
担当記者の推し選手を紹介する「推しえて」。第3回は楽天・中島大輔外野手(23)。プロ1年目の昨年は8月に初本塁打をマークも、けがもあり定位置奪取はならず。昨年12球団唯一の全試合フルイニング出場を果たした先輩の小郷裕哉外野手(28)を“お手本”に、シーズンを通してチームの力になる覚悟を見せる。
激戦の外野レギュラー争いを勝ち抜くため、中島は“1年間戦い続けること”を念頭に腕を磨いている。昨年7月2日のオリックス戦(弘前)に代打でプロ初出場&初安打。8月2日の西武戦(ベルーナD)でプロ初本塁打を放つなど、バットでアピールした。しかし、8月25日に右肩の違和感で出場選手登録を抹消。9月末に再昇格したが、手応えも悔しさも残るルーキーイヤーだった。
「去年は途中でけがをして離脱した時もあった。1年間けがをしない体作りを一番のテーマにやっています」
そのための最高の“お手本”がチーム内にいた。昨年12球団で唯一、全試合フルイニング出場した小郷だ。今年1月は小郷、伊藤裕季也内野手(28)と3人で沖縄県内で合同自主トレ。先輩たちと一緒にメニューに取り組み、さまざまな気付きを得た。
「柔軟性と、あとは体力。疲労がたまりやすかったりしたので、有酸素系(のメニュー)を入れて回復力を早めることだったり、心肺機能以外の筋力の体力というか。そういうものを重点的にやりました。(一緒にやって)腹筋の弱さや股関節の可動域など、自分の課題にも気付きました」
自主トレ期間中は、同じ左打ちの小郷から打撃面でも多くの助言をもらったという。
「選球眼を良くする方法というか、打席内での感覚や考え方を聞いた。去年はボール球を振る率が高かったので生かせることが多かった。いいものを吸収できている、学ばせてもらっている感じです」
しかし、順風満帆とはいかない。春季キャンプでは苦しんだ。沖縄で戦った練習試合などの実戦計7試合で安打はわずか1本。「1日でも、1打席でも早くアピールしないといけない立場。正直、焦りはあります」と話していたが、それは“産みの苦しみ”の真っ最中だったからだった。
「『180度変えた』は言い過ぎですけど、結構極端なことをやっていた。去年は(ミートポイントを)前で打っていて、後ろにしたいとずっとやっていた」
キャンプや実戦を通じ、そのポイントを試行錯誤。昨年よりは後ろだが、当初考えていたよりは前寄りの位置で模索している。
「いろんな方のアドバイスとか映像も見たりして、新しい発見というか、やってみないとわからなかったことでした」
1日の広島とのオープン戦(倉敷)では3打数1安打、右翼線の当たりに50メートル5秒9の俊足を飛ばして二塁打にするなど、持ち味を発揮する場面も出てきた。1月の自主トレでのロングティーでも小郷、伊藤ら先輩たちにひけをとらない飛距離を出すなど、パンチ力も魅力だ。
「こうした方がいいかな、というのは明確になっている気がする。一時期に比べたらいい感じになってきているし、自分の中でいいスイングはできているつもり。毎日毎日が勝負だと思って、集中してやるだけです」
楽天の外野陣を見ると、中堅は昨年リーグ最多安打&4年連続ゴールデン・グラブ賞の辰己涼介(28)、右翼には小郷がいる。残った左翼を6年目の武藤敦貴(23)、内野兼任の阿部寿樹(35)、ドラフト5位ルーキーの吉納翼(22)らと争う構図となっている。
「(定位置を)死に物狂いで取りにいく。ライバルは多いけど負けるつもりはないので、一生懸命やるだけかなと思っています」
キャンプから1軍に帯同し、一時ファームに移ったが再び1軍に戻り奮闘中だ。直近の目標は28日のオリックスとの開幕戦(京セラ)スタメン出場。しかしシーズンはその後も続いていく。どんなタイミングでも必ずチームの力になると強い思いを胸に秘めて、目の前の試合に全力でぶつかっていく。(取材・構成=有吉 広紀)
◆中島 大輔(なかしま・だいすけ)2001年6月4日、和歌山県生まれ。23歳。龍谷大平安では3年春にセンバツ8強。青学大4年時には主将として全日本大学選手権優勝。大学日本代表でも主将を務めた。23年ドラフト6位で楽天入団。180センチ、78キロ。右投左打。年俸950万円。通算1年で37試合、打率2割2分8厘、1本塁打、10打点、1盗塁。