこと。7日から始まるオリックス3連戦に向けて、コンディションを整えるいい期間にすることができました。開幕から1か月が経つこの時期は、誰しも少しずつ疲れが溜まってくるものです。その中で、チームとしても落ちていくか上がっていくか、分かれ目となる大切な時期。特に今回は9連戦を締めくくる3試合でしたし、前2カードが1勝2敗と負け越していたので、気持ちを切り替える意味でもいい時間にできたのではないかと思います。

 今季は5連敗スタートとなりましたが、4月を迎えるとチームが本来の姿を取り戻してくれました。特にミーティングを開いたわけでもなく、首脳陣から選手に声を掛けたわけではありません。唯一あるとすれば、1日の本拠地・楽天戦の前に的場直樹戦略コーチ兼バッテリーコーチ補佐が自ら声出しに名乗り出て、チームの雰囲気を和ませてくれました。あれから連勝して、中旬には2引き分けを挟んで6連勝。的場コーチのおかげですかね(笑)。

開幕5連敗スタートに「就任1年目の2018年だったら…」

 正直なところ、監督就任1年目の2018年であれば、開幕5連敗からチームはガタガタと崩れていたかもしれません。でも、この3年で選手は経験値を増やし、昨季も2度の大きな連敗から巻き返してリーグ2位となった自信がある。キャプテンの(中村)奨吾もしっかり引っ張ってくれているので、改めてチームとしての成長を感じる4月となりました。

 4月に勝ち越せた要因は、大きく2つあると思います。1つは上位打線を固定できたこと、そしてもう1つは先発投手たちの奮闘です。

 1番の荻野が調子が良く、ヒットだけではなく四球も選んで出塁し、足を生かしてくれる。続くマーティンは10本塁打でリーグトップ(5日終了現在)。奨吾は打撃が安定している上に、4番の安田に繋ぐ意識を持ちながら出塁し、それを安田がしっかり返す。安田は打率こそ苦労していますが、得点圏で迎える打席では非常に高い集中力を見せて走者を返してくれています。4月途中からは5番の角中(勝也)も調子を上げてきたので、あとは6番以降が少しずつでも良くなってくれれば。

 NPBでもMLBでも、勝てるチームは打線を固定できています。特に上位打線を固められると、6番以降をなんとか繋げば、また得点パターンが見えてくる。繋ぐという意味でも、6番以下を打つ若手選手にもうひと踏ん張りしてもらいたいところです。

 開幕スタメンで起用した藤原(恭大)は少しコンディションを落としたこともあり、ファームで再調整させることにしました。当然、結果を残さなければいけない選手ですが、試行錯誤も経験しなければならない。ファームで調子のいい選手が何人もいましたし、藤原は一度リセットして、いい形で戻ってきてほしいと送り出しました。

 現在、ファームはイースタン・リーグで19勝5敗2分と勝ち星を重ねています。積極的に若手を1軍で起用しているため、中堅の1軍経験者が多いことが要因ですが、この選手層の厚さは今季の強みでもあると思います。1軍とファームに線引きするのではなく、ファームも含めて1つのチーム。マリーンズの戦力として1年を通じてどうやってフルに使っていくか。若い選手をずっと1軍のベンチに置いておいても仕方がない。ファームで調子のいい選手たちと上手く入れ替えながら、チームとしてより高いパフォーマンスが出せる状態を整え、全員で優勝を目指す。勝利と育成のバランスはいつも頭を悩ませるところですが、この1か月は若い選手にいい形で経験を積ませてこれたのではないかと思います。

存在感を光らせた5年目右腕「真っ直ぐのキレが非常にいい」

 4月は先発投手の働きに助けられました。みんながしっかりと5回までゲームを作ってくれたことは、非常に大きかったと思います。ルーキーの鈴木が先発する日に、なかなか打線が援護できず、プロ初勝利まで時間がかかってしまったのは申し訳なかった。それでも、鈴木に限らず先発全員が自分の仕事を果たしてくれていることが、4月に勝ち越せた土台となっています。

 当初は中継ぎが安定せず、うまく繋げない部分もありました。でも、ここへ来てみんなが調子を上げてきて、ハーマン、唐川、益田という勝ちパターンが作れるようになった。状態が安定しなかった小野(郁)も一度ファームで立て直し、かなりいい状態で帰ってきました。小野が不在の中で存在感を光らせたのが、5年目の(佐々木)千隼です。

 もともと先発で考えていて開幕ローテに入るギリギリの線にいましたが、ロングリリーフもできるタイプということで中継ぎに回ってもらいました。今年に関しては、真っ直ぐのキレが非常にいいし、コントロールもしっかりしている。今まで長いイニングで放っていたのが、1イニングに集中して全力でいけているのが奏功しているのかもしれません。中継ぎの厚みを増すために千隼や小野がいい働きをしてくれると、本当にありがたいですね。

 4月には監督として通算200勝を挙げることができました。これはひとえに選手たちの頑張り、ファンの皆さんの声援のおかげです。ありがとうございます。200勝といえど、僕の中では通過点ですし、自分が何勝を記録するかより、チームが優勝する方が大事。そのために1勝1勝を積み上げていきたいと思います。

 ご覧の通り、パ・リーグはそんなに甘いリーグではありません。想定内だとは言え、今も混戦状態が続いています。今季は9回で試合終了となるため、どのチームも全力で投手を注ぎ込み、ベンチを注ぎ込んでくる。自分のやるべきことをやって食らいついていくのみですが、ファンの皆さんにとっては1試合も落とせない状況が最後まで続くので、面白いシーズンになっているのではないでしょうか。

 5月中にはファームで経験を重ねている佐々木朗希が1軍で投げる可能性もあります。コンディション次第なので、いつ投げるか明言はできませんが、ファンの皆さん同様、僕も楽しみにしています。

 小休止を挟んだ5月は、まず3連戦の初戦をとってカードを勝ち越す。どのチームも取りこぼすことはできないので、全力で勝利を掴みにいきます。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

記事提供:Full-Count

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Full-Count 佐藤直子

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