安田尚憲、藤原恭大に続く新たなブレイク候補。マリーンズ期待の若手「山口航輝」とは?

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2021.3.12(金) 17:00

千葉ロッテマリーンズ・山口航輝選手(C)PLM
千葉ロッテマリーンズ・山口航輝選手(C)PLM

昨季は二軍で全試合に出場し、4番打者として奮闘

 安田尚憲選手、藤原恭大選手に次ぐ、千葉ロッテの新たなブレイク候補の台頭だ。オープン戦で4番打者として奮闘を続ける山口航輝選手が、3月11日の楽天戦で待望の第1号ホームランを放った。昨季は安田選手が若き4番として出場を重ねたが、今季は安田選手より一つ年下の山口選手が、同様の抜擢を受ける可能性がありそうだ。

 山口選手は藤原選手と同期の高卒3年目の野手で、昨季まで一軍出場は1試合もなし。だが、プロ1年目の2019年から二軍で積極的に起用されており、2020年には二軍の四番打者を任された。こういった起用法からも、球団からの大きな期待がうかがえる。

 そんな山口選手が過去2年間で記録した、二軍での年度別成績は下記の通りだ。

千葉ロッテマリーンズ・山口航輝選手 年度別二軍成績(C)PLM
千葉ロッテマリーンズ・山口航輝選手 年度別二軍成績(C)PLM

 2020年は社会情勢の影響もあって二軍の試合数が大きく減少したこともあり、試合数自体は前年に比べて減少している。しかし、昨季の千葉ロッテが戦った二軍戦は全部で70試合であり、山口選手は全試合出場を達成している。安打・本塁打・打点・四球といった各種の数字は試合数の減少にもかかわらず向上を見せており、進歩の跡も感じられる内容だ。

課題だった選球眼も向上し、打者として着実に成長

 前年との比較を行うにあたって、2020年の二軍成績を、前年と同じ114試合に換算した表を紹介していきたい。

千葉ロッテマリーンズ・山口航輝選手 年度別二軍成績(C)PLM
千葉ロッテマリーンズ・山口航輝選手 年度別二軍成績(C)PLM

 各種の成績は約1.6倍に上昇しており、やはり、数字の面でも成長がうかがえる結果であったことがわかる。出塁率や四球の向上といった要素からは、単純な打力だけでなく、プロ初年度は課題の一つだった選球眼も改善を見せつつあることがわかる。高卒2年目で残した数字ということを考えれば、まずまず順調な成長を遂げていると考えられそうだ。

 しかし、昨季途中に一軍選手の中で新型コロナウイルスの集団感染が発生したことにより、二軍選手の大半が一軍に昇格する一幕があった。その中で、山口選手は二軍で4番として一定の活躍を見せながら昇格の声はかからず。山口選手にとっては、今季は満を持して一軍定着に挑むシーズンでもある。

思い切りのよい打撃を武器に、4番打者への抜擢に応える活躍を披露

 オープン戦の初戦となった3月2日のオリックス戦では適時打を含む2本の二塁打を放ち、続く3日の同カードでも二塁打を記録。開幕ローテーションに入るレベルの一軍投手を相手にしても物怖じすることなく、思い切りのよいバッティングスタイルを貫いている。オープン戦序盤においては、4番という看板に負けない奮闘を見せていると言えるだろう。

 また、山口選手の登録上のポジションは外野手だが、今季の練習試合やオープン戦では一塁手として起用されている。昨季は菅野剛士選手と岡大海選手が外野と一塁を兼任しながら出場機会を確保したが、山口選手も同様に、プレーの幅を広げていけるかにも注目だ。

藤原選手とは、奇しくもOPSが全く同じ数値

 山口選手はオープン戦で4番として出場していることもあり、2019年に二軍で4番を務め、2020年は一軍でも4番として出場を続けた安田選手に続く存在として期待されている。とはいえ、2019年に二軍で本塁打王と打点王の2冠に輝いた安田選手に比べれば、2020年の山口選手の二軍成績は、やや不足している部分があったのも事実だ。

 ただ、終盤に昇格して一軍の舞台でもインパクトを残した藤原選手が、昨季の二軍で残した成績と比較すると、また違った見方ができる。山口選手と藤原選手の2020年の二軍成績は、それぞれ下記の通りだ。

山口航輝選手と藤原恭大選手の2020年二軍成績比較(C)PLM
山口航輝選手と藤原恭大選手の2020年二軍成績比較(C)PLM

 出塁率や本塁打のペースは藤原選手の方が上だったものの、打率や打点は山口選手が上回っている。また、OPSは奇しくも全く同じ水準だ。昨季の藤原選手は一軍での26試合で3本塁打を放ち、打率.260、OPS.707と、打撃面で一定以上の存在感を放った。二軍での成績を鑑みるに、山口選手にも同様に、一軍で活躍ができるだけのポテンシャルはありそうだ。

 また、藤原選手は身体能力を生かした守備や積極的な走塁も持ち味としているが、山口選手の場合は打撃面が最大のセールスポイントになる。出塁率や盗塁といった数字が高かった藤原選手と、打率や打点といったポイントゲッターに必要な成績で上回った山口選手。それぞれ、選手としてのタイプに沿った成績を残している点も興味深いところだ。

右の外野手が少ない中で、山口選手にかかる期待

 さらに、中長期的なチーム編成という面でも、山口選手がブレイクを果たせるか否かは重要な意味を持ってくる。藤原選手に加え、代走や守備固めとして一軍で活躍した和田康士朗選手(22歳)、二軍で最終戦まで首位打者を争った高部瑛斗選手(23歳)という2名の若手がいるとはいえ、荻野貴司選手(35歳)、清田育宏選手(35歳)、角中勝也選手(33歳)、福田秀平選手(32歳)と、現在の外野手の主力の多くは30代となっている。

 加えて、それに続く年齢層の外野手に目を向けると、加藤翔平選手(29歳)、岡大海選手(29歳)、菅野剛士選手(27歳)と、20代後半の選手が顔を揃える。さらに、外野手最年長である荻野選手と清田選手を除くと、20歳以上の支配下登録の右打ちの外野手は、岡選手と山口選手の2名のみ(加藤選手は両打ち)。すなわち、外野の若返りを図る上でも、山口選手が一本立ちするか否かは、大きなウェートを占めてくることが考えられる。

首脳陣の期待に応え、このまま一軍定着とブレイクを果たせるか

 一塁手は打力が重視されるポジションなだけに、求められる打撃成績のハードルも、ほかのポジションに比べて高くなる。加えて定位置争いのライバルには、過去3年間にわたってチームの主軸を務めた長距離砲の井上晴哉選手が存在。さらに、昨季はケガで39試合の出場にとどまった、NPB通算169本塁打のブランドン・レアード選手も復活を期している。山口選手が開幕一軍に残るための競争は、これからより熾烈さを増してくることだろう。

 これまで一軍出場がなかった立場から大きくステップアップする可能性を秘めているだけに、あとはこのままアピールを続け、そのチャンスを掴み取れるかどうか。若手の台頭が目立つマリーンズが、また新たな新星を輩出するか。若き4番が見せる思い切ったスイングに、今後も要注目だ。

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