オリックスの育成ドラフト2位の新人マシュー投手が、チームのOBで日米通算4367安打のレジェンド、イチローさん(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)に認知してもらおうと、マウンドで躍動している。
「一度、お話をしてみたいですね。どんな人なんだろう。イチローさんに認知していただけるように、活躍します」。マシューが少年のように頬を緩めた。
マシューは東京都出身。國學院栃木高、國学院大、独立リーグ・日本海リーグ「富山GRNサンダーバーズ」から2025年育成ドラフト2位でオリックスに入団した。193㎝、105kgから繰り出す角度のある最速153kmのストレートにカーブ、スライダー、スプリットが武器。富山GRNサンダーバーズでは、25年に14試合に登板し4勝0敗で前後期優勝に貢献した。
本名は「シャピロ・マシュー一郎」。姓は「シャピロ」だが、親しく呼んでもらいやすいように登録名は「マシュー」に。入団会見で「将来は『イチロー』の登録名も」と話したのは、「一郎」の名前も大事にしたかったからだろう。ただ、球団やファンの理解を得るためにも、それだけの実績が必要になってくる。
1年目は、練習試合も含め16試合に登板。2軍の公式戦では5試合に中継ぎ、抑えで起用され、防御率0.00、1セーブと結果を残しつつある。苦い経験も積んだ。社会人チームとの練習試合で2回2/3、74球、被安打6、奪三振2、与四球5、7失点と乱れた。
投手のアクシデントで登板順序が突然変わり、バックの拙守も続出するという苦しいマウンド。「あれだけ打たれて四球を出したら(途中で)代えられるかなと思ったんですが、小林(宏育成チーフコーチ)さんから『あとひと踏ん張りだから頑張れ』と励ましていただきました。(プロ入りした)早い段階で、あの状況の中で投げ抜けたことは本当にいい経験になりました」と前向きに捉える。
オリックスとの“縁”も感じている。独立リーグ時代、地元富山で行われた25年6月のオリックスとの交流戦で、途中登板。1イニング目は池田陵真選手に安打を許したものの最速152kmで無失点に抑えたが、2イニング目は5安打を浴び5失点と、プロ球団の関係者にアピールすることができなかった。それだけに、ドラフトでオリックスから指名された際には驚いたという。当時、育成選手だった國学院大の先輩、横山楓投手から掛けられた「いいボールを持っている。もっと自信を持っていけばいい」という言葉で、修正することができた。
シーズンに入ってから、「何かを変えたい」とひげを生やした。旧友らは変貌ぶりに驚くというが、チーム内での評判は上々で視察のために訪れた中嶋聡シニアディレクター兼フィールドコーディネーターからも「似合ってるね」と声を掛けられたという。「「富山GRNサンダーバーズ」とは、6月10日に富山市民野球場で対戦する。容姿だけでなく、プロ入り後の成長ぶりを見せるつもりだ。
イチローさんに会えば、聞いてみたいことがある。「僕にどうやって対応しますか」と。支配下になってそんな会話が交わせるような選手になるまで、もっと経験を積んで自分を磨く。
取材・文=北野正樹