人的補償で移籍した小森航大郎と伊藤優輔は新天地で飛躍なるか

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2025.3.30(日) 10:00

福岡ソフトバンクホークス・伊藤優輔投手 ©パーソル パ・リーグTV
福岡ソフトバンクホークス・伊藤優輔投手 ©パーソル パ・リーグTV

2024年のオフには、人的補償によって2名の選手がパ・リーグ球団に加入した

 2024年オフには、FA権を行使して東京ヤクルトに移籍した茂木栄五郎選手の人的補償として、小森航大郎選手が東北楽天に入団。また、同じくFA権を行使して巨人に移籍した甲斐拓也選手の人的補償として、伊藤優輔投手が福岡ソフトバンクに加入している。

 今回は、ともに新天地での台頭を期す両選手の球歴に加えて、一軍および二軍で残してきた成績と、選手としての特徴と強みを紹介。ともに大きな伸びしろを残す2名の俊英がブレイクを果たす可能性を探るとともに、パ・リーグでの大きな飛躍に期待を寄せたい。

3年間で着実に打撃成績を向上させ、2024年には二軍の盗塁王にも輝いた

 小森選手がこれまで記録してきた、一軍および二軍での年度別成績は下記の通り。

小森航大郎選手 年度別成績 ©PLM
小森航大郎選手 年度別成績 ©PLM
小森航大郎選手 年度別二軍成績 ©PLM
小森航大郎選手 年度別二軍成績 ©PLM

 小森選手は宇部工業高校から、2021年のドラフト4位で東京ヤクルトに入団。プロ1年目の2022年から二軍で22試合に出場し、打率.200と苦しんだものの貴重な経験を積んだ。続く2023年は二軍での出場機会を49試合と倍以上に伸ばし、打率.230、3本塁打、8盗塁と前年からの成長を示した。

 そして、3年目の2024年は二軍で主力の座をつかみ、110試合に出場して規定打席にも到達。打率.252と着実に確実性を高めたことに加え、24盗塁を記録してイースタン・リーグの盗塁王に輝く活躍を披露。9月には一軍デビューも果たすなど、今後に向けて大きな期待を抱かせた。

 同年オフにFA権を行使した茂木選手の人的補償として東北楽天に移籍したことによって、プロ4年目のシーズンは新天地で迎える運びとなった。2024年の一軍出場は4試合にとどまっていたものの、新たな環境で一軍での出場機会を大きく伸ばすことができるか。

二遊間は、実力者3名がひしめく激戦区だが……

 続いて、小森選手が二軍で記録した守備成績を見ていきたい。

小森航大郎選手 年度別二軍守備成績 ©PLM
小森航大郎選手 年度別二軍守備成績 ©PLM

 2022年と2023年には遊撃手以外のポジションで守備に就いた試合はなかったが、2024年からは二塁手に挑戦。同年は二塁手で60試合、遊撃手で52試合と、二塁手として出場した試合のほうが多くなっていた。

 今季の東北楽天では、ドラフトで5球団が競合したゴールデンルーキー・宗山塁選手が遊撃手としてオープン戦でも活躍を見せている。また、二塁手としては2024年にいずれも自身初となるベストナインとゴールデングラブ賞に輝いた、2023年の盗塁王・小深田大翔選手が確固たる地位を築いている。

 それに加えて、2024年に遊撃手のレギュラーを務めた高い守備力に定評のある村林一輝選手も控えている。二遊間を主戦場とする小森選手にとっては、レギュラー定着に向けて厳しい戦いが待ち受けていると言えよう。

 ただし、昨季は二塁では小深田選手が131試合、遊撃手では村林選手が138試合と、絶対的レギュラーの2名が大半の試合に出場していた。その一方で、それ以外の選手の中では黒川史陽選手が二塁手として14試合に出場したのが最多であり、遊撃手として10試合以上に出場した選手は村林選手以外に一人も存在しなかった。

