山本由伸、平良海馬、安田尚憲…… チームの将来を左右する若手選手に注目

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オリックス・山本由伸投手(左)埼玉西武・平良海馬投手(右)(C)パーソル パ・リーグTV
オリックス・山本由伸投手(左)埼玉西武・平良海馬投手(右)(C)パーソル パ・リーグTV

 若手選手の成長が球団の将来を左右するといっても過言では無い。2020年も多くの若手選手が活躍し、「ブレイク候補」として名を挙げた。今回は各球団の23歳以下、いわゆる「U‐23」で一軍出場を果たした選手に焦点を当てて、彼らの今季の活躍を振り返っていきたい。

「うず潮カーブ」が売りのドラフト1位ルーキー・河野竜生投手は12試合に先発。プロ初登板となった6月24日の楽天戦では、勝利投手の権利まであと一つという5回2死の場面で浅村栄斗選手に逆転弾を許し、プロの洗礼を浴びた。1年目のシーズンを飛躍の糧とし、「左のエース」に名乗りをあげたい。

 22歳の堀瑞輝投手は、プロ入り4年目にして初の開幕一軍入りを果たすと、中継ぎとしてブルペン陣を支えた。対左打者の被打率.163をマークした若き左腕のさらなる成長に注目だ。

 高卒2年目の吉田輝星投手は、ファームで12試合3勝3敗60奪三振、防御率2.56と好投し『最多奪三振』に輝くも、一軍では防御率8.41と苦しんだ。2021年は先発ローテーション入りに期待したい。

 高卒3年目の北浦竜次投手は、今季初登板となる8月14日の試合では、0.1回6安打5失点(自責点4)と千葉ロッテ打線に打ち込まれノックアウト。11月には2試合に登板してそれぞれ1失点と、一軍では本来の投球を見せられなかった。しかし、ファームでは唯一の防御率1点台を記録し完封勝利も挙げているように、そのポテンシャルは高い。

「右の大砲候補」として期待されている20歳の野村佑希選手は開幕スタメンで一軍デビューを飾ったものの、7月の試合中に右手小指を骨折。手術の影響もあり、試合出場は21試合のみとシーズンを通しての活躍はならなかったが、得点圏打率.357を記録し、復帰後の11月は19打数8安打1本塁打10打点、打率.421と本領発揮。万全な状態で開幕を迎え、1年を通しての活躍に期待したい。

 高卒4年目の清宮幸太郎選手は自己最多の96試合に出場、3年連続7本塁打を記録したが、打率.190、得点圏打率.143と持ち味の打撃を十分に生かしきれなかった。2021年は同学年の千葉ロッテ・安田尚憲選手や東京ヤクルト・村上宗隆選手らに負けない活躍を見せられるか。

 大卒ルーキーの津留崎大成投手は33試合に登板。北海道日本ハム戦では、8試合7回28打数4安打無失点、防御率0.00と好相性を発揮した。被打率.317と打ち込まれた左打者を攻略し、勝ちパターンの一角となれるか。

 高卒5年目の藤平尚真投手は、7月26日に今季初登板初先発をしたがわずか7球で危険球退場を受け、一軍での登板はその1試合のみに終わった。注目の2020年ドラフト1位の早川隆久投手と切磋琢磨し、高みを目指したい。

 23歳の村林一輝選手は、イースタン2位の70安打をマーク。ファーム日本選手権では5打数4安打2打点の活躍でMVPを獲得し、チームをファーム日本一に導いた。ここ数年は一軍での活躍から遠ざかっているだけに、一軍に定着したい。

 高卒ルーキーの黒川史陽選手は二軍で安定した成績を残し、球団初のファーム日本一に貢献。一軍では10試合に出場し、9月4日の試合では球団高卒新人初の初打席初打点を記録し話題を集めた。「ポスト浅村」とも評される期待の星に期待がふくらむ。

「剛腕セットアッパー」として『新人王』に輝いた高卒3年目の平良海馬投手は、リーグ2位の33ホールドを記録。また、リーグトップタイの54登板とシーズンを通してブルペンを支え、「強心臓」と呼ばれるその勝負強さでチームの危機を幾度と無く救った。

 ドラフト2位ルーキーの浜屋将太投手は、中継ぎとしてデビューするも、シーズン途中で先発に転向。9月16日の千葉ロッテ戦で初先発初勝利を挙げ、以降は先発ローテーションの一角を担い8試合に先発した。先発・中継ぎで経験を積んだなかで見つかった課題を今季の飛躍につなげたい。

 開幕一軍入りを果たした22歳の鈴木将平選手は、金子侑司選手が離脱した期間に「1番・中堅手」を務め、7月11日にはプロ初本塁打を放つなど存在感を示した。しかし、徐々に調子を落とすと9月に右足首を負傷し戦線離脱する悔しいシーズンとなった。2021年は大卒の同学年がプロの門をくぐり一層熾烈となるレギュラー争いを制することができるか。

