2017年シーズンでの飛躍が期待されるパ・リーグの若手選手たち

パ・リーグ インサイト

2016年シーズンが終了して2ヶ月近くが経過し、秋季キャンプやファン感謝イベントも終わりを迎えた。これからの期間が選手たちにとっては貴重なオフシーズンを迎えることとなるが、若手選手の多くが早くも2017年シーズンを見据え、教育リーグや自主トレーニングなどで汗を流している。

今季、これまでの成績からは予想がつかない活躍を見せた選手、新人ながらほとんど一軍の舞台で活躍を続けた選手などもいる中で、来季に懸ける思いが強いのは、やはり自身の成績に納得のいっていない選手たちだろう。どうしてもメディアで見かける機会の多いごく一部の選手にばかり目が行きがちだが、そもそも一軍に昇格できるということ自体が、限られた選手にしか許されない権利であり、二軍の選手たちにとっては途方もなく高いハードルでもある。

しかし、今年のパ・リーグ新人王に輝いた高梨投手は、受賞の場で「去年の今頃はこの賞を獲れるとはまったく思っていませんでした」と語っていたように、昨季まで一軍で未勝利であった。それがたった1年で新人王である。つまり来季、高梨投手のように躍進を遂げられる可能性は、今季思うように結果が出せなかった全ての選手に秘められている。

そこで、ここではパ・リーグの各球団につき1人ずつ、来季からの飛躍が期待される選手たちをご紹介していきたい。

【北海道日本ハム・横尾選手】
ファーム成績:80試合291打数80安打15本塁打53打点 打率.275

横尾選手は入団1年目の大卒ルーキー。2011年夏の甲子園では、日大三高の4番として、今季のセ・リーグ新人王、阪神の高山選手とともに全国制覇を成し遂げた。慶應義塾大学時代には1年次からスタメンに名を連ね、通算13本塁打を放つなど、長打力が魅力の選手。愛称は埼玉西武の中村選手にちなんで「おにぎりくん」である。

今季、2月の紅白戦でアピールに成功し、開幕一軍スタート。1年間通して一軍に帯同することは叶わなかったものの、イースタン・リーグで放った15本塁打は、右の長距離砲としての将来性を大いに感じさせる内容であった。積み重ねた打率・本塁打・打点も、チーム内トップの数字を記録。北海道日本ハムは若手野手の層が厚いチームではあるが、持ち味を発揮することができれば、来季からの一軍定着もそれほど遠い目標ではないだろう。

【楽天・中川選手】
ファーム成績:85試合275打数79安打9本塁打56打点 打率.287

中川選手は8年目の26歳。長打力を備えた選手だが、選球眼にも優れ、今季のイースタン・リーグでは最高出塁率のタイトルを獲得。9月には今季2度目となる一軍昇格を果たすと、4日の福岡ソフトバンク戦で満塁本塁打を放った。

楽天は球団創設以来、生え抜きの日本人選手による2桁本塁打が一度も出ていない。今季、島内選手があと1本に迫ったが、惜しくも届かず記録達成は来季以降に持ち越されることとなった。昨季に5本塁打をマークした中川選手は、球団待望の大砲としての可能性を大いに秘める。来季はレギュラーの座を奪取し、杜の都に1本でも多くのアーチを描いてほしい。

【埼玉西武・山川選手】
ファーム成績:64試合237打数79安打22本塁打64打点 打率.333
一軍成績:49試合139打数36安打14本塁打32打点 打率.259

山川選手は3年目の25歳。強打の埼玉西武打線が誇る、次世代の和製大砲だ。今季は6月から一軍に昇格し、49試合出場と、打席数は少ないながら14本塁打を放っている。イースタン・リーグでは22本塁打で本塁打王に輝き、第2位の成績となる64打点も挙げた。

ファームでは確実に結果を残し、一軍でも少しずつ存在感を発揮。今季は、相手チームの選手や、ファンからの知名度も飛躍的に増したことだろう。長く主砲として君臨する、中村選手の後継者になり得る器であり、首脳陣からも大きな期待がかけられている。

今季は一軍で活躍を見せたが、完全に定着(飛躍)するためにはこれからのアピールがまだまだ必要である。山川選手が埼玉西武の本塁打王の系譜を継ぎ、若きホームランアーティストとして台頭する日を楽しみにしたい。

