若き逸材たちが「平成の怪物」松坂大輔に挑む。パで現役の横浜高校出身者11名を紹介

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2020.4.16(木) 18:00

(C)パーソル パ・リーグTV
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名門・横浜高校出身者は、現在のパ・リーグにも多く在籍している

 2020年、松坂大輔投手が14年ぶりに埼玉西武ライオンズのユニフォームに袖を通した。松坂投手は今年の9月で40歳を迎える大ベテランだが、昨季悩まされた故障を乗り越え、着々と実戦登板を重ねている。NPBで日本一、MLBで世界一、そしてWBCでの2度の優勝を主戦投手として勝ち取った豊富な経験は、若手の投手たちにとってはまさに生きた教材となることだろう。

 松坂投手といえば、横浜高校のエースとして、明治神宮野球大会、春のセンバツ、夏の甲子園、秋の国体を同一年度に全て制し、高校野球史上唯一となる「高校四冠」の偉業を1998年に達成した人物でもある。松坂投手は同年に夏の甲子園の決勝でノーヒットノーランを達成するという離れ業も演じ、「平成の怪物」と称された。松坂投手が高校時代に見せた投球は、後に披露する華々しい活躍の第一歩と呼べるものだった。

 その横浜高校は、高校野球の強豪というだけでなく、プロ野球で活躍する選手を多く輩出してきたという歴史も持つ。愛甲猛氏、高橋建氏、多村仁志氏、小池正晃氏、阿部真宏氏といった、所属チームの主力として活躍した選手たちに加え、鈴木尚典氏、横山道哉氏、成瀬善久投手、筒香嘉智選手のようなタイトルホルダーも輩出。NPBへの人材供給の面においても、高校球界で屈指の名門と呼んで差支えないであろう。

 もちろん、現在のパ・リーグにおいても、横浜高校出身の現役選手は多く存在している。そして、その多くが今後のブレイクが期待される若手選手であることも興味深いところだ。今回は、パ・リーグの球団に所属する横浜高校出身の選手たちをピックアップ。松坂投手と対戦する可能性がある後輩選手たちについて、一人一人紹介していきたい。

・近藤健介選手(北海道日本ハム)
通算成績:674試合 2167打数659安打 28本塁打276打点 25盗塁 19犠打 打率.304 出塁率.403

 北海道日本ハムの主軸として活躍を続けている近藤選手は、現在パ・リーグに在籍している横浜高校出身の打者の中では最も実績がある選手と言っていいだろう。通算打率は.300、通算出塁率は.400をそれぞれ超え、2018年には指名打者部門でベストナインを受賞。2019年には自身初タイトルとなる最高出塁率にも輝いており、安定した打撃と優れた選球眼はチームにとっても大きな支えとなっている。

・淺間大基選手(北海道日本ハム)
通算成績:161試合 399打数92安打 4本塁打30打点 8盗塁 7犠打 打率.231 出塁率.271

 高校時代から逸材として注目された淺間選手は、2015年に高卒1年目ながら46試合で打率.285といきなり活躍を見せた。その後は相次ぐ故障の影響もあって一軍定着には至っていないが、2019年には開幕戦で1番打者としてスタメン出場するなど、そのポテンシャルへの期待は大きい。今年も1月に骨折で出遅れるなど、またしてもケガに悩まされているが、今季こそはブレイクを果たし、先述の近藤選手と共に打線を支える存在となれるか。

・万波中正選手(北海道日本ハム)
通算成績:2試合 4打数0安打 0本塁打0打点 0盗塁 0犠打 打率.000 出塁率.000

 抜群の身体能力を武器に高校時代から活躍を見せた万波選手は、プロ1年目の2019年に二軍で90試合に出場し、チームトップの14本塁打を記録。一軍では無安打に終わったが、2年目の今季は一軍の舞台でも持ち前のパワーを発揮できるか注目される。ちなみに、万波選手は2000年生まれと今回取り上げた中では最も若い選手で、後述する増田珠選手(1999年生まれ)と共に、1998年の松坂投手の全国優勝よりも後に生まれた選手でもある。

・下水流昂選手(楽天)
通算成績:183試合 300打数74安打 11本塁打37打点 0盗塁 4犠打 打率.247 出塁率.315

 下水流選手は横浜高校時代に春のセンバツで全国優勝を経験し、卒業後は青山学院大学、ホンダを経て、2012年のドラフト4位で広島に入団。2018年には2度のサヨナラ打を記録するなど、主に左投手キラーとして広島のリーグ3連覇に貢献し、2019年途中にトレードで楽天に加入。新天地でも途中加入ながら50試合で2本塁打、打率.250と一定の活躍を見せており、今季は一軍の舞台で松坂投手と相まみえる可能性もあるか。

