昭和の福本豊選手、平成の松井稼頭央選手、そして令和の周東佑京選手…… スピードに長けた選手たちは、いつの時代も野球ファンの心をわくわくさせてくれる。昨シーズンは周東選手に加え、千葉ロッテ・和田康士朗選手の台頭もあり、例年以上にずば抜けた足の速さや積み上がる盗塁数が話題になった。
そして2021年シーズン、注目してほしい若きスピードスターがもうひとり。それはオリックス・バファローズの佐野皓大選手だ。昨年の名場面をまとめた動画とともに佐野選手の魅力に迫る。
爽快で美しいスライディングに注目
野手転向3年目だった昨年。シーズン前半は主に代走の切り札として起用された。その期待に応えるように開幕から盗塁を成功させ、なんと17盗塁目まで成功率100%と活躍。9月に入ると、昨オフに断念したスイッチヒッターに再び挑戦し、シーズン終盤の10月以降は「1番センター」でスタメン出場の機会を増やしていった。最終成績は打率.214とバッティングに課題を残すが、プロ入り最多の20盗塁(盗塁刺4)を記録している。
佐野選手の魅力は成功率の高い盗塁だけではない。際どい場面をものにする巧みなスライディングも見どころだ。足の速さ、瞬時の判断力を兼ね備えた2020年の好スライディングを振り返っていみよう。
まずは10月7日千葉ロッテ戦の3回表。ヒットで出塁した佐野選手は、続く福田周平選手のライト線への当たりで一気に三塁を陥れると、ライトのマーティン選手のファンブルを見逃さなかった。いったん緩んだ足取りは再加速。強肩が売りのマーティン選手の返球をかわしてホームへ滑り込んだ。佐野選手にぬかりなし。
続いては1番・佐野選手、2番・T-岡田選手が機能した10月23日の千葉ロッテ戦から。1回裏の犠飛、4回裏のタイムリーヒットといずれもT-岡田選手が佐野選手を還す形で得点した。どちらの場面もライトの福田秀平選手が好返球を見せるが、佐野選手は針の穴を通る糸のごとく、スルッとかいくぐる。ちなみに、打ったT-岡田選手はこの日のヒーローインタビューで「なんとかバットに当てたら還ってくれると思ったんで…… 佐野さまさまです」と白い歯を見せていた。
最後に11月4日楽天戦の8回裏。6対6の同点で迎えた2死1、2塁の場面、モヤ選手の一、二塁間への当たりで二走・佐野選手は当然のように生還した。内野安打でホームインというギリギリのプレーのはずなのに、捕手をかわしてベースを左手で触る冷静さ。「神走塁」の表現が大げさにならないプロのプレーだった。
182cm、73kgの手足がすらっとした体型にオールドスタイルの着こなしもあって、佐野選手が駆ける姿には美しさも感じられないだろうか。屈指のスピード、大きなストライド、相手をさらっとかわすスライディング。一芸に秀でた佐野選手がレギュラーに定着できれば、低迷脱却を目指すオリックスにとって大きな戦力になる。『盗塁王』の周東選手を脅かすほどのブレイクを期待したい。
文・菊地綾子
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