【オリックス・バファローズ2019:後編】打線の固定に苦しむなかで新たなる希望も

パ・リーグ インサイト 吉田貴

より一層ボリュームアップした「シーズンレビュー2019」!! オリックスの名シーンの数々をご覧ください!!(C)パーソル パ・リーグTV
より一層ボリュームアップした「シーズンレビュー2019」!! オリックスの名シーンの数々をご覧ください!!(C)パーソル パ・リーグTV

 2019年シーズンを6位で終え、5年連続のBクラスとなったオリックス・バファローズ。チームとしては悔しい結果に終わったが、選手個人の成績に注目すると、それぞれの「2019年」が見えてくる。今回は、特集動画「シーズンレビュー2019」で試合を振り返り、本記事では選手にフォーカス。前編は投手を中心に、後編は野手を中心にオリックスの2019シーズンを振り返っていく。

【オリックス・バファローズ2019:前編】はこちら
他球団の「シーズンレビュー2019」特集動画はこちら

 最も苦しんだのが打線の固定だ。シーズン中の要所におけるスタメンを見ると、以下の3試合だけでも大きくメンバーが変更されていることがわかる。

 打線の固定は戦術の決定に直結してくるため、シーズンを通して打線が不安定な状態であったことは間違いない。実際のところ、チーム打率(.242)、チーム得点数(544)はいずれもリーグ6位と、攻撃面では大きく苦しんだシーズンだったと言える。そんななかでもシーズンを通して戦い抜き、規定打席に到達した2選手を紹介したい。

チーム唯一の全試合出場。オリックス打線の心臓となった男

 まずは吉田正尚選手。今季は主に3番と4番に座り、2年連続となるシーズン全試合出場を達成。パ・リーグの内でも143試合全てに出場したのはたったの7選手のみと、ルーキーイヤーから2年連続でケガに泣いた過去を忘れさせるようなタフさを見せつけた。成績も申し分なし。タイトル獲得とはならなかったものの、打率.322(リーグ2位)、168安打(同2位)、29本塁打(同8位)と、いずれもキャリアハイだった。チーム不動の主軸として、苦しい野手陣のなかで気を吐いたといえよう。

 開幕直後こそ不振に苦しんだものの、シーズンが進むにつれて上り調子に快打を連発。特に目覚ましい活躍だったのが7、8月の2カ月間だ。7月に月間打率.357、7本塁打、21打点で自身初となる月間MVPを受賞。翌月もバットの勢いはとどまることを知らず、驚異の月間打率.407を記録。全23試合中で、3度の猛打賞を含む計13度のマルチ安打を記録するなど止まらなかった。フルスイングが印象的だがミート力にも優れており、全アウト数に占める三振の割合は約18%だ。これは首位打者を争った埼玉西武・森友哉選手の約28%よりも低い数字だった。

プロ2年目ながらも主将として臨んだ今季。福田周平の収穫と課題

 もう1人が福田周平選手だ。今季は自己最多の135試合に出場。2年目にして主将に任命され、重圧がかかるなかでその責任を果たした。走塁ではリーグ2位タイの30盗塁を記録する一方で、盗塁死の数はリーグワーストの14。これを全て成功させていると仮定すれば、今季の盗塁王である西武・金子侑司選手の41盗塁を上回る。より確実性を高め、来季はタイトル獲得も射程圏内に入れてほしい。守備機会の多い二塁手の難しさは当然考慮しなくてはならないが、リーグワースト3位タイの12失策は改善の余地あり。プロ3年目のシーズンとなる来季は、今季の経験を生かして球界を代表する二塁手に成長してほしい。

オリックスの「超新星」。ドラ7ルーキー中川圭太の存在感

 今季のルーキーは、福岡ソフトバンクの甲斐野央投手など投手の活躍が目立つなか、野手で屈指の活躍を見せのは、間違いなく中川圭太選手だろう。規定打席到達とはならなかったものの、111試合に出場し、チーム3位の105安打、打率.288の好成績。チームの新人野手が100安打に到達するのは2012年以来、7年ぶりだった。同期のなかでは最も低い7位指名だったが、実力と入団順位が無関係であることを証明してみせた。

 特に交流戦では突出した活躍を見せた。全18試合で一塁手としてスタメン出場すると、うち10試合でマルチ安打を記録、打率.386で交流戦首位打者に。新人野手が交流戦首位打者を獲得するのは、プロ野球史上初の快挙だ。守備面でも外野手から一塁手、三塁手などの多様な起用に応える一方で、失策数は0と安定していた。

