独特の緊張感が漂うPayPayドームで迎えた「2020 パーソル クライマックスシリーズ パ」第1戦は、両チームの執念がぶつかり合い終盤までもつれた結果、福岡ソフトバンクが逆転勝利。これでアドバンテージを含めて2勝とし、「SMBC日本シリーズ2020」進出へ王手をかけた。
福岡ソフトバンク先発の千賀滉大投手は、2回表に安田尚憲選手の2ランで先制を許すと、5回表にも追加点を与える苦しい展開に。しかし中盤以降は要所を締め、6回まで3失点に抑える粘投で援護を待つ。すると6回裏にデスパイネ選手の適時打や敵失策も絡み、同点に追い付いた。
試合を振り出しに戻した福岡ソフトバンクは、7回表を千賀投手、8回表をモイネロ投手が無失点に抑え、守備からリズムをつくる。そして迎えた8回裏、千葉ロッテの5番手・澤村拓一投手から、2つの四球と安打で2死満塁のチャンスを作り、打席には甲斐拓也選手。
甲斐選手は2点を追う5回裏、無死1、2塁の場面でスリーバントを失敗。自身のミスが響いてその回は無得点と、苦杯を嘗めていた。もちろん、打ってミスを取り返したいという気持ちがあっただろう。
この日の澤村投手のストレートは最速159km/hをマークするなど走っており、ここまで投じた全16球の内、10球が直球。甲斐選手の頭はストレート一本だった。
初球、アウトコースのストレートを強振しファール。157km/hのストレートにやや差し込まれた。カウント1-1からの3球目は158km/hの高めに浮いたボール球のストレートを空振り。
追い込まれた甲斐選手はここで意識を変える。外野フライでは点が入らないこの場面、バットを短く持ち、足のあげ方も低くしてコンタクト重視に切り替えた。カウント2-2からの5球目はそれまでの強振から一転、この打席初めての変化球を「気持ちで打った」と、地面にたたきつけるスイングで振り抜き、一目散に一塁ベースへ。気迫のヘッドスライディングを見せると判定はセーフ。泥臭くつかみ取ったこの1点が決勝点となり、勝利を手繰り寄せた。
最後までどちらに転ぶか分からず手に汗握る展開となったこの一戦。惜しくも敗れた千葉ロッテも、攻守にわたり素晴らしいプレーが数多くあった。連勝で福岡ソフトバンクが一気に決めるか、背水の千葉ロッテが食らいつくか。明日の第2戦も熱戦が期待できそうだ。
文・小野寺穂高
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