 ドラフト5位ルーキー、23才の柘植世那選手は2006年以来となる新人捕手の開幕一軍を勝ち取ると、初先発マスクを被った8月27日の試合では、プロ初本塁打を放ち打撃面もアピール。森友哉選手、岡田雅利選手など熟練した先輩捕手がそろう埼玉西武で柘植選手がどのような成長をみせるか楽しみだ。

 高卒2年目の古谷拓郎投手は鷹との首位攻防戦でプロ初登板を果たし、3回15打者3安打5奪三振、1失点と粘り強い投球を披露。しかしプロ初先発のオリックス戦では制球力に欠き3回途中2失点で降板。来季は地元でもある千葉・ZOZOマリンスタジアムでプロ初勝利を挙げたい。

 2019年にイースタン三冠王に輝いた高卒3年目の安田尚憲選手は、87試合に4番として出場したものの、打率.221と決して奮ったシーズンではなかった。しかし、「パーソル CS パ」では9打席4安打4打点の大活躍。千賀滉大投手からパ・リーグ史上最年少CS弾を放つなど、2021年につながる活躍を見せた。持ち前の長打力を高めて「不動の4番」を手にできるか。

 高卒2年目の藤原恭大選手は思わぬ形で巡ってきた一軍のチャンスをしっかりとものにした。持ち前の身体能力を生かし、走攻守で猛アピール。「パーソル CS パ」では2番として出場し8安打3安打、史上最年少猛打賞を記録するなど存在感を放った。豪快なフルスイングを見せる「スター候補」が一軍レギュラー奪取を虎視眈々と狙う。

「打てる捕手」として期待が寄せられていた22歳のドラフト2位・佐藤都志也選手は、プロ初安打初打点がサヨナラ打という鮮烈なデビューを飾った。代打や指名打者での出場が中心ながら、得点圏打率.143とチャンスで凡退する姿が目立っただけに、課題を克服してレギュラーの座をつかみたい。

 育成出身・21歳の和田康士朗選手は、支配下登録1年目にしてリーグ3位の23盗塁を記録し、代走の切り札として印象に残る活躍を見せた。走力をより生かすためにも打撃を磨いて出場機会を増やしたい。

 いまやリーグを代表する投手となった高卒4年目の山本由伸投手。2年連続の最優秀防御率は惜しくも逃したものの、『最多奪三振』のタイトルを獲得した。シーズン終盤にはコンディション不良で登録抹消をされたこともあり、2021年は万全な状態で1年を戦ってほしい。

 高卒5年目の吉田凌投手は、シーズン途中に一軍昇格すると、8月15日の登板で待望のプロ初勝利をマーク。北海道日本ハム、楽天、千葉ロッテ、相手には防御率0.00を記録しているなど、キレのあるスライダーを武器に安定した好投を続けた。キャリアハイの成績を残した2020年の経験が、プロ6年目のシーズンに弾みを付けるだろう。

 高卒ドラフト1位ルーキーの宮城大弥投手はファームで『最多勝』を獲得。10月4日に一軍デビューを果たすと、本拠地最終戦の11月6日に5回117球7安打7奪三振3四球3失点の内容でプロ初勝利を挙げた。山本由伸投手や山岡泰輔投手など若手投手が活躍するオリックスで、「エース候補」として名を挙げられるか。

 宮城投手と同じく高卒1年目の紅林弘太郎選手は、二軍で経験値を高めた。ウエスタンでトップの試合数・打席・打数を記録、安打数も3位に位置するなど、ルーキーながら存在感を放った。一軍初昇格を遂げた11月3日には先発出場し、球団31年ぶりの高卒新人初打席初安打を記録。11月6日には決勝タイムリーを放ち、同期の宮城大弥投手を援護した。

 22歳の杉山一樹投手はウエスタントップと0.02差で3位の防御率2.55をマーク、一軍でもリリーフとして活躍。日本シリーズでは2戦目に登板し、193cmの長身から繰り出す剛速球で巨人打線をねじ伏せた。2021年は開幕一軍を勝ち取り、シーズンを通して活躍を見せたい。

 高卒4年目の三森大貴選手は一軍では24試合43打数7安打、打率.163と本来の力を発揮することができなかったが、ウエスタンで首位打者・最高出塁率の二冠を獲得。ファーム日本選手権ではダメ押し2点適時打を放ち、チームを日本一に導いた。来年こそは一軍でそのポテンシャルを発揮したいところ。

 高卒5年目の川瀬晃選手はキャリア最多の70試合に出場するも、3年連続の打率1割台と打撃が奮わず。一方守備ではファインプレーを連発し、幾度となくチームのピンチを救った。弟の川瀬堅斗投手は2020年育成ドラフト1位でオリックスに入団。一軍の舞台での兄弟対決が実現する日が楽しみだ。

 埼玉西武や千葉ロッテのように若手選手が一軍で活躍したチームもあれば、福岡ソフトバンクや楽天のように二軍で経験を積んでいる選手が多いチームもあった。ドラフトを騒がせた「甲子園のスター」にも立ちはだかるプロの壁。一軍の座、ましてやレギュラーをつかむことがそう簡単なことではないからこそ、一軍で奮闘している若武者達に心を奪われる。2021年もチームの行方を占う各球団の若手に注目してほしい。

文・下村琴葉

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