遅れての開幕とはなってしまったものの、昨年に引き続き日々熱戦が繰り広げられている2020年のパ・リーグ。昨季より23試合も少ない短期決戦のシーズンとなるだけに、そろそろ本格的に気になるのが「タイトル争い」だろう。今回注目するのは「首位打者」と「本塁打王」の2つだ。まずは、過去5年間のパ・リーグ首位打者と本塁打王について見てほしい。
過去5年間の首位打者
2015 柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)
2016 角中勝也選手(千葉ロッテ)
2017 秋山翔吾選手(埼玉西武)
2018 柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)
2019 森友哉選手(埼玉西武)
過去5年間の本塁打王
2015 中村剛也選手(埼玉西武)
2016 レアード(北海道日本ハム)
2017 デスパイネ(福岡ソフトバンク)
2018 山川穂高(埼玉西武)
2019 山川穂高(埼玉西武)
この表から見ての通り、首位打者は左打者、本塁打王は右打者が獲得する傾向が強い。右打ちで首位打者を獲得した選手は2011年の内川聖一選手(福岡ソフトバンク)、左打ちで本塁打王を獲得した選手は2010年のT-岡田選手まで遡らなくてはならない。そうなると、気になるのは「右の首位打者」と「左の本塁打王」だ。
過去10年間の「右の首位打者」(カッコ内は同年のタイトル獲得者)
2010 今江敏晃(西岡剛※両打ち)
2011 内川聖一(タイトル獲得)
2012 中島裕之(角中勝也)
2013 今江敏晃(長谷川勇也)
2014 内川聖一(糸井嘉男)
2015 清田育宏(柳田悠岐)
2016 浅村栄斗(角中勝也)
2017 浅村栄斗(秋山翔吾)
2018 浅村栄斗(柳田悠岐)
2019 荻野貴司(森友哉)
打率に関しては、内野安打などで出塁のしやすい左打者の方が有利という見方もできる。しかし、そんな中で過去3度も右打者で最高の打率を残している浅村栄斗選手の存在は要注目だ。過去10年間で左打者では角中勝也選手と柳田悠岐選手がそれぞれ2度ずつ首位打者を獲得しているが、3度獲得した選手はいない。浅村選手は打率だけでなく、長打力や打点でもリーグ屈指の好成績を残していることを考えれば、まさに球界を代表する右打者と言えるだろう。
では、今季の「右打ちの首位打者」を獲得できる可能性のある選手は誰だろうか。10月13日時点で打率ランキングトップ10に入っている選手は大田泰示選手、浅村栄斗選手の2人だ。惜しくも次点・11位の渡邉諒選手は、「直球破壊王子」の異名の通り、圧倒的なストレートへの強さを見せ、160キロの豪速球をタイムリーにする場面も見られた。昨季の右の首位打者である荻野選手の打率は.315だ。果たしてこのハードルを超える選手は現れるのか注目したい。
過去10年間の「左の本塁打王」(カッコ内は同年のタイトル獲得者)
2010 T-岡田(タイトル獲得)
2011 T-岡田(中村剛也)
2012 ホフパワー(中村剛也)
2013 長谷川勇也(アブレイユ)
2014 T-岡田(メヒア&中村剛也)
2015 柳田悠岐(中村剛也)
2016 大谷翔平(レアード)
2017 柳田悠岐(デスパイネ)
2018 柳田悠岐(山川穂高)
2019 吉田正尚(山川穂高)
現在、「左打者最後の本塁打王」となっているT-岡田選手は、翌2011年にも左打者としては最多の16本の本塁打を放ち、2014年には24本塁打を放っている。過去9年間にわたって誕生していない左打ちの本塁打王ではあるものの、近年は左打者でも長距離砲が続々と台頭してきている。
その流れを牽引するのは、やはり柳田悠岐選手だろう。柳田選手は2度の首位打者も獲得しているだけに、本塁打王との同時獲得も十分射程圏内。今季は、実況が思わず声を挙げてしまうような逆方向への「衝撃弾」でもファンを驚かせている。福岡ソフトバンクで左の本塁打王が誕生するとなれば、前身となるダイエー時代の松中信彦氏以来だ。
一方で、千葉ロッテ・マーティン選手も本塁打を量産中だ。昨季は途中入団ながらも14本塁打をマークしてチームの長打力向上に貢献。今季は8月だけで10本塁打を記録する猛スパートで、すでに24本塁打を放っている。チーム最後の本塁打王達成者は、1986年の落合博満氏まで遡らなくてはならない。マーティン選手の本塁打は、単に「左打者」というだけではない重みを持っていると言えるだろう。
10月13日現在で本塁打ランキングトップ10に入っている左打者は柳田選手、マーティン選手、栗原陵矢選手、T-岡田選手、吉田正尚選手、スパンジェンバーグ選手の6人だ。福岡ソフトバンクの栗原選手は巧みなバットコントロールが印象的だが、ジャストミートした際にはスタンド上段まで運ぶ長打力も持っている。タイトル争いはシーズン終盤までもつれそうだ。吉田正選手も昨季は左打者で最も多い29本塁打を放つなど実力は十分。今季は打率で他を圧倒しているが、一度量産体制に入れば一気に追い上げを見せる可能性も十分にあるだろう。
もちろん、ここにあげた選手の他にも「右打ちの首位打者」、「左打ちの本塁打王」を獲得する選手が登場する可能性は十分にある。残りのシーズン後半戦は、各球団の順位はもちろんのことながら、120試合で生まれる個人タイトルにも注目してみてはいかがだろうか。
文・吉田貴
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