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中継ぎ陣に衝撃の160km/h右腕が2人。必勝リレーを確立するも先発陣は課題を残す【埼玉西武ライオンズ2020:投手編】

2020.12.30(水) 12:00 パ・リーグ インサイト 吉田貴
埼玉西武 シーズンレビュー2020 vol.1(C)パーソル パ・リーグTV
埼玉西武 シーズンレビュー2020 vol.1(C)パーソル パ・リーグTV

 リーグ3連覇を目標に掲げて望んだ2020年シーズンだったが、悔しい3位で今シーズンの戦いを終えた埼玉西武ライオンズ。終盤には2位・千葉ロッテに肉薄したものの、あと一歩及ばなかった。本記事は投手を中心とした前編、野手を中心とした後編に分けて、各選手にフォーカス。パーソル パ・リーグTVの特集動画「シーズンレビュー2020」とともに、埼玉西武の2020シーズンを振り返っていく。

☆「パーソル パ・リーグTV」特集動画「埼玉西武 シーズンレビュー2020」はこちらから!
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 チーム防御率で見れば、昨季の4.35に対して、今季は4.28と大きな変化は感じられないかもしれない。しかし、この成績をもう少し詳しく見てみると、リリーフは昨季の3.87から改善され、同3.46とリーグ3位の好成績。勝利数で見ても、昨季は1点差での勝利数が19だった一方で、今季は試合数の違いもある中で25勝と大幅に増加している。僅差の試合を勝ちきる力は、間違いなく向上したと言っていいだろう。

経験、成長、そして「ノーノー未遂」。期待通りのスケールアップを見せた高橋光成

 開幕投手を務めたのは「負けない男」のニール投手だったが、昨季からの連勝記録がついに「13」でストップ。本来の力を発揮できず、以降も苦しい投球内容が続いた。そこで先発陣を引っ張ったのが高橋光成投手だ。今季はプロ6年目で自身初の規定投球回に到達し、8勝8敗、防御率3.74の成績を残した。2年連続の2桁勝利には届かなかったが、先発の柱としてまた一回り成長したシーズンだった。

 昨季は長身から投げ下ろす直球を軸に、スライダーと決め球のスプリットを織り交ぜる投球スタイルだったが、今季は「カットボール」を加えてさらに進化。直球4割、スライダー・カットボールで2割強、スプリット3割程度で投球を構成し、時折目線を外すカーブを満遍なく投げ込んだ。特に、同じ球速帯のカットボールとスプリットがそれぞれの良さを互いに引き出し合っており、ここに球威のある真っ直ぐも加わって打者に的を絞らせなかった。

 開幕直後は5連敗を喫するなど不安定な投球が続いたが、9月以降は5勝2敗、4失点以上を喫したのは2試合と安定した投球を見せた。また、今季はカード初戦に登板する機会が多かったため、相手チームの好投手との対戦も数多く経験した。9月8日のオリックス戦では、球界のエース・山本由伸投手との投げ合いという状況の中で、8回まで無安打投球で2016年以来の完封勝利。さらに翌月6日の福岡ソフトバンク戦では、こちらも球界のエース・千賀滉大投手との投げ合いを7回途中無失点で制している。来年は開幕からローテーションをけん引し、エースとして自身2度目の2桁勝利を目指して欲しいところだ。

松本航はセットポジションへのフォーム変更が転機に

 松本航投手は、ルーキーイヤーの昨季は開幕直後に肺炎を発症して出遅れる悔しさを味わったが、今季はシーズンを通してローテーションを守った。勝利数は昨年の7勝から1つ減ってしまったものの、先発陣の一角として貢献したと言えよう。持ち味であるノビのある直球が投球割合の約6割を占め、そこにカットボールをはじめとした多彩な変化球を投げ込むスタイルは昨季同様だった。

