高橋光成の「進化」のポイントは? 前年との比較からみる課題を克服する力

2021.1.20(水) 10:30 パ・リーグ インサイト 望月遼太
《THE FEATURE PLAYER》L高橋光成 ノーノー逃すも…1安打に抑えて『4年ぶり完封勝利』2020/09/08(C)パーソル パ・リーグTV
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先発陣が苦しむ中、存在感を発揮した2020年

 2020年の埼玉西武は、先発の運用に苦しんだ。昨季勝ち頭だったザック・ニール投手が防御率5.22で6勝にとどまり、飛躍が期待された今井達也投手も、防御率6.13で3勝と絶不調。そんな中、高橋光成投手はチーム最多の8勝を挙げ、自身初となる規定投球回に到達する。23歳にして、先発陣の軸と呼ばれるだけの活躍を見せた。

 高橋光成投手にとって、2020年は確かな成長を果たした1年だったが、その投球に安定感が増した理由はいったいどこにあったのか。2019年と2020年の成績を比較すると、シチュエーション別の投球成績に大きな変化が見られる。試合数こそ違ったものの、ここ2年で高橋光成投手が記録した各数字を比較していき、若き右腕が見せた進歩により深く迫っていきたい。

10勝した2019年と比べても、防御率や奪三振は向上

 まず始めに、高橋光成投手の年度別投球成績を紹介しよう。高校時代、2年生ながら夏の甲子園で前橋育英高校を初出場・初優勝の快挙に導き、一躍注目を集める。そして埼玉西武にドラフト1位指名を受けると、1年目からポテンシャルの高さを発揮。2015年8月には、5試合で4勝、防御率2.96という成績を残し、史上最年少で月間MVPを受賞する。高卒ルーキーとは思えぬ存在感を見せ付け、当然、今後の活躍には大きな期待が寄せられた。

 翌2016年には、早くも先発ローテーションの一角の座を確保した高橋光成投手。ただ一軍登板を重ねるも、白星に恵まれなかったこともあり、本格的なブレイクには至らず。その後2017年と2018年にはそれぞれ登板数が1桁に終わるなど、伸び悩む時期が続いた。

 しかし、2019年には再び先発ローテーションの一角に加わって奮闘し、投球内容に波はありながらも10勝をマークする。終盤に故障したことで規定投球回に到達できなかったが、先発陣の駒不足に苦しむ中、同年のチームのリーグ優勝にも大きく貢献した。

 そして迎えた2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、前年に比べ試合が20以上少ないという違いはあるものの、防御率が4.51から3.74に大きく改善し、四球や被本塁打も減少した。奪三振数は自身初の3桁(100奪三振)に到達し、さらに9月8日のオリックス戦では8回まで無安打無得点という快投を披露。この試合では最終的に自身4年ぶりとなる完封勝利を飾っている。

 次に対左右打者別成績について見ていきたい。

2019年は左打者を大の苦手としていたが……

 2019年は、左打者に対して被打率.354とかなり打ち込まれていたが、2020年は被打率.220と劇的な改善を見せた。右打者に対する被打率も悪化させることなく、同様に成績を向上させることに成功している。

 被打率以外の面でも、改善の跡は多く見られた。左打者から奪った三振が大きく増えているのは顕著な例で、被打率のみならず、左打者に対する投球内容も良化していることがうかがえる。その代わり併殺打の数は減少しているが、これは許した走者の数や、バットに当てられる回数自体が少なくなっていることの裏返しとも取れるだろう。

 また、左打者に対する死球数は前年のちょうど半分となっており、対戦打席数は増えたにもかかわらず、四球数が6つ減少。左打者に対する制球も安定するようになった。その一方で、右打者に対する四球は打席数が減ったにもかかわらず増加しており、被本塁打の数も前年と同じ。来季の課題は、右打者に対する制球の改善と、不意に浴びる一発の減少ということになりそうだ。

 次に直近2年間で記録した、走者別の成績について確認する。

無走者・得点圏における進化

 2019年の被打率は走者あり・走者なしのいずれの状況でも高く、とりわけ得点圏での被打率.326という数字は、失点の多さの一因となっていただろう。しかし、2020年は無走者時の被打率を.215まで抑えており、そう易々と走者を許すことはなくなっている。

