オフに打撃フォームを大改造「打ち損じが少なくなった」
千葉ロッテの藤原恭大外野手が、プロ2年目となる今季、新たな挑戦に取り組んでいる。ずばり、打撃フォームの改革だ。
これまでのフォームと大きく違うのは、構えた時のトップの位置。以前よりも拳1個分ほど低い位置で、力感ない握りで構えるようになった。オフにフォーム改造に着手し、体に覚え込ませるように何度も振り込んできた。野球選手は打者であれ投手であれ、とても繊細だ。周りから見ても分からないような小さな体の動きの変化が、結果を大きく左右することがある。そこで藤原は傍目からも明らかなほど大きな変化を加えたのだから、当初は慣れないフォームに心地悪さも感じたはずだ。
「そうですね。最初はやっぱり、なかなか打てなかったんですけど、2か月、3か月とやってくるなかで、しっかり調整できていると思います」
トップを下げることで、バットをよりボールの軌道に近い位置から振り出すことができる。高い位置から振り出すよりも、ボールの軌道に入りやすくなるため、捉えられる確率は高まる。8日に石垣キャンプで行われた今季初の対外試合、台湾・楽天モンキーズ戦。藤原は「1番・中堅」でフル出場し、6打数4安打3打点1本塁打と大暴れした。「打ち損じが少なくなった。去年と比べて、そこが一番変わった部分かなと思います」という言葉を裏付ける結果となった。
バットでボールを捉える時のイメージも変えた。これまではボールを「引っ張る意識」だったが、「ボールの内側を強く叩く意識」を持って打席に立つ。いわゆる“逆方向を狙う打撃”だ。実は、この意識改革をしたのは、楽天戦のわずか2日前。コーチの言葉をヒントに、バットをボールに「引っかけるんじゃなくて、(ボールを)内から押すイメージ」に変えたところ、見事にはまったという。
「本当にすごく変えたので、全然振っている感触も違いますし、(捉える)ボールのポイントもまったく違うので、前よりもいい感触。やっぱり打ち損じが少ないし、試合では(4安打は)全部1球で仕留められた。フルスイングで仕留めるっていうことは、去年本当に数少なかったので、それができたのが自信にもなりましたし、大きい収穫だったのかなと思います」
藤原の母校は、中村剛也(埼玉西武)、平田良介(中日)、中田翔(北海道日本ハム)、浅村栄斗(楽天)、森友哉(埼玉西武)ら、フルスイングが魅力の打者を数多く輩出している。その系譜を辿る藤原の信条も「フルスイング」。だが、ただ目一杯バットを振り回すのではなく、その内容やより細部にまでこだわりを見せ始めたのが、プロとして1年を過ごした経験と成長の賜物なのだろう。
プロ1年目の効果は、約3キロ増えた体にも見える。ドラフト1位ルーキーとして注目された昨年は、球団の方針により体作りに専念。オフにも体幹トレーニングを繰り返し、「バットを構えた時にしっくりくる感じがあるし、力強いスイングができるようになっている。軸が少しずつできているんじゃないかと思います」と土台が整ってきた。
オフには福岡ソフトバンクから福田秀平がFA移籍してきた。開幕1軍を目指す外野手争いは、さらに激化する。2年目の藤原は2軍で試合経験を積みながら成長の道を辿ればいいと考える向きもあるだろう。だが、本人はあくまで「激しい外野手争いに自分も食い込んでいけるような、1軍で試合に出るという気持ちを持ってやっていきたいと思います」と貪欲だ。2020年の初実戦から見せた胸のすくようなフルスイングで、プロ2年目の勝負に乗り出す。
(佐藤直子 / Naoko Sato)
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