魅力度ランキング11年連続No.1の北海道が生んだ道産子選手たちがパ・リーグで活躍中!
日本の47都道府県のなかで最も面積が広い都道府県といえば、北海道である。総面積はおよそ8万3424平方キロメートルを誇り、関東地方の約2.5倍、本州と比べても約3分の1ほどとと、まさに「北海道はでっかいどう」なのである。そんな北海道だが、ただでっかいだけではない。民間調査会社のブランド総合研究所が2009年から行っている「都道府県魅力度ランキング」では、なんと11年連続で1位を獲得しているというのだ。たしかに、雄大な自然や、観光名所の数々、おいしいグルメもたくさんあって、魅力たっぷりというのもうなずける。
そんな魅力たっぷりの北海道出身の選手たちが、プロ野球という舞台でも奮闘中だ。現在、合計で28名(セ・リーグ8名、パ・リーグ20名、育成選手含む)の道産子たちが在籍している。今回は、その中から7名のパ・リーグ戦士たちをピックアップ。気軽に現地に行くことはできずとも、道産子たちの活躍を目に焼き付け、ぜひあなたも北の大地に思いを馳せてみてはどうでしょう。
中心地・札幌をホームとするあの球団では、3人の投手が躍動。なまら頼りになる「佐呂間の星」がブルペンを支える!
・玉井大翔投手(北海道日本ハム 28歳4年目 常呂郡佐呂間町出身)
玉井大翔投手は、16年のドラフト8位として北海道日本ハムに入団。下位指名ながら1年目から24試合、40試合と着々とキャリアを積み上げていくと、3年目の昨季にはチーム最多の65試合に登板。接戦時はもちろん、ピンチでの火消しや回跨ぎ、連投も辞さない大車輪の活躍でチームに貢献し、精神的にも肉体的にもタフなところを印象付けた。今季も開幕からあらゆる場面で起用されるなど、チーム2位の40登板は信頼の証だ。
そんな玉井投手の持ち味は、相手に立ち向かっていくピッチングスタイルである。マウンド上では常に冷静沈着なたたずまいを見せるが、内に秘めた闘志をたぎらせ、どんな相手だろうと真っ向勝負を挑んでいくのだ。8月8日には、チームが4点差をひっくり返した直後の8回裏、1点差、2死満塁というタフな場面で登場。この日2打点の外崎修汰選手を得意のシュートで詰まらせ、ピンチを脱すると、そのまま回を跨いで9回裏のマウンドに。見事3者凡退に切って取り、プロ初のセーブを記録した。常呂郡・佐呂間町が生んだ「佐呂間の星」は、プロの舞台で大空を翔けている。
・【動画】佐呂間の星・玉井大翔を忘れてはいけない
・杉浦稔大投手(北海道日本ハム 28歳7年目 帯広市出身)
ようやくというべきか、その恵まれたポテンシャルが開花しようとしている。杉浦稔大投手は、帯広大谷高校から國學院大學を経て、13年ドラフト1位で東京ヤクルトに入団。1年目から即戦力の期待を受けるも、開幕前に右肘靭帯を断裂し、わずか2勝。2年目は開幕から先発ローテーションに入るなど、新人王の最右翼ともみなされていたが、4月末に肘の違和感を発症し、結局1勝止まり。その後も主に右肩痛に悩まされ、東京ヤクルト時代は思うような成績を残せず。転機となったのは、17年7月の北海道日本ハムへのトレードだ。
北海道日本ハムに移籍してからは、不安の種である右肩・右肘痛と慎重に向き合い続けた。移籍2年目の18年に2勝を挙げると、昨季は先発→翌日に登録抹消→先発という「中10日以上」のサイクルで14試合に先発し、「6回以内、100球以下で交代」という徹底した登板管理でフルシーズンをケガなく戦い抜いた。今季は、開幕から主に「中6日」でローテーションの一角を担い、糸を引くようなストレートを武器に好投を続けている。7月30日には、移籍後最多の7回、111球を投げ切るなどスタミナも問題なし。玉井投手とともに、28歳の2人の道産子が、故郷で躍動する姿を見せている。
・【動画】杉浦稔大【糸を引くようなストレート】だけ まとめ
・福田俊投手(北海道日本ハム 24歳2年目 札幌市出身)
さらにもう1人、一軍の舞台でファイターズを支えている道産子がいる。福田俊投手は、横浜創学館高校から星槎道都大に進学すると、大学3年時の第48回明治神宮野球大会では、エースとして北海道勢初の準優勝に貢献。18年のドラフト7位でプロの世界に飛び込んだ。
ルーキーイヤーの昨季は、一軍での登板こそなかったものの、イースタンで51試合に登板。主に中継ぎとして68イニングで79奪三振と奪三振能力の高さを印象付けた。2年目の今季は7月5日に一軍昇格すると、キレのある真っ直ぐとスライダーを操り、小気味良いピッチングを披露。ここまで24試合に登板するなど、徐々にその存在感を示し始めている。
プロ初勝利を挙げた「左キラー」に、復活した元気印も。17年目を迎えたベテラン道産子はまだまだ健在!
