“うれしい誤算”で一軍キャンプ地に。前年比2.6倍のファンが訪れた都城コアラのマーチスタジアム

パ・リーグ インサイト 高橋優奈

宮崎県都城市 市長・池田宜永氏(左)千葉ロッテマリーンズ・サブロー監督(右)【写真提供:都城市】
宮崎県都城市 市長・池田宜永氏(左)千葉ロッテマリーンズ・サブロー監督(右)【写真提供:都城市】

 2026年シーズンも開幕目前。新体制が本格始動した春季キャンプインから、早くも1カ月半が過ぎた。

 2月、サブロー監督のもと千葉ロッテの選手たちが汗を流した宮崎県都城市・都城運動公園野球場。2025年に千葉ロッテの二軍春季キャンプ地となり、今年は一軍の一次キャンプ地および二軍の二次キャンプ地に。「コアラのマーチスタジアム」の愛称も付き、多い日で約6,000人の観客が訪れるにぎわいぶりだった。

 同球場では、1960年代から1970年代にかけて巨人のキャンプが行われていたが、その後はみやざきフェニックス・リーグが開催されるのみ。では、どのようにして約50年ぶりのキャンプ開催まで至ったのか。そして、都城キャンプ2年目を終えた今思うことは。市長の池田宜永氏にお話を伺った。

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 1962年に竣工したコアラのマーチスタジアム。老朽化による修繕を重ね、2018年からの2年間にはスコアボード一体型バックスクリーンや内外野のラバーフェンス設置など、大規模な改修も実施された。さらに、コアラのマーチスタジアムがある都城運動公園内では、スポーツ拠点にとどまらず、地理的特性を加味した整備も進められることとなった。

「実は、今年から『パイの実ドーム』という名前がついている屋内競技場は、災害時の防災倉庫としてつくりました。宮崎県は南海トラフ地震のリスクを抱えています。都城は内陸部なので、後方支援都市という観点から整備を進めようとしていました。日常では地域の方に使っていただき、災害時には防災倉庫として。運動公園エリア全体を防災拠点として整備するということで、屋内競技場の建設を2022年度に発表しました」

 これが大きなきっかけとなった。屋内競技場の建設が発表された同年、その施設を最大限に活用すべく、市内の民間6団体からプロ野球のキャンプ誘致に関する要望書が提出されたという。スポーツによる地域活性化を図る都城市にとって、絶好の機会が訪れた。

「防災施設を整備する流れと民間からの声が相まって、災害時以外にはプロ野球のキャンプでも活用していただける仕様にしていこうと。それから、千葉ロッテさんとのご縁がうまく結びついたことで、昨年からの春季キャンプの実施につながったのだと思います」

練習環境だけではない! “肉のまち”ならではの魅力

 屋内競技場「パイの実ドーム」のほか、投球練習場「クーリッシュブルペン」、サブグラウンドも新設され、2025年1月に供用開始。前述の大規模改修も含め総工費30億円に及ぶ施設は、選手たちにとって最適な練習場となった。このような環境の充実度に加え、都城市にはもう一つの魅力がある。

「ハード面だけでなく、やはり都城での食事がおいしいという言葉を常々言っていただいております。(選手たちが)宿泊しているホテルのスタッフの方々が頑張ってくださっているおかげですね。そういったソフト面で、より気に入っていただけたのだと思います。球団のみなさんはもちろん、ファンのみなさんも長期で滞在する方も多いので、食は大事なポイントだと思います」

 都城市は畜産が盛んで、肉用牛、豚、鶏の合計産出額が全国1位を誇る“肉のまち”。地元の食材を生かした食事は選手らの胃袋をつかんだに違いない。好感触を得て都城キャンプ1年目を終えたが、二軍キャンプスタートの翌年すぐに一軍の一次キャンプ地となることは、池田市長も全く想定していなかったそうだ。

