勝ち星に恵まれない時期がありながらも、開幕から先発ローテーションを守る

昨季はチームトップタイの7勝を挙げ、来日1年目から期待に応える投球を披露したエスピノーザ投手。今季は勝ち星に恵まれない時期こそあったものの、開幕から先発ローテーションを守り、リーグ平均を上回る奪三振率8.32をマーク。奪三振数もチームでは宮城大弥投手に次ぐ119個を記録している。今回は、エスピノーザ投手がいかにして三振を奪っているのか、その要因にデータで迫っていく。
ナックルカーブでの奪三振数が昨季と比較して大幅に増加

エスピノーザ投手はツーシームで打者にゴロを打たせるピッチングが持ち味で、投球割合の約半数をツーシームが占める。その一方で球種別の奪三振数の内訳を見てみると、今季はナックルカーブが最多の42.0%。昨季の30.1%からその割合が大幅にアップし、ツーシームを上回っている。ナックルカーブでの奪三振が増えた背景には、どのような変化があったのだろうか。
追い込む前後で投球割合が変化

ストライクカウント別で見ると、ナックルカーブの投球割合は追い込む前後で大きく変化していることが分かる。0・1ストライクでのナックルカーブの割合はツーシームとスライダーに次ぐ9.6%にとどまっているが、2ストライクになるとツーシームに次ぐ31.5%と大幅に増加。追い込んでからナックルカーブが増える傾向は昨季も見られたが、今季はそれがより顕著に数字に表れている。2ストライクになるとフォークやチェンジアップといった落ちる系の球種を増やす投手は多いが、ここまでカーブを選択する投手は珍しく、2ストライク時の31.5%という割合はリーグで最も高い。
ボールゾーンで空振りを奪える決め球

2ストライクからナックルカーブを多投する理由として、この球種が空振りを奪える球であるという点が挙げられる。通常、カーブは空振りを奪うというよりも緩急をつける目的で用いられ、ボールゾーンへ外れた場合は、見極められるか、バットに当てられる可能性が比較的高い。しかし、エスピノーザ投手のナックルカーブは、ボールゾーンでの奪空振り率がリーグ平均を大きく上回る22.2%を記録。ストライクゾーンからボールゾーンへ縦方向に鋭く変化するこの決め球は、2ストライクから打者の空振りを誘うのに効果的であるというわけだ。
リーグ内でも際立つ、カーブでの奪空振り率

エスピノーザ投手のナックルカーブは、パ・リーグの他の投手と比較しても突出した成績を収めており、ここまで奪空振り率はリーグで断トツの17.9%をマーク。昨季も14.0%を記録するなど、もともと空振りを奪いやすい球種であったが、今季は追い込んでからの決め球としての使用頻度が上がり、その結果としてナックルカーブでの奪三振が増加している。
8月は5試合に登板して防御率1.71をマークするなど、抜群の安定感を見せたエスピノーザ投手。期間中に記録した29奪三振のうち、約半数となる14個はナックルカーブで奪ったものだった。ツーシームを軸に据えつつ、ナックルカーブなどの多彩な球種をどう生かすか。レギュラーシーズンも残すところわずかだが、今後も助っ人右腕のピッチングに注目したいところだ。
※文章、表中の数字はすべて2025年9月26日終了時点
文・データスタジアム