 6月、7月と2カ月連続で防御率が5点台を超えていた松本投手は、西口コーチのアドバイスもあり、7月18日の楽天戦から投球フォームをワインドアップからセットポジションに変更。これが功を奏し、8月は白星はなかったものの防御率1.59、9月は同2.88で3勝0敗の好成績。特に9月13日の福岡ソフトバンク戦では7回121球無失点の力投を見せている。ただ、10月は防御率7.71と息切れをしてしまった。また、被本塁打19はリーグワーストタイの成績。こうした課題の改善を通して、来季はローテーションの柱としてさらなる飛躍を遂げてもらいたい。

豪腕助っ人ギャレットとフォークが武器の変則右腕・森脇亮介

 開幕から「勝利の方程式」の1人を任されたのは、新助っ人のギャレット投手だ。7月は9試合に登板して防御率0.00とまさに文句なしの成績を残し「8回の男」として君臨した。注目すべきはなんと言っても最速162km/hをたたき出してファンの度肝を抜いた豪速球だろう。8月以降はこの直球も痛打される機会も増え、シーズンを通してセットアッパーのポジションを守ることはできなかったが、10月以降は復調しただけに、来季のさらなる活躍に期待したい。また、来季は直球だけでなく、豊田コーチ直伝のフォークや、140km/hを超える超高速ナックルカーブ、カットボールなどのキレにもぜひ注目してほしい。

 ギャレット投手が調子を落とす中で頭角を現したのが森脇亮介投手だ。シーズン序盤では僅差のビハインドでの登板が中心ながら、防御率は1点台で推移するなど着実に好投を積み重ね、9月からセットアッパーに定着。直後に逆転するなど打線の援護もあり、チーム2位の7勝を挙げた。やや変則的な投球フォームから、140km/h中盤の直球、カットボール、そして切れ味抜群のフォークを投げ分けて打者を翻弄した。僅差の展開で先発投手から救援投手へと最初にバトンが引き継がれる7回は、試合の流れも変わりやすい。だが、47試合で防御率1.35と安定感が変わることはなかった。来季は、ギャレット投手との競争にも注目だ。

新人王・平良海馬は「直球良し・変化球良し・対鷹良し」の三拍子

 54試合、33ホールド、防御率1.87。この成績を見ると、平良海馬投手が昨季プロ初登板を果たした高卒3年目の投手であることを忘れてしまいそうになる。昨季「超新星」としてシーズン中盤に現れた右腕は、あっという間にブルペンには欠かせない存在となった。今季は、持ち味の弾丸のような速球で球団日本人史上最速の160km/hを計測。さらに直球だけでなく、シーズン中盤からは打者が思わずのけぞるような大きなスライダーなど変化球の精度も向上。楽天・小深田大翔選手とのデットヒートを制し、埼玉西武では2017年の源田壮亮選手以来となる『新人王』を受賞した。

 順位争いが激化する終盤の9月、10月には、いずれも月間防御率0点台と百点満点の投球を継続した。今季のパ・リーグ王者の福岡ソフトバンクとの相性も良く、9試合で防御率0.00、さらに被打率は驚異の.000を記録しており、上位チーム相手でもその実力は全く変わることがなかった。来季も福岡ソフトバンクとの激戦は必至であるだけに、このイメージを維持したいところだ。

増田達至は球団記録更新から初のセーブ王。名実ともに獅子の守護神へ

 守護神・増田達至投手は今季も安定感抜群だった。持ち味である空振りの取れる直球と、切れ味鋭い高速スライダーを武器に、48試合で防御率2.02、33セーブを挙げて自身初の最多セーブのタイトルを獲得。また、11月3日の北海道日本ハム戦では、豊田コーチの持つ球団セーブ記録を更新。球団史にもその名を刻むことになった。

 平良投手と同様に増田投手も福岡ソフトバンクに対する相性がパ・リーグ5球団の対戦成績で最も優れており、9試合で防御率1.00、7つのセーブを記録している。試合を締めくくる重圧の中で48試合に登板し、1つも黒星を喫することなくシーズンを終えたことが何よりもその安定感を示している。12月4日にFA権を行使した上でチームに残留することを発表。獅子の守護神が、来季も9回のマウンドへ向かう。

