柳田の逆転満塁本塁打には伏線があった。勝負を分けた今宮への配球
4回に一挙5点を奪って逆転勝ち――福岡ソフトバンクが開幕2連勝を飾った伏線は、「スライダー」だった。
「一番打たれてはいけないところで低めの変化球を投げ切れなくて、ああいう結果につながりました」
負け投手になった埼玉西武の今井達也がそう肩を落としたのが、4回裏、3番・柳田悠岐に逆転満塁本塁打を浴びた場面だ。
今井は2死満塁から2番・今宮健太に痛恨の押し出し四球を与え、4対2と福岡ソフトバンクに2点差に迫られる。直後、柳田への初球に投じたスライダーが内角高めに甘くなると、ライトスタンドに弾丸ライナーを突き刺された。
「スライダーを狙うことはまったくなかったです。自分の間でスイングすることを考えていました」
殊勲打の柳田は報道陣に囲まれながらそう話した。
対して、今井は宿舎へと歩きながら痛恨の1球を悔しそうに振り返った。
「カウントを取りにいくのか、空振りを取りにいくのか、自分の中で曖昧な感じだったので中途半端になってしまいました。(今宮への)押し出しの後というのもあって、少し置きにいってしまった部分もあったと思います」
4回表に2点の援護点をもらった直後の守りで、今井は無死1、2塁のピンチを招いた。そこから二者連続三振に切って取り、1番・牧原大成の緩い打球が1、2塁間に転がる。完全に打ち取った当たりだったが、前に出て捕球したセカンド・外崎修汰のトスが浮き、俊足の牧原が一足早く駆け抜けた。
「あれは内野安打でしょ? 不運な当たりでしょ? (今井)本人は打ち取っているけどね」
辻発彦監督はそう振り返った。
これで2死満塁となり、迎えるは今宮。この日は2打数2安打で、いずれもスライダーをうまく弾き返していた。打たれた今井の脳裏に当然刻まれており、勝負の分け目につながっていく。
初球からスライダー、153kmのストレート、カーブで2ボール、1ストライクとなると、バッテリーは5球続けてストレートを選択する。いずれも151km以上の力強いボールだったが、今宮は「(5球目に)フルカウントになった時点で粘りたかった」と振り返った。そして7球目までファウルで粘ると、根負けした今井が8球目に押し出し四球を与えた。
なぜ、埼玉西武バッテリーはストレートを5球続けたのだろうか。今井に振ると、こう答えた。
「(今宮は)昨日の試合から今日の1、2打席目もスライダーをうまく打っているなというイメージがあったので。真っすぐが一番自信ありますし、打たれても一番悔いがないかなと思いました。でも、あれだけ真っすぐを続けている中でフルカウントになり、真っすぐのサインに首を振ってスライダーをストライクからボールに投げられるコースで空振りを取れるようにならないといけないと思いました」
不運な当たりで満塁のピンチを招き、最も自信のある球を貫いた。それが最後に外れて押し出しとなり、直後、甘くなったスライダーを柳田に仕留められた。フルカウントから自分の仕事に徹した今宮、最大のチャンスを生かした柳田と、福岡ソフトバンクの勝負師たちが勝利を呼び込んだ。
一方、高卒3年目の今井は今季初登板で初回から球威のあるストレート、鋭く曲がるスライダー、緩急をつけるチェンジアップと持ち味を発揮しながら、勝利を飾ることはできなかった。ただし、痛恨の逆転負けは後々の成長につながっていくはずだ。
この日の収穫を聞かれると、今井はこう答えている。
「今宮さんの満塁のところで一本調子になってしまいました。真っすぐをあれだけ続けてファウル、ファウルで、最後スライダーでちょっと交わしてというピッチングをする余裕が頭の中にあったら、いい結果につながったのかなと思いました」
勝負を分けた伏線を、果たして次回以降の登板にどう生かすのか。昨季日本一の福岡ソフトバンクとリーグ王者・埼玉西武の開幕2戦目は、今季も両チームの熱い戦いを期待させられるような、見応えのある一戦だった。
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