北海道日本ハム鶴岡慎也が模索する兼任コーチの在り方 改めて抱く恩師への尊敬の念

Full-Count 石川加奈子

2020.5.16(土) 20:05

北海道日本ハム・鶴岡慎也※写真提供:Full-Count(写真:石川加奈子)
北海道日本ハム・鶴岡慎也※写真提供:Full-Count(写真:石川加奈子)

昨オフの契約更改で漏らした印象的な言葉「今すごく尊敬しています」

 プロ野球開幕を心待ちにしながら北海道日本ハムの取材ノートを整理していたら、思い出深い言葉を再発見した。「F取材ノート~心に残ったあの言葉」として改めて紹介したい。今回は、コーチ兼任2年目を迎える鶴岡慎也バッテリーコーチ兼捕手だ。

「こんな複雑な心境で僕らにいろんなことを教えてくれてたんだなって。今すごく尊敬しています」

 昨オフの契約更改を終えた後で漏らした言葉が印象的だった。鶴岡が思いを馳せた相手は、07~15年の9年間北海道日本ハムでバッテリーコーチ兼捕手を務めていた中嶋聡オリックス2軍監督。若い頃に直接指導を受けた時には、その心情にまで思い至らなかったようだ。同じ立場になって初めて兼任コーチの難しさを実感し、惜しみなく技術指導してくれた恩師の偉大さを再認識した。

 中嶋氏がコーチ兼任になったのは07年、37歳の時だった。当時は29歳の高橋信二と26歳の鶴岡の2人が先発マスクをかぶっていた。中嶋は勝ちパターンの終盤に登場する“抑え捕手”として60試合に出場。シーズン後には連覇に貢献できた充実感とともに、選手としてもうひと花咲かせたいという趣旨の話をしていたと記憶している。

 実際には08年は22試合、09年は3試合と中嶋の出場機会は減っていき、代わりに台頭したのが鶴岡だった。08年に97試合に出場して正捕手への足場を固め、優勝した09年には122試合出場と主力に成長した。

選手とコーチの比重を問われ「選手10割、コーチ10割って感じ」

 コーチ兼任の中嶋を追い越してレギュラーをつかんだ鶴岡が、今度は恩師と同じ立場で悪戦苦闘している。鶴岡がテスト入団から這い上がる過程を見てきた者としては、感慨深いシチュエーションである。鶴岡がコーチ兼任になったのも中嶋と同じ37歳の時。兼任1年目の昨季は、前年から66試合少ない35試合の出場にとどまった。チームも5位に沈み、契約更改の席では選手としてもコーチとしても満足な仕事ができなかったことを球団に謝罪した。

 今、鶴岡が指導する清水優心は23歳、宇佐見真吾は26歳。中嶋が一回り下の鶴岡を育てたように、鶴岡も年の離れた若手育成が命題になる。

 中嶋の偉大さを実感した上で、鶴岡は自分なりの兼任のあり方を模索している。契約更改後の会見ではこんな話をしていた。「同じようなことをやろうとしたらできないので。僕は僕なりに彼らがこの後十何年と野球界で活躍するための手助けしたいと思う反面、『そう簡単には試合に出れないよ。お前ら隙見せたら俺がいつでも行けるよ』というプレッシャーを与えながらやっていきたいですね」。自らが高い壁となり続けることで、レベルアップを促すつもりだ。

 選手とコーチの比重を問われるとこう答えた。「(昨季)開幕前までは選手9割、コーチ1割ぐらいの比重でやるんだろうなと思っていましたけど、終わってみたら選手1割、コーチ9割ぐらいに逆転した感じでした。それがいいのか悪いのか別にして、やらないといけないことはチームが勝つために働くこと。僕が選手で試合に出ている時は選手としてチームが勝つためにいろいろ考えてやらなきゃいけないし、コーチとしてベンチにいる時は若いキャッチャーがちゃんと自分の実力を発揮できるようにサポートしていかなきゃいけない。選手10割、コーチ10割って感じですかね」。兼任2年目の鶴岡がどんな形で捕手陣を引っ張っていくのか注目している。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

記事提供:Full-Count

記事提供:

Full-Count 石川加奈子

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE