オリックスの育成ドラフト1位の新人、三方陽登外野手がMLB・ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手の打撃フォームを参考に本塁打を量産している。
「指導者の方から『足を上げて打ってみたら』とアドバイスをいただき、いろんな選手の映像を見ている中で、ジャッジさんのゆったりとしたフォームを試したらいい感じで打てるようになったんです」。三方が声を弾ませた。
三方は兵庫県養父市出身。創志学園高(岡山)、駒大、BCリーグ「栃木ゴールデンブレーブス」からオリックスに入団した。高校時代は最速146キロの速球派右腕として知られたが、打力を買われ駒大2年秋季のリーグ戦後、打者に転向。190センチ、97キロの恵まれた体を生かしたパワフルな打撃で、栃木では1年目から主軸を任され、出場49試合で打率.286、33打点、5本塁打をマークした。
飛距離はオリックスでも折り紙付き。新人合同自主トレや春季キャンプでオーバーフェンスを連発し、キャンプ地で行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の強化試合、チェコ戦では代打で途中出場し、豪快な2ラン本塁打を含む2安打、2打点。本塁打以上に、投手強襲安打の鋭い打球に球団関係者からは驚きの声が上がったという。
ジャッジのゆったりしたフォームにたどり着いたのは偶然だった。風岡尚幸・2軍監督や水本勝巳・巡回統括コーチら首脳陣からの助言で足を上げるフォームに変更後、社会人野球も含めた選手の映像を参考にした。「これまでもジャッジさんの映像は見ていたのですが、どんな足の上げ方をしているのか、いろんな角度で見て参考にさせてもらいました」と三方。
すると足の上げ方だけではなく、テークバックの時にあまりバットを引かない、ゆったりとしたジャッジのフォームが、改めて目に留まったという。「僕は力んでしまう傾向があったのですが、当たったら飛ぶやろ、とゆったりとした感覚で振るとしっかりと(バットの)芯でとらえることができるようになりました」という。
フォームを変更後の5月中旬以降、本塁打を量産。6月19日の阪神戦(杉本商事Bs)では4号を放ち、ファーム西地区の本塁打部門でトップに並んだ。
持ち味を生かすため、入団後に「ゴロは打つな」と助言し、高橋信二打撃コーチとともに指導している福川将和打撃コーチは「基本的にゆっくりとタイミングを取らないと、速い球には差し込まれるんです。当たれば飛ぶのはわかっていますから、みんながびっくりするくらいの飛距離を出したらどうか、と足を上げることをアドバイスしました。育成(選手)なのだから、ずば抜けないと支配下にはなれません、生きるか死ぬかの勝負なので。ピッチャーが怖がる、見た目にも魅力のある選手になってほしいのです」と、フォーム改造の狙いを明かす。
三方のモットーは「全力プレー」。駒大時代、野手に転向したばかりの三方は林裕也コーチから、安打を放った際の走塁などを指摘された。手を抜いている自覚はなかったが、“慢心”をいさめる言葉として今も心に刻みながら強肩、俊足で三拍子そろった大型右打者として、全力で支配下を目指す。
取材・文=北野正樹