 さらに、走者ありの被打率.250、得点圏の被打率.240とピンチの場面での成績が大きく改善しており、その粘り強さが防御率の良化につながったのは間違いない。

 ただ、総じて得点圏での投球成績は向上しているが、本塁打数に関しては倍増しているのが気になるところ。とはいえ、許した打点の数は18減少しており、被弾の増加が大幅な失点増加にはつながっていないのが幸いか。走者を溜めた状態で痛打を浴びるケースが少なかったという点が、先述したピンチでの粘り強さをより強固なものにしている。

 続けて、点差に応じたシチュエーション別の成績を見ていく。

「チームを勝たせる投手」としての資質は十分

 2019年はビハインド、同点、リードのいずれの状況でも被打率が.300前後と、シチュエーションを問わずに打たれるケースが目立った。被本塁打に関しても同様の傾向が表れており、3つの状況でそれぞれ横並びに近い数字となっている。

 しかし、2020年は同点、リードなど重要な局面における被打率が大きく改善し、被本塁打数や与四球もかなり少ない。中でも、チームがリードしている局面ではわずか7打点しか許していない点は特筆ものだ。

 僅差の試合で簡単に追い越されないというだけでなく、一旦リードを奪えばさらに頼もしい投球を披露していた点に、チームを勝たせるエースとなりうるだけのポテンシャルを感じる。ビハインド時の被打率が同点以上の状況に比べて悪いのはやや気がかりだが、それでも前年に比べれば全ての状況で被打率が大きく改善されており、投手としての信頼感が大きく増したのは間違いないだろう。

 次に、直近2年間のイニング別の投球成績を確認していこう。

引き続き課題となっている回も

「立ち上がりは難しい」という通説があるが、2019年の高橋光成投手は初回の防御率が1.29と素晴らしい数字で、むしろ立ち上がりを得意としていた。しかし、2回から4回の防御率はいずれも芳しいものではなく、かなり打ち込まれている。また、8回の被打率.500、防御率20.25という数字が示す通り、試合終盤の投球にも大きな課題を残していた。

 しかし、2020年には3・4回が防御率1点台、8・9回が防御率0.00かつ四死球もゼロと、課題だったイニングの投球内容は大きく改善。2回、5回、6回の防御率が悪くなっているのは気になる点だが、2019年と同様に、1回と7回を一定以上の安定感で乗り切っているのもポジティブな点だ。複数の本塁打を許したのはそれぞれ苦手とする2回と6回の2イニングのみであり、来季はさらなる課題克服にも期待したいところだ。

 イニング別の成績と同様に、直近2年間の対戦打順別の成績も紹介したい。

高橋光成にとって、ラストバッターは“鬼門”?

 2019年はトップバッターと3~5番のクリーンアップという、相手打線の中軸の選手に対して、それぞれ被打率.300超えと打ち込まれていた。また、出塁すると上位打線に回る9番への被打率が.405、クリーンアップの後を打つ6番への被打率が.283と、主力の脇を固める選手たちに対しても分が良いとは言えない。これらの要素が、投球内容全体の不安定さにも影響していたと考えられる。

 ところが、2020年は被打率.300を超えた打順が一つもなく、とりわけ1番と6番に対しては打率.100台。クリーンアップに対しても被打率、被本塁打の両面で対戦成績が向上しており、中軸に対しても力負けせずに打ち取れつつある。これは、大量失点を防ぐことに成功しているとも言えるだろう。

 前年最も相性が悪かった9番打者に対しても、被打率を.100以上改善。ただ、被本塁打は打順別で最も多い4本と、ラストバッターに思わぬ一発を浴びるケースが散見される。来季は9番打者に対してもしっかりとした攻めを継続し、完全に苦手意識を払拭しておきたいところだ。

 さらに、1試合における打者との対戦回数別の成績についても見ていきたい。

「3巡目に入るとリスクが高まる」という概念とは無縁

 2019年は1巡目から3巡目までの打者との対戦成績に大差はなく、いずれも被打率.280以上と打ち込まれる結果に。しかし、2020年にはこれまでに紹介したケースと同様、全ての状況で被打率を大きく改善させている。中でも2巡目は、被安打こそ1巡目や3巡目と大差ないものの、被打率、被本塁打、許した打点はかなり少ない。これらの数字は、打順が一回りしてからの投球に、粘り強さが発揮されていたことの証明といえよう。

