6回決死の“マシンガン継投” 鷹・工藤公康監督の思惑と可能にさせた「7回の男」の存在

Full-Count 福谷佑介

2020.10.12(月) 10:55

福岡ソフトバンク・工藤公康監督※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)
福岡ソフトバンク・工藤公康監督※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

工藤監督の思い描いたプラン「6回だけ点を与えなければ」

■福岡ソフトバンク 3-0 千葉ロッテ(11日・PayPayドーム)

 福岡ソフトバンクが首位の座をガッチリと守った。11日に本拠地PayPayドームで行われた千葉ロッテとの首位攻防戦第3ラウンド。3回に中村晃の適時二塁打で先制すると、先発の和田が5回まで千葉ロッテ打線をわずか1安打に封じる好投。6回からは6人の投手を注ぎ込む執念の継投でリードを守り抜いた。

 3回に中村晃の適時二塁打を放って先制し、4回には松田宣の通算3000塁打を達成する9号ソロ、周東の適時内野安打でリードを広げた。先発の和田は5回までに4つの四球を与えたが、わずか1安打に封じて5回まで無失点と好投。この段階で和田の球数は93球。もう1イニング続投か、継投に出るか、工藤公康監督の決断は注目すべきポイントだった。

 指揮官が下した結論は継投だった。まず、和田が初回から飛ばしに飛ばしていたことが理由に挙げられる。「球数もありましたし、最初から飛ばしているのは分かっていたので100球くらいかなと思っていた。本人も下半身に疲労があったということで代えました」。残り4イニングをリリーフで凌ぐプランに移った。

 6回、まず右の泉圭輔をマウンドに送り、中村奨を中飛に打ち取る。左のマーティン、安田を迎えて嘉弥真新也を投入。左キラーはマーティンに四球を与えたものの、安田を遊ゴロに打ち取った。2死一塁で右の井上を迎えると、再び右の高橋礼にスイッチ。サブマリン右腕は見逃し三振で、この回を無失点で凌いだ。1イニングに3投手を注ぎ込む決死の“マシンガン継投”だった。

福岡ソフトバンク・岩嵜翔※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)
福岡ソフトバンク・岩嵜翔※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

3投手注ぎ込む継投を可能にさせた岩嵜翔の存在

 この試合で鍵となったこの6回。工藤監督は「6回が1つのキモというか、流れを断ち切らないといけないと思っていた。和田くんが良かっただけに、その後が大事だと思った。6回だけ点を与えなければ、という思いがありました」と、6回の継投策について語る。6回さえ無失点で凌げば、この試合は逃げ切れる――。そう考えて徹底的にリリーフを注ぎ込んだ。

 この継投を可能にしたのが、この日7回を任された岩嵜翔の存在だ。指揮官は「7回が決まるとリリーフの使い方は変わる。岩嵜くんの復調が大きい。7回は岩嵜くんにする予定でした」と明かす。開幕直後は不振だった右腕だが、10月2日の再昇格後は3試合連続で無失点リリーフ。この日も最速154キロの真っ直ぐと140キロ台前半のフォークを武器に1イニングを封じた。

 ここ最近は8回のモイネロ、9回の森に繋ぐ、7回のセットアッパーが固まらなかった。泉や高橋礼などが担ってきたが、やや不安定ではあった。2017年の最優秀中継ぎ投手の岩嵜が復調したことで、7回岩嵜、8回モイネロ、9回森の方程式が固まった。今季は延長10回まで、そして翌日が試合のない月曜日ということもあり、6回に3投手という決死のリレーが可能になった。

 千葉ロッテ打線に試合を通じてわずか3安打しか許さずに逃げ切った福岡ソフトバンク。今季初めて千葉ロッテに勝ち越し、その差を2ゲームに拡大させた。今季も残り22試合となり、千葉ロッテとの直接対決は6試合を残す。勝負の終盤戦に向けて、福岡ソフトバンクにとって、この1勝は大きな白星となりそうだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

記事提供:Full-Count

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Full-Count 福谷佑介

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