
◆パ・リーグ 西武0―5楽天(14日・ベルーナドーム)
つかみかけていた球団史上初の快挙にはあと少し手が届かなかった。楽天・滝中瞭太投手(28)が投じた123球目。「完全に落ち切らなかった」。フォークを平沼に右前に運ばれた。「マジか~って思いました。ここでかって…」。5―0の9回1死一塁。ここまで3四球による走者を許しただけ。右中間席のファンからは大きなため息が漏れた。
最速143キロの直球と最遅94キロのスローカーブを軸にした。120キロ台後半のフォークもさえ渡り、9奪三振。面白いように空振りが取れた。無安打無得点の大記録は逃したものの、8回1/3を1安打無失点で2勝目をマーク。母・明美さんに日頃の感謝を込めた白星を届けた。
龍谷大1年だった13年5月13日に右肘のトミー・ジョン手術を行った。当時野球部の監督だった元ヤクルト投手の山本樹氏(52)から「1年は棒に振るけど選手寿命は延びる。上のステージでやりたいなら早くやった方がいい」と背中を押された。右手首の腱(けん)が移植され、生まれ変わった右肘で10年戦ってきた。
昨今の球界はロッテ・佐々木朗を始めとする「速球派」がトレンド。滝中自身も社会人時代は150キロの球速が出ていたが、今は140キロ台中盤がやっとだ。
「投げられるなら速い球は投げたい。でも投げられない。ないものは仕方ないんであるところで勝負できたかな」。打者を圧倒するのに必要なのはスピードだけじゃないと証明した男の表情は、充実感に満ちていた。(楽天担当・長井 毅)
◆記録メモ 滝中(楽)は9回1死から初安打を許し、ノーヒットノーランとはならなかった。楽天投手の無安打無得点はなし。ノーヒット投球には、19年7月19日対ソフトバンク戦で美馬が9回無死から初被安打、20年8月5日対ソフトバンク戦の涌井が9回1死から初安打を打たれたことがあるが、9回1死までノーヒットは楽天では最長無安打投球だ。