安田は「オリックスの吉田正のような選手になっていくのでは」
今年のプロ野球は新型コロナウイルスに翻弄されたが、その中でも、2021年に一気にブレークしそうな若手たちが芽吹いていた。かつて千葉ロッテの守護神に君臨し「幕張の防波堤」の異名を取った小林雅英氏に、2021年シーズンで期待したい若手を挙げてもらった。
小林雅氏がその筆頭として名前を挙げたのが、千葉ロッテの後輩である安田尚憲内野手。「久しぶりに“ミスター・千葉ロッテ”になれそうな選手が出てきた」と推した。千葉ロッテの井口監督は今季、21歳の安田を7月21日の埼玉西武戦以降から86試合連続で4番に据えた。埼玉西武、楽天との2位争いが佳境を迎えた11月になって、4番を清田に譲ったのは残念だったが、この1年で得た経験は貴重で三塁守備にも上達が見られた
小林雅氏は「ブレずに我慢して使い続けた井口監督が1番すごかった」といい「今年は1打席、1球で周囲の目がこんなに変わるのかと、痛感したことだろう。ネット上のファンの書き込みやマスコミの報道が、いかにコロコロ変わるものであるか、1年間試合に出続けてみないとわからない。自分を見失わず、周りの評価をいい意味で無視できることが大事になる」と安田へエールを送った。
「自分を磨いていけば、“ミスター・千葉ロッテ”になれるのではないか。僕が知る限り、過去にミスター・千葉ロッテと呼ばれたのは、有藤通世さんと初芝清さんの2人。長嶋茂雄さんや掛布雅之さんもそうであるように、“ミスター”にはサードのポジションが似合う」とし、「本塁打を30本も40本も打つタイプではない。福岡ソフトバンク・柳田、埼玉西武・山川、中村と違い、そこまで打球に角度はつかないが、打点や二塁打が多いオリックスの吉田正のような選手になっていくのではないか。勝負強い打者になってほしい」と期待した。
今季2年目の藤原は「歴代の名センターに近づける潜在能力の持ち主」
同じ千葉ロッテでは20歳の藤原恭大外野手もチャンスをつかんだ。新型コロナウイルスの集団感染による1軍選手の大量離脱をうけて10月6日に2軍から昇格。26試合で打率.260、3本塁打10打点をマークし、1番での起用は20試合を数えた。小林氏は「走攻守トータルで高いレベルにある。歴代の名センターに近づける潜在能力の持ち主。あとは“野球脳”。つまり考え方や取り組み方次第」と評価した。
福岡ソフトバンクの栗原陵矢捕手も6年目の今季、持ち前の打撃を武器に台頭。日本シリーズでは打率5割でMVPを射止めた。捕手登録だが、打力を生かすために右翼や左翼、一塁とほぼ野手での出場だった。小林雅氏は「セールスポイントは打撃だが、来季は捕手として甲斐に挑戦するのか、外野や一塁でレギュラーを固めに行くのか、まずはそこに注目したい」と言う。
一方、投手では埼玉西武の最速160キロ右腕で新人王に輝いた21歳の平良海馬投手、中日の22歳・藤嶋健人投手の躍進に期待する。平良については「今季投げ過ぎている(リーグ最多タイの54試合登板)ので、来年以降パフォーマンスを維持できるのか少し心配」。藤嶋に関しては「彼の投げっぷりが大好き。表情豊かで闘志が前面に出る“昭和の投手”という感じ」と称賛。昨年1月下旬に右手の血行障害を発症したが、今季26試合に登板し1勝0敗3ホールド1セーブと存在感を示した。
最速163キロ右腕として、岩手・大船渡高から鳴り物入りで入団した千葉ロッテのドラフト1位ルーキー佐々木朗希投手は体づくりを優先し、1、2軍を通じ公式戦登板なしに終わった。同氏は「“牛歩”でいいと思います。来年も開幕1軍にはこだわらず、ファームである程度登板してから、シーズン中盤以降に昇格し、1軍で10~15試合で投げられればいいのではないか」とした。成長途上の大器を開花させるには、焦りは禁物だ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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