・齋藤綱記投手(オリックス・バファローズ 24歳6年目 札幌市出身)
齋藤綱記投手は、北照高校から14年ドラフト5位で入団。オーバースローから繰り出される140キロ台中盤のストレートとスライダーを軸に、本格派左腕としてプロ生活をスタートするも、3年目までは思うような成績が残せなかった。
すると3年目のオフ、齋藤投手は大きな決断を下す。サイドスローへの転向である。当時、左のサイドスローがいなかったチーム事情もあるが、同期で同じくサウスポーの田嶋大樹投手の入団も大きな理由のひとつとなった。齋藤投手は、田嶋投手と同じ本格派左腕としてではなく、変則のサイドスローとしてプロの世界で生き残る道を選んだのだ。
18・19年と2年連続ウエスタンでは防御率1点台と結果を残し続けてきた齋藤投手。勝負の6年目として迎えた今季は、7月7日に一軍に昇格すると、主に左打者相手に起用され、安定した投球で登板数を重ねていく。7月31日の北海道日本ハム戦では、宇佐見真吾選手、中島卓也選手という左打者2人を得意のスライダーで2者連続三振封じ込むと、直後に味方が逆転し、うれしいプロ初勝利。現在まで25試合に登板、ホールドも3つ記録している。地元・札幌ドームで成長した姿を見せつけた。
・伏見寅威選手(オリックス・バファローズ 30歳8年目 千歳市出身)
オリックスからもう1人、紹介したい道産子がいる。
伏見寅威選手は、東海大四高校(現・東海大札幌高校)から東海大に進学。東海大では、1学年上の菅野智之投手(読売ジャイアンツ)とバッテリーを組むなど、正捕手として活躍し、12年のドラフト3位でオリックスに入団した。
プロ入り後は、バッティングの良さを生かし、一塁手や三塁手として起用されることが多かった伏見選手。6年目の18年は、夏場以降一塁手のレギュラーをつかみ、76試合で打率.274とともにキャリアハイの成績を残したものの、昨季6月に左足のアキレス腱を断裂する大ケガに見舞われてしまう。
一時は負担の大きい捕手での復帰が危ぶまれた伏見選手だが、2度の手術と厳しいリハビリを乗り越え、見事復活。今季は、開幕から持ち味の初球から思い切りよく振り抜けるバッティングでアピールすると、捕手としての出場も増加。9月29日に5号ソロを放ち、好リードの山本由伸投手と共にお立ち台に上がった。グラウンドに立たないときも、持ち前の明るさとチーム一の声量でベンチを盛り上げている。オリックスの元気印・伏見選手のバッティングとキャラクターに注目してみてほしい。
・川越誠司選手(埼玉西武ライオンズ 27歳5年目 札幌市出身)
異色の経歴を持つ道産子を紹介しよう。
川越誠司選手は、北海高校から北海学園大を経て、15年のドラフト2位で投手として入団。同大学はじめてのプロ野球選手である。入団当初は投手としてプレーしたものの、思うような結果を残せず、18年の9月から外野手に転向した。
この決断が、川越選手のたぐいまれなるポテンシャルを開花させることになる。昨季、まずはイースタンで8本塁打を放つと、オフに派遣された台湾のウインターリーグでは、打率.367、3本塁打、21打点で野手MVPに輝く活躍。勢いそのままに、2月22日の練習試合で千葉ロッテ・種市篤暉投手からチーム第1号を放つと、その後も思い切りの良いスイングに加え、元投手の経歴を生かした強肩で猛アピール。見事開幕一軍を勝ち取り、7月23日には、プロ初本塁打を記録した。所沢の地で生まれ変わった川越選手には、少しずつ光明が見えてきている。
・明石健志選手(福岡ソフトバンクホークス 34歳17年目 旭川市出身)
北の大地が生んだベテランの存在も忘れてはいけない。
明石健志選手は、野手では唯一ダイエー時代を知る今季17年目のベテランだ。内外野どこでも守れるユーティリティプレーヤーとして重宝される存在だが、今季は主に一塁手や外野手として起用され、しぶい働きを見せている。「天才的」とも称される打撃センスは健在で、低めの球を巧みなバットコントロールで操るのが得意な「ローボールヒッター」としてもおなじみだ。
また、明石選手といえばその身体能力の高さも折り紙付きだ。昨季4月25日のオリックス戦では、サヨナラ弾を放った際、秋山幸二さんを彷彿とさせるバック宙でのホームインで大観衆を沸かせた。試合後のインタビューでは、「秋山さんに憧れて、サヨナラ本塁打を打った時にはしたいと思っていた。16年間あたためていました」とパフォーマンスを振り返った。
・【動画】平成最後のヤフオクドームでホークス・明石健志が衝撃の……
今回は紹介しきれなかったが、他にも、福岡ソフトバンク・古谷優人投手(中川郡幕別町出身)、埼玉西武・武隈祥太投手(上川郡東神楽町出身)、楽天イーグルス・青山浩二投手(函館市出身)、オリックス・白崎浩之選手(岩見沢市出身)、千葉ロッテ・山本大貴投手(札幌市出身)など、バラエティーに富んだ道産子たちがたくさん。まるでうにやいくらなどのように、チームの中心として活躍する道産子たちはもちろんのことながら、スープカレーのように、チームにちょっとしたスパイスを加える道産子たちの働きぶりも見逃さぬようお願いしたい。
文・岩井惇
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