「適者生存」したツインバズーカが大阪を熱くする。

パ・リーグ インサイト

2018.3.2(金) 17:57

「ナニワのツインバズーカ」ことマレーロ選手とロメロ選手【撮影:藤原彬】
「ナニワのツインバズーカ」ことマレーロ選手とロメロ選手【撮影:藤原彬】

適応にMLBでの成績は関係ない?

「強いものではなく、環境や変化に適応できたものが生き残る」とは昔から使い古された言葉で、さまざまな領域において使われてきた。とりわけ、ビジネス環境の変化において使われることが昨今は多いかもしれない。

変化の激しいスポーツの世界においても「適者生存」はよく言われ、プロ野球の世界においてもそれは当てはまる。例えばメジャーリーグでの輝かしい実績と触れ込みで来日した選手が、思うような成績を残せずに帰国を余儀なくされたケースは、何度も目にしてきた。

あえて具体名は出さないが、かつてボストン・レッドソックスの主力打者として活躍した選手や、同じくレッドソックスのワールドシリーズ制覇に貢献した強打者などは、大きなインパクトを残すことはできなかった。

一方で目ぼしいメジャー経験がなく、大きな触れ込みもなかったとしても、日本で輝かしい成績を残した選手たちも多くいる。

直近では、MLB通算3年で53試合の出場だった北海道日本ハム・レアード選手や、そもそもMLB出場経験がゼロだった埼玉西武・メヒア選手などは、シーズン本塁打王を獲得する活躍を見せてチームの主力として君臨している。

昨年オリックスに加入し、今年も在籍する2人の大砲も「結果を残した」といってよいだろう。ステフェン・ロメロ選手はMLB通算3年間で94試合出場、通算打率は.195。クリス・マレーロ選手もMLB通算3年間で54試合出場、通算打率.209。メジャーで「活躍した」とは言い難い成績である。

だがその彼らが日本へやってくると、ロメロ選手は103試合に出場し、26本塁打・打率.274、マレーロ選手は82試合に出場して20本塁打・打率.290。ロメロ選手はシーズン開始当初から、マレーロ選手はシーズン途中からという違いはあれども、いずれも来日1年目ながらすぐさま「日本の野球」に適応したと言えるだろう。

異文化に飛び込み、楽しむ

「言葉も全く違うし、最初は大変だった」と語るのはマレーロ選手。しかしチームメートやスタッフなど、周囲の支えにより徐々にチームに溶け込めるようになったと、両者ともに口をそろえる。

「異なる国、異なる文化に来ることになったが、それらを楽しもうと思った」(ロメロ選手)、「心を開いて、さまざまな経験を受け入れ、一日一日学んでいった。一度慣れてしまえば、日本という国やファン、野球、すべてが素晴らしいことに気付けた」(マレーロ選手)と、二人はこれまでを振り返る。

日本の印象というと、「東京、大きなビル、たくさんの人がいるという印象」(ロメロ選手)というのが彼らに限らず海外から来た外国人の思いだろう。なかなか日本という国の中身を知る機会が限られている以上、ある意味典型的なイメージになるのは致し方ない。

しかしロメロ選手はそこから「素晴らしい食べ物やあらゆるものに敬意を払っていることなどを知った。大きく印象が変わったことはないけれども、楽しめている」。マレーロ選手もロメロ選手の意見に全く同意だという。

もちろん彼らの中で、日本の文化やしきたりをすべて消化しきれているかどうかは分からない。ただ少なくとも、彼らは異文化に飛び込み、前向きな経験としてさまざまなことを受け入れてきた。

「先輩」たちに続けるか

彼らの主戦場であるフィールドにおいてはどうだろうか。アメリカとは違う「日本野球」に適応するには何が必要なのか尋ねると、「自分にとっては、どれだけ頑張れるか、どれだけ自分をささげられるか。シーズンとおして健康でいられるように、毎試合良いパフォーマンスを出せるように」することが鍵と語るのはロメロ選手。

一方のマレーロ選手は「大事なのは正しいことを正しい方向ですること」だという。ある意味彼らが話すことはオーソドックスなことであるが、文化やしきたりの異なる環境の中でそれらを実践することは、そう簡単なことではないだろう。

彼らのように、異なる文化の中で、今までにない「異質」を受け入れ、トライする。野球にとどまらず、さまざまなケースでお手本とすべきことではないだろうか。

彼らは今年、来日2年目のシーズンを迎える。昨年の実績を踏まえ、もちろん他球団は彼らの打棒を警戒し、研究を重ねて弱点を徹底的に突いてくるだろう。一方の彼らも、日本野球の「勝手を知った」ことで、さらによい数字を残す可能性も十二分にありうる。

例えば、激しいアクションでチームを鼓舞して杜の都を熱くしたハクション大魔王似の人気者は、2年目にシーズン27本塁打を記録してチームの主軸に定着し、他方では来日3年目にシーズン本塁打日本記録を樹立した「セ界の大砲」などもいる。

「ポジティブな印象しかない」、「今年はいいシーズンを送れると思う」

「外」からやってきた彼らは、オリックスというチーム自体をどう見ているのか。少なくとも、潜在能力を秘めた選手が多くいることは確かなようだ。

例えばロメロ選手は「吉田正はまだシーズン通しての活躍をしてないけれども、(怪我なく)フルシーズン過ごせればいい数字を残せると思う。ほかにも昨年希望の星となった山岡や、ルーキー左腕の田嶋など、彼らも健康ならばいい成績を残せる」と、若手のホープの名前がスラスラと出てくる。

マレーロ選手は彼らに対して「経験を積むこと。チームのためにプレーし、すべてに慣れる。一度経験を積めば、うまくいくと思う」と、彼らの持つ潜在能力を見据える。

またチーム全体においても、「昨年はうまくいかない時期もあって上位3チームには及ばなかったが、素晴らしいクローザーである増井も加わったし、皆がケガなく過ごせれば、今年はいいシーズンを送れると思う」とロメロ選手。

マレーロ選手も「基本的にポジティブな印象しかない」と、オリックスというチームを見ている。

アメリカからやってきた猛牛打線の大砲2人は、室内練習場でのインタビュー後、雨の中で待つファンのもとへ駆け寄り、人波が消えるまで丁寧にサインや写真撮影に応じていた。

「日本には熱狂的で素晴らしいファンがいる」と海外から来た選手はよく口にするが、それに応える姿勢を体現できるのも、この2選手だ。22年ぶりの頂点奪取を待ち望むファンの心からの声援を力に変えて、「ナニワのツインバズーカ」はチームを頂点へ導くアーチを描き続ける。

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