 また、2019年、2020年ともに、3巡目以降の巡りになっても被打率が悪化していない点も興味深いところだ。近年のMLBでは「先発投手が3巡目以降を迎えるタイミングで打たれるリスクが高まる」という分析結果に基づいた采配が行われることが少なくないが、高橋光成投手に関してはそういった考えが当てはまらない。先述した試合終盤のイニングに強い点も含めて、先発陣の柱としての資質を十二分に持ち合わせていると言えそうだ。

 続けて、直近2年間における、バッテリーを組んだ捕手ごとの成績についても確認していきたい。

正捕手・森友哉との相性はいかに

 2019年は登板試合の大半で森友哉選手とバッテリーを組んだが、被打率.309、被本塁打13と打ち込まれ、好相性とは言い難いかった。しかし、同じく多くの試合でコンビを組んだ2020年は被打率が大きく改善し、被安打、被本塁打、許した打点といった数字にも、一定以上の向上が見られた。イニング数が減少したにもかかわらず奪三振も微減にとどめており、バッテリーとしての呼吸もこの1年で大幅に改善されたといえるだろう。

 岡田雅利選手とは、2019年も短いイニングの中で好相性を示していたが、2020年も引き続き良好な成績を残している。中でも奪三振は22イニングで20個とかなりのハイペースで積み上げており、三振を奪うための配球に優れたコンビと言えそうだ。また、ルーキーの柘植世那選手と組んだ際にもわずかなイニング数ながら優秀な成績を収めており、捕手を選ぶことなく好投を見せていたことが、各種の数字からも読み取れる。

 最後に、高橋光成投手が記録した対戦球団別の奪三振の内訳について見ていきたい。

日本一チームと、リーグ1位チームを相手に奪三振を量産

 2019年はオリックス戦で高い奪三振率を記録したものの、8度対戦した福岡ソフトバンク戦では奪三振率が6点台と芳しいとは言えず、北海道日本ハムと楽天からはなかなか三振が奪えずに苦しんでいた。しかし、2020年にはその福岡ソフトバンクと楽天への奪三振率が大きく改善され、一転して三振という面ではお得意様に。とりわけ、楽天から奪った空振り三振の数は前年の3倍で、打率・得点がともにリーグトップの楽天打線を手玉に取っていた。

 また、千葉ロッテに対しても前年同様に一定以上の奪三振率を示しており、34イニングで26個の空振りを奪う好投を披露。前年苦しめられた北海道日本ハム打線に対しても奪三振率を2点近く改善させたが、2019年には最も得意としていたオリックスには対策を講じられたか、奪三振率が大きく低下することに。来季はこの対戦における課題を整理し、再び多くの奪三振を記録できるかに注目だ。

今季の課題も同様に克服しさらなる進化を遂げるか

 全体的に被打率が改善され、被本塁打や与四球の数が減っているのはもちろんだが、対左打者や得点圏での被打率が大きく向上していたことをはじめ、森選手との相性や、イニング・打順別の成績、球団別の奪三振内訳といった各種の数字からも、高橋光成投手が前年の投球内容から浮かび上がった課題の解決に向けて取り組み、そして実際にその多くを克服してみせたことが見て取れる。

 23歳にして先発陣の柱として活躍した2020年の成績は、高橋光成投手が持つ高い向上心と、適切なアプローチの成果だ。もちろん、今季見えた新たな課題も少なくはない。2020年に改善に成功した要素を来季以降もそのまま強みにしつつ、投手としてさらに一段階、上のステージに進んでいきたいところだ。

 現在の埼玉西武の先発陣の状況を考えると、高橋光成投手が押しも押されもせぬ主軸へと成長することは、チームにとっても非常に大きな意味を持っていく。獅子の若きエース候補が、真のエースへと飛躍を果たすか否か。その分水嶺となる2021年の投球と、新たな課題の克服に期待したい。

文・望月遼太

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