2025年シーズン開幕から約2カ月が過ぎた。各チーム新戦力の台頭が注目されるこの時期だが、今季は例年以上に「大卒ルーキー」の存在感が際立っている。プロの壁に直面するどころか、一軍の舞台で堂々たるプレーを披露し、チームの戦力として欠かせない存在になりつつあると言えるだろう。
本記事では、シーズン開幕直後からパ・リーグで躍動する大卒ルーキーをピックアップし、その実力と魅力をご紹介する。
(※成績は6月8日試合終了時点)
ルーキートップの打数! 東北楽天・宗山塁は早くもチームに欠かせない存在

まずは東北楽天の宗山塁選手。明治大学卒で、ドラフト会議では5球団から1位指名を集めた注目のルーキーだ。
宗山選手は開幕戦から、「2番・遊撃手」で先発出場。1点を追う9回表に同点適時打を放ち、デビュー戦とは思えない落ち着きと勝負強さを見せ、華々しいデビューを飾った。これをきっかけに、その後も先発起用される試合が続き、6月8日時点での出場試合数は52試合、201打数といずれもルーキー最多を記録。開幕からスタメンに名を連ね続ける存在となっている。
守備面でもすでにリーグ屈指の安定感を見せている。遊撃手という重要なポジションを守りながら、守備率はリーグ4位を維持。さらに刺殺数はリーグトップの記録を残し、広い守備範囲と俊敏な動きで多くのアウトを重ね、守備でもチームに欠かせない存在だ。
今後は、プロ入り後初めて経験する夏場の暑さや、蓄積する疲労が宗山選手のパフォーマンスにどのような影響を与えるかという点が気になってくる。打率は、3月.286、4月.268、5月.229、6月.227と、シーズンが進むにつれて徐々に下降気味だ。それでも、高い注目を集める中で、安定した試合出場を続けている宗山選手。現在のパフォーマンスをどこまで維持できるか、多くのファンが期待を込めて見守っている。
高い打率と長打力に注目! 埼玉西武・渡部聖弥の魅力

次にご紹介するのは、大阪商業大学卒、ドラフト2位指名で埼玉西武に入団した渡部聖弥選手だ。上記で紹介した東北楽天・宗山選手とは名門・広陵高校の同級生で、野球部のチームメイトでもあった。
現在、打率.331を記録する渡部聖選手は新人選手の中でトップの打率を収めている。また、注目すべきはその打率の高さだけではない。得点圏打率が.323とチャンスに強い打撃でチームに貢献し、ルーキーながら勝負どころでの頼もしさが際立っている点も見逃せない魅力だ。
その反面、月別の打率成績を振り返ると、やや調子の波が見られる状態と言えるだろう。3月は.455、4月は.431と好調を維持していたが、5月は.243まで下降し、プロの厳しさが垣間見える成績となっている。
それでも、5月に入って4本の本塁打を放っており、これはルーキー最多の数字だ。打率がやや落ち込んでも、一発で試合を動かす長打力を兼ね備えた打者は非常に頼もしい存在だ。
ルーキーながらもチームの中心選手として大きな期待を背負うなか、5月31日は左足首捻挫による出場登録選手抹消が公表された。怪我を乗り越え、プロ野球の長いシーズンをどう戦い抜けていくか、今後の活躍に関心が集まるだろう。
オリックス・麦谷祐介 走力と勝負強さで今後の飛躍に期待

麦谷祐介選手は富士大学出身で、ドラフト1位の指名を受け外野手としてオリックスに入団。俊足を武器に早くもその存在感を示し、6月8日時点で8盗塁を記録。これは、ルーキートップ、リーグ全体でも6位タイの成績となっている。さらに、盗塁死はわずか2と高い成功率も維持し、そのスピードと走塁技術はチームの大きな武器になりつつある。
打撃面でも存在感を示し始めていて、6月8日時点での打率は.257ながら、得点圏打率は.333と勝負強さを発揮している。大学時代の実績にも注目すべき点があり、富士大学時代の2024年秋のリーグ戦では、最多本塁打、最多打点、ベストナイン、優秀選手賞と多くのタイトルを獲得。これまでプロの舞台での本塁打はまだないが、盗塁のみでなく、長打力にも期待のかかる選手だ。
月別の打率成績に関しては、宗山選手や渡部聖選手同様に、やや下降傾向ではあるものの、シーズンを通してどう修正していくかに注目だ。また、麦谷選手の魅力である盗塁数は、代走での出場機会が多いにもかかわらず、4月・5月ともに4盗塁ずつを記録。今後、シーズンを通して安定したペースで盗塁数を積み重ねていく可能性も高いだろう。この盗塁数を維持、もしくはさらに伸ばしながら、打率の向上にも期待し、プロ初本塁打の瞬間がいつ訪れるのかに注目したい。
守備で魅せるプロ1年目 北海道日本ハム・山縣秀

山縣秀選手は、ドラフト5位で北海道日本ハムから指名を受け、名門・早稲田大学からプロ入りを果たした内野手だ。特に、大学4年春のリーグ戦では打率.366の成績を残し、遊撃手としてベストナインに選出された過去を持つ攻守両面で高い評価を得た選手だ。
プロ1年目の今季、山縣選手の一軍デビューは4月15日、試合終盤の守備からとなった。6月8日時点でいまだ100打席に満たず、打率.208と、打撃面はこれからの結果に期待したい選手ではあるが、それでも一軍の試合において確かな存在感を放っている。その理由は、遊撃手としての堅実な守備力だ。
この動画でも注目されている5月21日の福岡ソフトバンク戦では、山縣選手の華麗な守備が光った。ヒット性の鋭い打球を難しい体勢で捕球し、素早く一塁に送球してアウトを奪う。また、続くプレーでは、三塁手・清宮幸太郎選手の後ろをカバーし、こぼれ球を拾って一塁に的確に送球した。見事なカバーリングで再びアウトを奪う好守備を見せ、ファンの注目を集めている。
一方、打撃面では、4月は打率3割台を記録する好スタートを切ったが、5月は1割台とやや苦戦している状況だ。開幕以来、チームが首位争いをする位置にいることもあり、好投手との対戦が続いていることもひとつの要因かもしれない。それでも、堅実な守備を武器に出場機会を重ねながら、打撃面でも適応していけるかが今後のポイントとなるだろう。攻守にわたる活躍が期待される注目のルーキーだ。
開幕直後から一軍の舞台で堂々とプレーし、その実力でファンを魅了する大卒ルーキーたち。交流戦やシーズンの後半にかけて、どのような活躍を見せてくれるのか、引き続き注目が集まる。また、一軍での本格的な活躍が待たれる選手たちの台頭にも期待が寄せられ、今後のシーズンの展開からますます目が離せない。
文・波多野アイ