“送球を顎で受けた男”埼玉西武今井達也の覚醒 オリックス指揮官脱帽「かなりのレベルの投手に…」

Full-Count

2021.5.6(木) 08:10

オリックス戦に先発した埼玉西武・今井達也※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
オリックス戦に先発した埼玉西武・今井達也※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

速球は常時150キロ超「カットボールも有効に使えた」

■埼玉西武 6ー2 オリックス(5日・メットライフ)

 埼玉西武・今井達也投手は5日、本拠地メットライフドームで行われたオリックス戦に先発し、8回途中6安打4四球2失点。相手先発の山本由伸投手との“同い年対決”を制し、今季2勝目(2敗)を挙げた。防御率も同日現在、チームトップでリーグ5位の2.39。大器がいよいよ開花しようとしているのか。

「相手が同級生の(山本)由伸で、前回勝てなかったので、今日は絶対に由伸より先にはマウンドを降りたくない気持ちでした」。試合終了後、お立ち台に上がった今井はそう明かした。4月21日に敵地・京セラドームで対戦した時には、7回4失点で敗戦投手。8回2失点で勝利投手となった山本と明暗を分けていた。

 プロでの実績では、一昨年に最優秀防御率、昨年も最多奪三振のタイトルを獲得した山本に水を空けられているが、今井とて夏の甲子園優勝投手で、潜在能力は勝るとも劣らない。2度続けて直接対決で負けるわけにはいかなかった。

 速球は最速155キロで常時150キロを超える。「有効に使えた」というカットボール、チェンジアップ、カーブなど変化球の精度も高い。今季リーグワーストの与四球27が示すように制球難が最大の課題だが、この日は7回までわずか1四球。「なんとか8回まで、あわよくば完投してくれれば」という辻発彦監督の親心で今季初めて8回のマウンドに上がると、疲労のためか一気に3四球を与え、2死満塁となった所で平良海馬投手に後を託し降板した。一方の山本はプロ入り後自己ワーストの10安打を許し、5失点(自責点4)で7回途中降板した。

辻監督(右)とグータッチを交わす※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
辻監督(右)とグータッチを交わす※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

辻監督「四球を怖がらずに投げられるようになった」

 今井は前回登板の4月28日・千葉ロッテ戦でも7回2失点と試合を作った。ただ、1回に一塁ベースカバーに入った際、脱げた帽子に気をとられて送球が顎付近を直撃するシーンがあった。辻監督からは「ふかふかした頭をしているから帽子が脱げるんだよ! 帽子を気にしている場合じゃないだろ!」と苦言を呈されつつ、「顔に当たってちょっと目が覚めたかな。よく投げた」と称えられた。その1週間後のこの日は、まさに本格的な覚醒を思わせる投球だった。

 辻監督は「これまでは四球で自滅するところがあって、ストライクを取らなければいけないと思うと腕の振りも緩んで、いまひとつ力を発揮できなかったが、ピンチでもちゃんと腕を振れるようになった」と指摘。「打者に向かっていく気持ちを僕ら(首脳陣)も感じていて、それが打者に対する“圧”になり、変化球も生きる。あまり四球を怖がらずに投げれるようになった気がする」と目を細める。

 味方だけではない。敵将のオリックス・中嶋監督は「いやぁ……かなりのレベルのピッチャーになっていると思います。今日は向こうのピッチャーが良かったと割り切ります」と脱帽した。

 まだ制球難が顔を出すこともあるが、3勝4敗、防御率6.13と伸び悩んだ昨季に比べれば、数段成長している。油断することなく一気に山本レベルの球界を代表するエースに成長してほしい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

記事提供:Full-Count

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