 宗山選手の加入によって二遊間のポジションは一気に激戦区となったが、控えの選手層が薄いことが否めない状況でもある。さらに、昨季のチーム盗塁数はリーグトップまで1個差の90と、脚力のある選手が重用される環境でもある。小森選手は持ち前の俊足を活かして一軍定着を果たし、新天地で活躍の場を大きく広げることができるだろうか。

トミー・ジョン手術を乗り越え、昨季は二軍の守護神として快投を披露

 伊藤投手がこれまで記録してきた、一軍および二軍での年度別成績は下記の通り。

伊藤優輔投手 年度別投手成績 ©PLM
伊藤優輔投手 年度別投手成績 ©PLM
伊藤優輔投手 年度別二軍投手成績 ©PLM
伊藤優輔投手 年度別二軍投手成績 ©PLM

 伊藤投手は都立小山台高校、中央大学、三菱パワーを経て、2020年のドラフト4位で巨人に入団。プロ1年目の2021年は故障もあって一軍登板を果たせず、同年11月にはトミー・ジョン手術を経験。長期の離脱が見込まれる状況となったこともあり、同年オフには育成選手契約に移行した。

 1年以上にわたる長いリハビリを乗り越え、2023年に二軍で実戦への復帰を果たした。2024年には二軍で40試合に登板して復活をアピールし、守護神として14セーブを挙げて防御率1.29と支配的な投球を披露。この活躍が認められ、同年7月には支配下への復帰を勝ち取っている。

 同年には自身初となる一軍のマウンドも踏み、8試合に登板して1ホールド、防御率1.04と好投。一軍の舞台でも自らの投球が通用することを証明した。福岡ソフトバンクに移籍して迎える2025年シーズンも前年同様に安定した投球を見せ、新天地でさらなる飛躍を果たしたいところだ。

奪三振率の高さに加え、積年の課題にも改善の兆しが

 ここからは、伊藤投手が二軍で記録してきた奪三振率と与四球率について見ていきたい。

伊藤優輔投手 年度別二軍投手指標 ©PLM
伊藤優輔投手 年度別二軍投手指標 ©PLM

 プロ1年目の2021年は16試合で防御率4.30と安定感こそ欠いたものの、23イニングで30個の三振を奪い、奪三振率11.74と圧倒的な数字を残した。2023年の復帰登板でも1イニングで2三振を記録しており、最速150km/hを超える快速球を活かした奪三振力の高さが大きな持ち味であることがうかがえる。

 ただし、2024年は二軍で防御率1.29と安定感抜群の投球を見せた一方で、奪三振率は7.29と、以前に比べて低下していた。しかし、一軍では8.2イニングで奪三振率8.31という成績を残しており、レベルの高い舞台で一定以上の数字を記録した点は頼もしい要素だ。

 与四球率に目を向けると、2021年には二軍で与四球率6.26と制球に苦しみ、防御率が悪化する要因の一つとなっていた。しかし、2024年には二軍で与四球率4.07と数字が改善され、一軍では与四球率3.12とさらに成績が向上。課題となっていたコントロールの面で安定の兆しが見られたことは、今後に向けて大きな期待が持てる要素といえよう。

人的補償での移籍をチャンスに変えて、新天地で頼もしい戦力となれるか

 イースタン・リーグの盗塁王に輝いた脚力という大きな武器を持つ小森選手は、二遊間の控えがやや手薄という東北楽天のチーム事情を、出場機会の増加につなげたいところだ。伊藤投手も昨季は一軍において奪三振力の高さと制球力の向上を示しただけに、層の厚い福岡ソフトバンクの投手陣に割って入り、強い存在感を放つ可能性は大いにあることだろう。

 小森選手と伊藤投手は人的補償での移籍をチャンスに変えて、新天地で頼もしい新戦力としてチームに貢献することができるか。それぞれ大きな強みを持つ両選手がパ・リーグの舞台で大きな飛躍を遂げるか否かに、シーズン開幕後もぜひ注目してみてほしい。

文・望月遼太

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