・渡邊佳明選手(楽天)
通算成績:77試合 218打数49安打 1本塁打26打点 0盗塁 11犠打 打率.225 出塁率.274

 渡邊佳選手は、松坂投手が1998年に高校四冠に輝いた当時の監督・渡辺元智氏を祖父に持つ選手でもある。横浜高校を卒業後、明治大学を経てドラフト6位で楽天に入団。プロ1年目から本職の内野のみならず外野手としてもプレーし、一軍の舞台で77試合に出場。勝負強い打撃を武器に、チームのAクラス入りにも貢献している。かつて自らが指導を受けた名将の孫ということもあり、両者の対決が実現すればドラマ性も十分だ。

・増田珠選手(福岡ソフトバンク)
通算成績:2試合 4打数0安打 0本塁打0打点 0盗塁 0犠打 打率.000 出塁率.000

 増田選手は高校時代に打線の中軸として甲子園でも活躍を見せ、2017年のドラフト3位で福岡ソフトバンクに入団。プロ2年目の2019年に一軍デビューを果たしたが、4打数無安打と初安打はお預けに。しかし、二軍では一塁、二塁、三塁、外野と多くのポジションをこなしながら、111試合で打率.278、7本塁打、53打点と奮闘した。現在はオフに受けた手術の影響で戦列を離れているが、今季こそは一軍で初安打を記録したいところだ。

横浜高校の出身者は、育成選手にも3名存在

 先述した選手たちに加えて、ともにパ・リーグの球団に所属する、兄・卓也選手(千葉ロッテ)、弟・祐仁選手(北海道日本ハム)の高濱兄弟も、揃って横浜高校の出身だ。両者ともに今季から育成契約へと切り替わっているが、支配下への返り咲きを果たし、一軍の舞台で偉大な先輩との対戦を実現させてほしい。

 また、2019年の育成ドラフト2位で北海道日本ハムに入団した樋口龍之介選手も、高校時代は横浜高校で甲子園に出場した経験の持ち主だ。卒業後は立正大学、新潟アルビレックスBCを経て、25歳でプロ入りを果たしている。高校の大先輩との対戦を実現させるためにも、まずは独立リーグで磨いた好打を活かし、支配下登録を勝ち取ってほしいところだ。

実績十分のベテラン右腕と、高校四冠の年に生まれた若き右腕

 また、野手のみならず投手の中にも、パ・リーグの球団に所属する横浜高校出身の選手は存在している。ともに楽天に在籍する2名の投手についても、同様に紹介していきたい。

・涌井秀章投手(楽天)
通算成績:417試合 133勝128敗16ホールド37セーブ 2315.2回 1688奪三振 防御率3.51

 横浜高校からライオンズに入団してエースとして活躍した、という松坂投手の経歴は、涌井投手にとってもそのまま当てはまるものだ。涌井投手は松坂投手がつけていた埼玉西武の背番号「18」を受け継いだ存在でもあり、松坂投手が古巣に復帰したシーズンに、涌井投手も自身3球団目となる楽天に移籍したのも何かの縁か。再び獅子のユニフォームに袖を通した松坂投手と、高校の先輩・後輩同士の投げ合いが見られる可能性は大いにありそうだ。

・藤平尚真投手(楽天)
通算成績:25試合 7勝12敗 133.1回 118奪三振 防御率4.12

 横浜高校のエースとして将来を嘱望された藤平投手は、2016年のドラフト1位で楽天に入団。高卒1年目から8試合で3勝4敗、防御率2.28という投球を見せ、豊かな才能の一端を示した。その後の2年間はやや苦しんだが、昨季は二軍で9勝2敗、107奪三振と、イースタンの最高勝率と最多奪三振の2冠を獲得している。松坂投手が高校四冠を達成した1998年に生まれた若き右腕は今季こそ一軍に定着し、大先輩と同じ試合のマウンドに立てるだろうか。

生ける伝説と若き逸材の対決が、今季は多く見られるか

 3月22日に行われた埼玉西武と北海道日本ハムの練習試合では、近藤選手が松坂投手からライト前に鮮やかな適時打を放つシーンが見られた。松坂投手が一軍で先発として多くの登板機会を得られれば、近藤選手との対戦機会は今後も多く生まれてきそうだ。それに加え、淺間選手、万波選手、渡邊佳選手、増田選手といった、各球団にとってチームの今後を担うことが期待される若手選手たちとの対戦機会も、これから少なからず訪れることだろう。

 これらの対決は、ファンにとっては同じ高校の先輩と後輩の対決という点で興味深いものになりうるが、選手たち本人にとっても、様々な意味で大きなモチベーションとなるはず。横浜高校出身者にとってはまさに生ける伝説である松坂投手と、今後の飛躍に期待がかかる逸材たちの対決に、2020年はぜひ注目してみてはいかがだろうか。

文・望月遼太

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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