昨季81登板の平井克典はプロ初先発も。勝利の方程式を支えた救援陣

「勝利の方程式」以外の投手の活躍も光った。平井克典投手は、昨季81登板と大車輪の活躍を見せた影響もあってか、今季は41試合で防御率4.18と悔しさの残るシーズンだったかもしれない。だが、8月20日のオリックス戦ではプロ初先発登板でいきなり白星を挙げると、それ以降もローテーションの谷間で先発するなど、昨季とはまた違った形でチームを支えた。伝家の宝刀・スライダーは被打率1割台と今季も健在だっただけに、オフに挑戦している先発転向の行方も見守りたい。

 また、宮川哲投手も150km/h近い直球とパワーカーブを軸に49試合に登板し、防御率3.83とドラフト1位ルーキーとしての期待に応えた。満塁時の被打率は.176を記録し、厳しい社会人野球を戦い抜いたマウンド度胸を示した。来季のさらなる飛躍にも期待がかかる。加えて、38試合で防御率2.10を記録した小川龍也投手の活躍も忘れてはならない。今季、救援陣で30試合以上に登板した左腕は小川投手のみ。僅差、ビハインド問わずに、ブルペンを支えた。

 さらに、田村伊知郎投手の活躍にも触れておきたい。今季はアマチュア時代から魅力的だった直球に加え、プロ入り後に習得したシュートなどを駆使したボールを小さく動かす投球スタイルで登板機会をつかんだ。主にビハインドでの登板が中心だったが、プロ4年目の今季は31試合に登板し、防御率3.95とキャリアハイの成績を記録。来季のさらなる活躍に期待したい。

浜屋将太、與座海人のフルシーズンの活躍に期待。そして待たれる「背番号11」の復調

 救援陣が活躍を見せた一方で、先発の防御率は依然として4点台が続く状況だ。来季の浮上のためには、高橋光成投手、松本投手に続くローテーションの柱となる投手が不可欠と言えよう。そこで最後に、来季に向けて期待を寄せる投手について取り上げたい。

 まずは、同級生の今井達也投手と浜屋将太投手の2人だ。今井投手は今季の練習試合で自己最速の155km/hをマークしたものの、開幕後は制球難に苦しんだ。試合ごとにフォーム修正を繰り返し、一時はリリーフとしてもマウンドに立ったが、61.2回で与四死球57と改善されず。それでも常時150km/hを計測する直球と、切れ味抜群のチェンジアップからも分かるように、潜在能力の高さは言うまでもない。

 一方の浜屋投手は、9月16日の千葉ロッテ戦でプロ初先発初勝利を記録すると、それ以降はローテーションに定着し、ルーキーながら3勝を挙げた。ただ、防御率4.95とまだまだ改善の余地はある。貴重なサウスポーの先発として、来季は開幕からの活躍に期待したいところだ。

 サブマリンの與座海人投手は、トミー・ジョン手術を乗り越え、今季から支配下登録となると、オープン戦で好投してローテーション入り。開幕当初は好投しながらも結果がついてこなかったが、7月23日の千葉ロッテ戦でプロ初勝利を挙げた。ただ、夏場以降は調子を落とし、登録抹消以降は再昇格はならずに2勝止まり。下手投げの選手は希少な存在ではあるが、パ・リーグには福岡ソフトバンク・高橋礼投手や、楽天・牧田和久投手など実績のある選手の活躍も目立つ。與座投手も、再び先発ローテーションの定着を目指して欲しい。

 こうした若手の先発投手に加えて、チームには榎田大樹投手や、今季移籍後初勝利を挙げた内海哲也投手などのベテラン先発陣も控えている。さらには、今季悔しい投球が続いたニール投手の巻き返しにも当然ながら注目だ。来季は若手、中堅、ベテラン、そして助っ人と、個性豊かな投手が1人でも多く活躍する見応えのある投手陣に期待したい。

文・吉田貴

【ライオンズシーズンレビュー2020:野手編】はこちら

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