衝撃の移籍後初打席弾。身長2メートルの頼れる男がオリックスにやってきた

 シーズン中盤から頼もしい存在になったのが、モヤ選手だ。7月2日に中日よりトレードで加入すると、翌3日に即スタメン出場。これだけでは終わらず、移籍後初打席でいきなり右中間スタンドに飛び込むソロ本塁打を放つ衝撃のデビューを飾った。吉田正選手が143試合で64三振である一方で、モヤ選手は64試合で59三振と粗削りな部分も目立ったが、終わってみれば2桁本塁打(10本)に到達した。2桁本塁打はチームで3人だけであることを考えれば、長打力不足の打線において、貴重な大砲としての役割を果たしたと言える。

 これに触発されたのが、同じ助っ人のロメロ選手だ。故障で離脱したものの、モヤ選手の加入した7月の後半から戦列に復帰すると、翌8月には打撃覚醒。23試合に出場すると、月間打率.385、7本塁打、25打点と文句なしの活躍を見せた。

 特に印象的だったのが8月15日の埼玉西武戦。5番に座ったモヤ選手が1本塁打5打点の活躍を見せると、4番のロメロ選手は2本塁打6打点。2人で計11得点をたたき出す大暴れ。これに影響を受けたチームメイトにも快打が連発し、球団9年ぶりとなる20得点を記録する快勝となった。一方で、2人合計でシーズン142三振。試合数を考えれば多いと言える。ロメロ選手は来季のオリックスからは外れるが、モヤ選手にはより確実性を高めた打撃を期待したい。

頓宮裕真は開幕戦で5番に。来季の飛躍が期待される4選手

 ただ、打線が今季以上の成果を出すためには、ここに挙げた選手以外の活躍は不可欠だ。まず今季91試合出場し、打率.262の成績を残している大城滉二選手。特に年号が「令和」に変わった直後の5月1日からは、15試合連続安打を放って話題を呼んだ。この感覚を取り戻し、競合の多い内野争いから頭一つ抜け出したい。

 ドラ2ルーキーの頓宮裕真選手は、開幕戦でいきなり5番に座った。ルーキーが開幕クリーンアップに名を連ねるのは球団62年ぶり。その試合でプロ初打席・初安打・初打点を同時に達成するなど、大器としての潜在能力を見せつけた。だが、7月以降はプロの壁に跳ね返され、ファームに戦いの場を移した。ファームでは26試合に出場し、打率.275だった。秋季練習から捕手に再転向して研さんを積んでおり、フェニックスリーグでは優れたけん制で走者を刺すなど成長を見せている。オフには台湾のウィンターリーグに参加して、武者修行することも決まっている。もう一回り大きくなって、プロ2年目のシーズンを迎えたい。

 福田選手がシーズンを通して二塁手で出場したものの、他のポジションではいずれもメンバーが固定できていない状態。当然、ファームを主戦場としていた選手が台頭してくる可能性もある。宜保翔選手はルーキーながらもファームで111試合に出場した。打率.227、20失策とまだまだ未熟な部分が目立つが、高卒1年目はまだまだ未知数。成長次第では、シーズン途中で遊撃手のポジションを射程に収めることもありうる。

 さらに、2018年のドラフト1位・太田椋選手についても同様だ。骨折で開幕を出遅れるアクシデントがあり、復帰直後の6月は月間打率.203とプロのレベルの高さを実感した。だが、続く7月は.271、8月は.281、9月は.286と尻上がりに成績を良化させていった。秋季練習では西村監督が宜保選手と太田選手の遊撃手の定位置競争を示唆。ともに来季で高卒プロ2年目。フレッシュな布陣が見られる可能性も十分にある。

心臓だけでは意味がない。来季のオリックス打線に求められるものは……

 2014年以来となるAクラス復帰のためには、打線の中心に座る吉田正選手を際立たせる打者の台頭が不可欠。チーム打撃成績を見ても、544得点はリーグワーストの数字だ。決定力のある吉田正選手の前にどれだけ走者を置けるかがカギになりそうだ。同じく、チーム長打率もリーグワーストの.353だった。この点ではモヤ選手の加入などもあったが、まだまだ不十分。既存戦力、そして新戦力からもう1人長距離砲が欲しいところだ。記事冒頭でも触れたように、安定した得点が見込める打線が固定できるかが重要になってくるだろう。

文・吉田貴

記事提供:

パ・リーグ インサイト 吉田貴

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