【千葉ロッテ・肘井選手】
ファーム成績:93試合333打数93安打11本塁打61打点 打率.279

肘井選手は2013年に育成ドラフトで入団。2015年に支配下契約を勝ち取った。以降一軍の試合出場は2年間で14試合に留まったが、今季はイースタン・リーグで2位の山川選手に次ぐ61打点を挙げ、2桁本塁打も達成している。まだ高卒3年目、21歳であることを考えれば、今後が非常に楽しみな選手である。

千葉ロッテは直近で20本以上の本塁打を記録した日本人打者は、2013年に23本塁打を放った井口選手まで遡る。今季はデスパイネ選手の働きにより、得点力に欠ける印象はさほど与えなかったものの、最後の最後まで逆転勝利の望みを途切れさせないためにも、試合の雰囲気を一発で変えられる打者は必要だ。そういう意味でも、肘井選手の成長にかかる期待は大きいと言えるだろう。

【オリックス・青山投手】
ファーム成績:18試合3勝8敗 91回 51奪三振 防御率5.34

青山投手はプロ1年目の22歳。名門・智弁学園時代は1年生時からレギュラーを張り、甲子園出場も経験している。150キロに迫るストレートを武器とする投手だが、打撃や走塁のセンスも光り、投打でチームをけん引した。今季はファームでの登板が主で、3勝8敗と負け越し。9月20日の埼玉西武戦で初めて一軍の試合に登板したが、4回4失点、防御率6.75とほろ苦い結果となり、プロの洗礼を浴びたシーズンとなった。

しかし、10月28日から開催された「第1回WBSC U-23ワールドカップ」で代表メンバーに選出されると、JR東日本との練習試合では2回無失点、31日(日本時間)の第3戦では6回2失点、11月6日(日本時間)のスーパーラウンド最終戦では7回2失点。すべて先発として登板し、チームの優勝に貢献する力投をみせた。11月25日から12月18日までの「2016アジアウインターベースボールリーグ」のウエスタン選抜メンバーにも選ばれ、現在も好投を続けている。不足するチームの先発ローテーションの一角に食い込めるか、青山投手の来季に注目したい。

【福岡ソフトバンク・塚田選手】
ファーム成績:116試合407打数124安打8本塁打50打点 打率.305

塚田選手は2011年に入団した27歳。プロ5年間での一軍での試合出場は計17試合に留まっているが、昨季4月14日のオリックス戦ではプロ初安打をホームランで飾り、鮮烈デビューを果たした。今季のウエスタン・リーグでは打率.305、124安打、出塁率.424をマークして、首位打者、最多安打、最高出塁率という打撃部門の3つのタイトルを獲得。特に124安打は、ウエスタン・リーグのシーズン安打記録を4本更新する数字であった。ファームではもうやることがないといっても過言ではないだろう。

しかし、昨季のウエスタン・リーグで、塚田選手と同じく突出した成績を叩き出した選手のうち、今季一軍に定着できた選手はほんの一握りだった。ファームで結果を残しても、その力が一軍で通用するとは限らない。福岡ソフトバンクは選手層も厚く、簡単には一軍に上がれないということもあるだろう。来季こそ、与えられたチャンスを確実に掴み、熾烈を極めるレギュラー争いに名乗りを上げてほしい。

以上、来季からの飛躍が期待される6選手を挙げさせていただいた。ただ、彼らはもともと持っている力を、多かれ少なかれ数字として表すことができているため、ポテンシャルの高さを判断しやすい。それを発揮できさえすれば、一軍の戦力になれると予想するのは簡単だ。

しかし、まだ誰にも見出されていない才能の持ち主も、ファームや今季の新人選手の中にいくらでも隠れているのだろう。野球は数字のスポーツだと言われるが、信頼のおけるデータをいくら集計して予想しても、それを超えていく選手や結果が時々現れる。どんな名選手の展望も、そのときになってみなければ分からない。それが野球の恐ろしいところでもあり、われわれを惹きつけて離さない醍醐味でもある。来季、一人でも多くの新しい選手の活躍が見られることを、今から楽しみにしたい。

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