2020年シーズン、千葉ロッテは思わぬ戦線離脱に悩まされた。種市篤暉投手、レアード選手、荻野貴司選手、福田秀平選手など、チームの主軸を担う選手たちが次々にけがに見舞われ、さらに首位・福岡ソフトバンクとの決戦直前には、新型コロナウイルスがマリーンズを襲った。
主力が不在であったなかでも、3位・埼玉西武と「1.5」ゲーム差(11月2日試合前時点)と奮闘し、未だCS出場ラインの2位に着けている千葉ロッテ。苦しいチーム状況ではあったが、若手と助っ人が穴を埋める活躍を見せた。
驚異の俊足で名をはせた和田康士朗
今季も1番打者としてチームをけん引していた荻野貴司選手が、7月22日の試合中に右太ももを負傷。同じ外野手の福田秀平選手は7月23日に右肩甲骨の亀裂骨折から復帰するも、8月29日に右恥骨筋の筋損傷により、再び登録抹消。荻野選手と福田選手の離脱で、外野陣が危機的状況に追い込まれた。
そんななか、今季支配下登録をつかみ取った和田康士朗選手が、持ち前の「俊足」で心配を吹き飛ばした。初スタメンで1番を任された8月16日の試合では、5打数3安打3盗塁という圧巻の成績でファンを驚かせ、「和田康士朗フィーバー」を引き起こす。現在は代走出場が多いなか、11月2日時点で22盗塁をマーク。俊足ぞろいのパ・リーグで3位の盗塁数を記録している。
しかし、新型コロナウイルスにより、和田選手を含む13選手が登録抹消。また、チームの主砲・レアード選手が8月に腰痛で離脱し、治療のために一時帰国。リーグ優勝へのラストスパートという時期に主力が欠けてしまう事態に陥ったが、そのまま勢いをなくす千葉ロッテではなかった。
主力の穴を埋めた若手たちに『プロ初』が生まれた10月
プロ2年目の藤原恭大選手は、10月9日の福岡ソフトバンク戦に「1番・左翼手」で先発出場。プロ初の猛打賞を記録する活躍で、リードオフマンとして勝利に貢献した。10月14日には、楽天・涌井秀章投手からプロ初本塁打となる先頭打者本塁打を放ち、秘めたパワーを見せつけた。その豪快なスイングに心を踊らせた方も多いのではないだろうか。
ドラフト3位ルーキーの高部瑛斗選手は、途中出場した10月9日にうれしいプロ初安打を記録。また、今季楽天から移籍してきた21歳の西巻賢二選手は、10月9日から4試合連続安打を放って猛アピールした。
中堅も負けてはいない。マーティン選手は25本塁打でランキング4位に座り、レアード選手に代わる主砲として得点を量産。鋭い送球で走者を刺すなど好守備も連発し、攻守でチームに貢献している。
予想外の離脱がブルペン陣を苦しめる
投手陣では種市篤暉投手の離脱が痛手だった。8月2日に右肘の違和感で一軍を離れると、9月14日に「トミー・ジョン手術」を受けたことが発表された。背番号を「16」に変更し、先発ローテーションの勝ち頭として期待されていただけに、種市投手の不在の衝撃は大きかった。
救援陣も窮地に立たされた。勝利の方程式の一角を任されていたジャクソン投手が突然の退団。加えて21ホールドを記録しブルペン陣を支えたハーマン投手が9月中旬に故障離脱。苦しい投手運用が続くなか、移籍してきた新戦力たちが投手陣をけん引した。
楽天からFAで移籍した美馬学投手は、11月2日時点でリーグ4位タイの9勝を挙げ、チームの勝ち頭として力投を続けている。福岡ソフトバンクに対しては6試合で4勝をマークするなど、鷹キラーとして名高い美馬投手。CSで待つリーグ王者を攻略するために重要な存在だ。
9月に加入した澤村拓一投手の活躍も大きい。2020年移籍前は、13試合で1勝1敗1ホールド、防御率6.08という成績だったが、移籍後は18試合で0勝2敗11ホールド1セーブ、防御率2.04と新天地で本来の投球を取り戻している。リーグ優勝を4度経験している澤村投手。その力強い投球が、日本一に駆け上がるための鍵を握っている。
10月には、中日と大リーグで豊富な経験を積んだチェン・ウェイン投手が加わり、10月13日に9年ぶりのNPB登板を果たした。援護に恵まれず初勝利は挙げられていないものの、3試合で0勝2敗1完投、防御率2.25、3試合連続QS中と好投を続けている。負けられない戦いが続くなか、ベテラン左腕がチームに与えるインパクトは大きい。
若手投手たちも大奮闘を見せている。プロ2年目の小島和哉投手は、先発ローテーションの一角を担い、19試合で7勝8敗、防御率3.64と力投を続けている。高卒2年目の古谷拓郎投手は、10月10日の首位攻防戦という大場面で一軍デビュー。2番手として3回1失点の内容だったが、強打者がそろう福岡ソフトバンクを相手に5つの三振を奪ったことは、今後大きな自信となるはずだ。
シーズンも残りわずか。背後に迫る埼玉西武・楽天から2位の座を死守するためには
徐々に選手たちが一軍復帰を果たし、本来の戦力に戻ってきている千葉ロッテ。1974年以来、46年ぶりの勝率1位を目指して奮闘を続けていたが、打線が不振にあえぎ、今年も優勝を目の当たりにするという屈辱を味わった。10月21日には打線の核を担っていたマーティン選手が負傷離脱するなど、シーズン終盤にも不安要素が絶えない。
シーズン57勝のうち28勝が逆転勝ちと、リーグ随一の勝負強さを持ち合わせている千葉ロッテだが、現在はその勝負強さが影に隠れている。しかし、主力の離脱が相次いだなかで新戦力の活躍が光ったことは、今後の試合でプラスに作用するだろう。チームの総力を注ぎ込み、背後に迫る埼玉西武と楽天を突き放してCS進出を決められるか。また、日本一への道に立ちはだかる強敵・福岡ソフトバンクを突破できるか。逆転の千葉ロッテによる再びの「下克上」に期待したい。
文・下村琴葉
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