「正直、想定を超えていました。大変速いスピードで驚きましたし、光栄だなと。まず、二軍のキャンプを決めていただいたときも、大変ありがたいと思っていました。担当者には『まずは二軍キャンプをしっかり受け入れて、選手も含めた球団のみなさま方に都城でのキャンプを気に入っていただくこと、チームをしっかりとサポートして、いずれ一軍のキャンプにもつながれば最高だよね』という話をしていました。それでも、1年後というのは想定していなかったので、かなりうれしい誤算でしたね」

都城での14年ぶりのオープン戦が、新市誕生20周年を彩るイベントに

都城運動公園 ※2026年2月撮影【写真:パ・リーグインサイト】
都城運動公園 ※2026年2月撮影【写真:パ・リーグインサイト】

 今年の千葉ロッテの一軍一次キャンプは2月1日から11日まで行われ、沖縄県糸満市での二次キャンプ終了後、WBCチェコ代表との親善試合「GLOBAL FRIENDSHIP SERIES 2026」や「2026球春みやざきベースボールゲームズ」が再びコアラのマーチスタジアムで開催。その間、概算で計49,000人のファンが来場した。

 昨年、2月1日から24日まで実施された二軍キャンプでの来場者は計19,000人だったことから「やはり一軍キャンプのパワーは大きいなと実感しました」と池田市長は言う。それに伴い、宿泊や食事などの消費も拡大。「スポーツによる地域活性化を政策の柱の一つに据えており、そういう観点でも大きな効果があったに違いないと考えています」と、地域経済への効果も感じ取っていた。

 さらに2月28日には、都城市主催の千葉ロッテ対埼玉西武のオープン戦も実施。今年、同市は新市誕生20周年の節目を迎えたことから、記念事業の一環として開催された。前日まで雨が続き、天候が心配されたものの、当日は気持ちの良い晴天に。地元の吹奏楽団による演奏や、子どもたちによるダンスも披露され、地域一体となって会場を盛り上げた。

 試合後には、地元出身の廣池康志郎投手ら7名の選手による野球体験イベント「マリーンズ・キッズボールパーク」が行われ、小学生約160名が参加。池田市長は「多くの子どもたちがプロ野球選手から野球を教えてもらっていました。子どもたちにとっては大きな大きな機会になったと思います。これがつながって、将来また都城からプロ野球選手も出てきてくれればいいなと思いますし、(オープン戦開催は)地域の力にもなったかなと思っています」と笑みを浮かべた。

都城キャンプ3年目を見据えて

 キャンプインからオープン戦の開催まで。昨年以上に充実した1カ月を終えて、池田市長が思うこととは。

「今年初めて、都城で一軍のキャンプを迎えたのは光栄なことでした。我々としては、来年以降もぜひ都城で一軍キャンプをしていただけるように、球団の方々ともコミュニケーションを取り、必要な対応をしっかりとしていきたいと思っています。今年の経験や反省を踏まえて、さらに取り組みをバージョンアップしていくことで、選手はもちろんですが、ファンのみなさまにも今年以上に楽しんでいただき『都城にまた行きたい』と思っていただきたいですね」

 そして「地域の方にとっては、都城運動公園がこれまで以上に親しみがある場所になればと思います。野球場に関しても、今回ネーミングライツ契約で『コアラのマーチスタジアム』というかわいい名前を付けていただき、かなり良い反応をいただいているので、より身近に感じてもらいたいです」と期待を寄せた。

 市内では、球団から贈呈された“M”のロゴ入りのキャップをうれしそうにかぶる小学生の姿が多く見られているという。コアラのマーチスタジアムをはじめ、都城運動公園が地域からより愛される場所になるとともに、千葉ロッテマリーンズもまた、都城市民にとって身近な存在になっていくだろう。

インタビュー・文 高橋優奈

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“うれしい誤算”で一軍キャンプ地に。前年比2.6倍のファンが訪れた都城コアラのマーチスタジアム